Hiss Golden Messenger - Haw

評価:
Paradise Bachelors
(2013-04-02)

名前をつけてやる

Mergeレコーズが拠点を置くノース・カロライナ州は、インディー・ロックの聖地であると同時に、古くからフォーク・ミュージックのコミュニティがあることで知られ、Pete Seeger一家のメイドだったというElizabeth Cottenに始まり、近年でもBon Iverの元バンド仲間が結成したMegafaunやBowerbirdsなど、数多くのフォーク系アーティストを輩出している。

Mountain GoatsのJohn Darnielleのように、その歴史と風土に惹かれて移り住んでくる人たちも後を絶たないが、Joni Mitchellのアルバムから名前をつけたThe Court & Sparkというサンフランシスコのバンドで活動していたM.C. Taylorも、その中のひとりだ。
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Xenia Rubinos - Magic Trix

評価:
Ba Da Bing
(2013-04-30)

大陸移動説

一説によれば、今から2億5000万年後には、ユーラシア大陸とアフリカ大陸とアメリカ大陸が合体し、ひとつの超大陸が出現するという。これは今から2億5000万年前に存在したというパンゲア大陸に倣って“パンゲア・ウルティマ大陸”と呼ばれているのだが、「Ultima」なる曲を歌うXenia Rubinosを聴いていると、そんな雲を掴むような話を信じたくなってしまうから不思議だ。

Beirutを輩出し、Sharon Van Ettenがスタッフとして働いていたことでも知られるBa Da Bing! Records。近年はマネージメント業務が中心になっていたようだが、そんなBa Da Bing!が久々に送り出す新人が、このXenia Rubinosだ。

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It Hugs Back - Recommended Record

評価:
Safe And Sound
(2013-05-14)

誰かにこっそりオススメしたくなるレコード

イギリスはケント州を拠点に活動する4人組、It Hugs Backの新作。今は亡き名レーベルToo Pureからデビューし、その後レーベル吸収合併の流れで2009年のファースト・アルバム『Inside Your Guitar』はあの4ADからリリースされるも、大きな注目を集めることなく、そのままドロップアウト。その後は自らの運営するレーベルSafe and Soundから2012年にアルバム『Laughing Party』を発表。そしてこれが3枚目のアルバムとなる。

ちなみに2011年に中心人物のMatthew Simmsがあのヴェテラン・ポスト・パンク・バンドWireにツアー・ギタリストとして加入し(Too Pureのスタッフからの紹介だったとか)、先日リリースされたばかりの新作『Change Becomes Us』(79〜80年の未発表マテリアルを新たに録音したもの)にも参加している(この写真の左端が彼・・・明らかに世代が違う)。
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The National - Trouble Will Find Me

評価:
4ad / Ada
(2013-05-21)

1000年の悲しみ

ロック・バンドに対して「守りに入った」という言葉が使われる場合、それは多分にネガティヴな意味合いを孕んでいる。けれども、それは本当に悪いことなのだろうか? 守りに入るということは、守るべきもの──確固としたスタイルや揺るぎない自信、果たすべき責任があるからに他ならないのではないか。

The Nationalは変化を恐れているのではない。変化しないことを恐れないのだ。
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Luxury Liners - They Are Flowers

評価:
Western Vinyl Records
(2013-04-02)

優雅な生活が最大の復讐である

昨年の12月、コーチェラ・フェスティバルの番外編とも言える“S.S. Coachella”なるイベントが開催され、フロリダからバハマへと向かうクルーザーの上で、PulpHot Chipといった面々が熱演を繰り広げたそうだ。

チケット代は、一番安い4人部屋でも250ドル。もちろんフロリダまでの旅費は自己負担ということで、自分のような人間には一生縁が無さそうだが、せめて想像上だけでも贅沢な気分を味わいたいという人にオススメなのが、“豪華客船”なる名前を持ったLuxury Liners。女性フォーク・シンガーMarissa Nadlerのアルバムへの参加で知られ、現在はJana Hunter率いるLower Densのギタリストとしても活躍する、Carter Tantonによるソロ・プロジェクトだ。
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Vampire Weekend - Modern Vampires of the City

現代の吸血鬼信仰

“ヴァンパイア”という言葉には、いつもエキゾチックな響きがあった。『吸血鬼ノスフェラトゥ』(’22)や『吸血鬼』(’32)など、主にドイツで製作された怪奇映画の影響もあったのだろう、吸血鬼はどこからともなく現れ、平穏を脅かす得体の知れない存在として人々に記憶されてきたのだ。

