何がケイティに起こったか?
Sonic YouthやDinosour.Jrを手掛けてきた重鎮John Agnello をプロデューサーに迎え、歪んだギターと空間的なサウンド・プロダクションで自身のキャリアにおける一つの到達点を見せた前作『Out In The Storm』から3年、WaxahatcheeことKatie Crutchfieldの新作がリリースされた。
[REVIEW] Caribou - Suddenly
ジュリアはある日突然に
Four TetことKieran Hebdenが共同でアレンジを手掛け、70年代のソウル・シンガーGloria Barnesの歌声を、Wu-Tang ClanやA Tribe Called Questといった90年代ヒップホップのマナーでサンプリングした「Home」や、キャリア史上最大のヒットを記録した前作『Our Love』路線のフロア・アンセム「Never Come Back」といったリード・シングルのイメージで本作を聴いた人たちは、きっと驚くに違いない。
[REVIEW] Andy Shauf - The Neon Skyline
“夜の9時を15分回った頃、僕はチャーリーをネオン・スカイラインに呼び出した。スツールを確保すると、僕のことをよく知っているローズは、何も聞かずに冷たい缶を開けて、目の前に置いてくれる。ありがとうと言うと、僕はジュディと一緒にここに来ていた頃のことを思い出していた──”
[FEATURE] アイ・カンマ・アイ〜Bon Iverの最新作『i,i』についての覚え書き
予定より3週間も早く、昨日8月8日(∞∞)に急遽リリースされたBon Iverの新作『i,i』にジャーナリストのLaura Bartonが寄せたライナーノーツに、興味深い一文がある。
「Bon Iverのアルバムタイトルには必ずカンマが入る。つまりふたつの考えとふたつのものが存在するということ」
すなわち2008年のデビュー作『For Emma, Forever Ago』、2011年の『Bon Iver, Bon Iver』、2016年の『22, A Million』、そして今回の『i,i』だ。
[REVIEW] Vampire Weekend - Father Of The Bride
古い伝統的な形式を、新しい反抗的なメッセージで満たすこと。これからの時代にそんな音楽が力を持っていくだろうと語っていたのはDirty ProjectorsのDave Longstrethだが、そのDaveも参加したVampire Weekendの6年ぶりの新作を聴いていると、今まさにここで、その通りのことが起こっていると思わずにはいられない。
[REVIEW] Stella Donnelly - Beware of the Dogs
評価: Secretly Canadian (2019-03-08) |
芝生の復讐
フジロックフェスティバルへの出演も決まっているオーストラリアのシンガー・ソングライター、Stella Donnelly。多くの人たちと同じように、彼女のことは2017年に本国でリリースされた「Boys Will Be Boys」という曲で知ったのだけれど、これまで積極的に取り上げてこなかったのには理由がある。正直に言って、この「Boys Will Be Boys」という曲が苦手、というか嫌いだったからだ。
[REVIEW] Angelo De Augustine - Tomb
2017年の12月20日に、恋人から突然手紙で別れを告げられたカリフォルニアのシンガー・ソングライター、Angelo De Augustine。失意の中、クリスマスで賑やかな街をよそに5日間曲を書き続けた彼はその二ヶ月後、ニューヨークに住むピアニストでプロデューサーのThomas Bartlettを訪れ、同じく5日間でアルバムをレコーディングしている。こうして完成したのが、Sufjan StevensのレーベルAsthmatic Kittyからリリースされた、Angeloの初めてのスタジオ録音となる本作『Tomb』だ。
[REVIEW] Dirty Projectors - Lamp Lit Prose
評価: Domino (2018-07-13) |
そこのみにて光輝く
大きく息を吸い込んだ後で、あの特徴的なギターに乗せてDave Longstrethが歌うと、トランペットが鳴り響き、The InternetのSydによるコーラスが飛び込んでくる──冒頭の「Right Now」を聴いただけでも、かつてのDirty Projectorsが帰ってきたことがわかるはずだ。
胸の中には沈黙があったけど/今僕はバンドを演奏し始める
彼らが焚き火を燃やしたから/ランプを灯すことができるんだ
レーベルの資料によれば“デヴィッド・リンチ監督の『ブルーベルベット』に対する『ストレイト・ストーリー』であり、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』に対する『パンチドランク・ラヴ』”だというDirty Projectorsの新作『Lamp Lit Prose』は、ジャケットを飾る太極図を模したガラス細工のバンド・エンブレムが示すように、前作『Dirty Projectors』と陰と陽の関係になっている。
[REVIEW] Father John Misty - God's Favorite Customer
神とは、僕らの苦痛を測るための概念に過ぎない──そんな風に歌うJohn Lennonの「God」という曲を、Father John MistyことJosh Tillmanは2015年のクリスマスに、ライヴでカバーしていた。ただし、Johnが“信じない”と歌った“ヒトラー”や“ジーザス”、“ケネディ”といったフレーズを、“オバマ”や“フェイスブック”、“スター・ウォーズ”に変えながら。
そしてFoxygenのJonathan Radoを共同プロデューサーに迎えた彼の新作もまた、妻であるヨーコと離れて“失われた週末”を過ごしていた、John Lennonのソロ時代の作品に通じるものだ。
[REVIEW] Lucy Dacus - Historian
ノア・バームバック監督の映画『フランシス・ハ』で知られる女優、グレタ・ガーウィグ。カリフォルニアにあるカトリック系の高校を卒業し、単身ニューヨークの大学に通うことになった彼女の自伝的な初監督作『レディ・バード』を観ながら思い出したのは、先日リリースされた女性シンガー・ソングライター、Lucy Dacusの『Historian』に収録されている「Nonbeliever」という曲だ。