評価:
Slumberland
(2009-02-03)
正直であることの痛み

「もしStephen PastelがBlack TambourineのPam Berryと結婚して、四人の子供をもうけてポップ・バンドを組ませたら」なんて形容されるニューヨーク出身の4人組バンドのデビュー作。
 結論から先に書くと80年代中盤〜後半、『Ecstasy and Wine』の頃のマイブラや、The Primitives、The Pastels、The CleanといったC86周辺のギター・バンドからの影響が顕著な音。ややファジーなギター・サウンドと疾走するビートとのコンビネーションや、瑞々しいメロディを少しくぐもったヴォーカルの響きがなぞる様なんかはまさにあの時代のそれ。ややリズム隊の重心が低いのが特徴といえるかも。

 でも、このバンドの面白いところはそういった「あの当時の音」を2009年の現在、NYから世界に向けてまっすぐ発信しているところ。そこには「照れ」や「てらい」のようなものが微塵も感じられない。Subway OrganizationやLazy、Creationといった80年代の英国インディ・レーベルたちが歩んだ道筋の上に彼らは2本の足でしっかりと立ち、そこから堂々と音楽を鳴らし始めた。それ以前は英国の人でさえ殆ど忘れかけていた場所で。

 考えてみれば当時の80年代のバンドたち(特にCreationが顕著)だって、約20年前の60年代に忘れ去られていた音楽(Nuggets)へのピュアな愛情と憧憬を込めてがむしゃらにギターをかき鳴らしていたわけで、そんな精神がそのまま20年後に引き継がれた、ということなのかもしれない(勿論、北欧周辺ではこういった音はずっと存在していたし、約10年前の米国においてKやSlumberland周辺でDIYなTwee Popバンドたちが活動していたことも重要な伏線)。

 そう、とにかくそんな「迷いのなさ」こそがこのバンドの最大の武器だ。自分の好きなものや音に忠実であること。嘘をつかないこと。つまり、正直であること。勿論、それは時に「痛み」を伴うものかもしれないけれども、このバンドにはそれをバンド名に冠するだけの器の大きさやタフさがある、そんな気がする。

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