ところが、現代の吸血鬼は姿を変え、一見それとはわからない格好で、都会に息を潜めている。ブルックリンのロック・バンドであるVampire Weekendもまた、コンゴのスークースやジャマイカのレゲエといった異国の音楽に目を向け、それを吸収してきた。けれども、そんな彼らが最新作で目を向けているのは間違いなく自分自身であり、彼らの住むアメリカ合衆国、そしてニューヨークという街だ。
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Rhye - Woman

評価:
Republic
(2013-03-05)

ミュージカル・マッサージ

本作、および「Open」、「The Fall」といった一連の先行シングルのジャケットを飾る女性の裸体。性の対象としての存在を越え、オブジェのようにシンボライズされたその裸体は、ソウル・シンガーのLeon Wareが1976年にリリースしたアルバム『Musical Massage』を連想させるが、実際Rhyeの片割れであるデンマーク人ミュージシャンRobin HannibalのユニットQuadronは、昨年Leon Wareとのコラボレート・シングル「Orchids For The Sun」をリリースしている。

Leon Wareといえば、Marvin Gayeの名曲「I Want You」の作者として知られているが、彼らがここで完成させた“性愛路線”は、1982年の「Sexual Healing」や、翌1983年のIsley Brothersによる「Between The Sheets」などを経て、のちのブラック・コンテンポラリー・ミュージック〜R&Bへと受け継がれていくことになる。

そしてLeon WareがMarvin Gayeという“愛の伝道師”を必要としたように、Robin Hannibalもまた自身の代弁者として、Mike Miloshという類い稀なる声の持ち主を必要としたのだ。
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Suuns - Images Du Futur

評価:
Secretly Canadian
(2013-03-05)

空想です

カナダはモントリオール出身の4人組Suunsのセカンド・アルバム。一部に「Clinicに似過ぎやろ」という批判があったけれど、たしかに似てるっちゃあ、似てる。一曲目のヴォーカルの歌唱法とかモロなんですが、これはあくまでツッコミを引き起こすための誘い水なのだと思う。「それClinicやんかいさー」と笑いながら聴き進んでいくうちに、あちこちに仕掛けられた音の罠に全身にじわじわと毒がまわってきて、気づいたら違う異次元ゾーンに迷い込んでいて、しかも痺れて動けない、みたいな毒蜘蛛っぽさがこのアルバムにはある。
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Nightlands - Oak Island

評価:
Secretly Canadian
(2013-01-22)

星をみるひと

エイベックスの5人組ガールズ・ダンス&ヴォーカル・グループ、東京女子流で最年少ながら安定した歌唱力を誇る新井ひとみさん(通称ひーちゃん)は宇宙と交信できることで知られている。自身のラジオ番組では、リスナーの質問に対する宇宙人さんの回答をひーちゃんのアンテナが受信し、それを代弁してくれるコーナー「宇宙からのお言葉」というものがあるくらいだ。

こうした例を見ればわかるように、世の中には「日常的に宇宙と交信できる人」が少なからず存在する。おそらくSun Raは間違いなくその一人だし、Jimi HendrixやJohn Coltrane, Joe Meek, Syd Barrett, Peter Ivers・・・最近だとAriel Pink辺りはそうした「チャンネル」の持ち主といえるだろう。

もちろん、世の中の殆どの人はそんなチャンネルは持ち合わせていない。ただ、「宇宙と交信してみたい」という願望から、様々な試みを行ってみたりする。そう、このNightlandsの『Oak Island』のジャケのように、全身を銀色に塗って宇宙人になりきっているのもそうした願望の現れだろう。
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Autre Ne Veut - Anxiety

評価:
melting bot / Software
(2013-02-14)

競売ナンバー49の叫び

ブルックリンのAutre Ne Veut(オート・ヌ・ヴ)の新作『Anxiety』のジャケットに写る額縁には、当初ムンクの『叫び』が収められていた。これはニューヨークのオークション・ハウス、サザビーズで『叫び』が競売にかけられる様子を捉えたもので、現代人の不安を描いた芸術作品が資本家によって高額で取引されるという皮肉を、見事に切り取っていたのだ。

しかし、おそらくは権利の関係なのだろう、最終的なジャケットからは『叫び』が削除されることになり、そのことによって、このジャケットはまた新たな意味を帯びることになる。

つまり、アルバムを聴いた人間が、空の額縁の中に一体何を想い描くのか。それは一種の心理テストのようなものだと言えるのかもしれない。
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