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Shogun Kunitoki - Vinonaamakasio
評価:
Shogun Kunitoki
Fonal
¥ 1,956
(2009-04-14)

殿がご乱心

 外人は何故にああまでサムライ(とニンジャ)が好きなのか? 鎖国とか踏み絵とか生麦事件とかがあってさえもなお、惹かれるのはなにゆえか? カタナ、キモノ、ゲイシャ、ニャンまげ、いまやどこかの江戸村でしか見れないなつかしの光景を彼らが求めて旅に出るのはどうして? かといって、別にNHKの大河ドラマ・シリーズが「24」や「Lost」みたいに海外でも大受けという話も聞かないし、月曜8時の「水戸黄門」を毎週欠かさず見てる由美かおる好きの蒼い目の人というのも聞いたことがない。・・・要するにアレだ、チャンバラ。西洋では「汚らわしい」とされて回避されてきた、刀と刀で斬り合うという少しエキセントリックな野蛮さと、「武士道とは死ぬことと見つけたり」的な、ある種不可解といってもいい崇高さ、誇りの高さといった感覚とが奇妙に同居してる様(と、その象徴としてのちょんまげ)にこそ強く惹かれているのではなかろうか?(たぶんちがう)


・・・てな、やや強引な話の流れの中で「将軍国時」(邦時? この人がモデルか)のセカンド・アルバムをご紹介。このフィンランドのインスト・バンドの特徴はなんといってもオルガンの音色。オルガンをここまでフィーチャーしたポスト・ロック的サウンドってのは他にあまり聴いたことがないので、それだけでも結構個性的なのだけど、PramやBroadcastにも通じるような、やや牧歌的なサイケデリック感を醸し出していたデビュー作に対し、セカンドとなる今作はなんだか刀の切れ味が格段に増して、「小姓」(蘭丸)からまさに「将軍」(信長)と呼ぶに相応しいスケール感のようなものが身につきはじめているのが聞き取れる。これぞまさに下克上。

 ウネウネ&グルグルと旋回し、絡まりあうオルガンのチープな音色は、時にはなんだか大聖堂で鳴り響くパイプオルガンの如き荘厳な調べを奏で、そこにダイナミックなバンド・サウンドが衝突を繰り返すことで、サイケデリックかつハードな音の文様が刻まれていく。そういえば「3」辺りの頃のドラクエって、その世界観の中にずっぽりハマっていると、チープな8ビットサウンドのBGMでも勝手に脳内で補完して壮大な交響曲として頭の中で鳴り響かせていたような気がするのだけど、このバンドはオルガンを使ってそれに近いことをしているんじゃなかろうか。

 異国(特に欧州)の人々から見て、日本の「ドラクエ」というゲームの世界観は、基本は「ウィザードリィ」とかからの翻訳だからそんなに違和感はないのだろうけど、ちょっと不思議なのが、それをあそこまでユーザー・フレンドリー(ある意味で「ポップ」ともいえる)に発展させて、物語的にも音楽的にも面白いものに昇華させる(映画や漫画、アニメといったひとつのメディアと肩を並べるほどのジャンルとして発展したという意味で)という行為を、元々の世界観の発祥地である自国においてなぜ真っ先に確立できなかったのか、ということ。それは、実は逆に自分達になじみの深いもの、つまり既知であるが故に「未知のものへの好奇心」に欠けていたからでは? と、とりあえず仮定してみる。

 基本的に人は(個人差はあるけれど)「自分がもってないもの」に対してこそより強く惹かれるものだ。だから、「中世の騎士の姿をした勇者がドラゴンを倒しにいく」という、田んぼがいっぱいで妖怪や幽霊がはびこっていたかつての日本とは縁もゆかりもない遠い海の向こうの国の世界観は、80年代後半(バブル期)の日本の狭い高層住宅住まいの少年たちには、「未知のもの」(身近にある非現実=逃避場所)としてより魅力的に映ったはず。だからこそみんな熱中して、あそこまでの現象を生んだのだし、いまだにそれ風の音が聞こえてくるとなんだかソワソワしてしまうのだろう。

 本作の音色が魅力的な響きをもっているのは彼らの(主に60年代サイケデリア方面の)音楽的な「好奇心」と、元からある異質の文化(オリエンタリズム)に対する「好奇心」とが交じり合い(例えばベタな喩えだけどビートルズがインドに行ってシタールを取り入れた、みたいな)、バンドとしての「経験値」が上がることによって、いわば「レベル・アップ」したからに他ならない。まだアルバム全体として聴くと少し単調になるきらいがあるけれども、とりあえずベギラマが唱えられるようになったみたいなので、次のアルバムではイオナズンぐらいの破壊力を期待しよう。

 なお、本作のアナログ・レコードは、暗闇の中で再生中に、彼らの自家製のストロボ・ライトを表面に当てることによって動くアニメーションになるのだそうな。詳しくはコチラの動画を参照のこと。



MySpace - Shogun Kunitoki
Posted by 佐藤一道
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