評価:
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
(2008-09-03)
"English Breakfast, tastes like Darjeeling"

 アメリカで10月に公開される映画『Nick & Norah's Infinite Playlist(原題)』に、ヴァンパイア・ウィークエンドが書き下ろしの新曲「Ottoman」を提供、映画全体の音楽監督でもあるDEVOのマーク・マザーズバーと共演しているそうです。“ヴァンパイア・ウィークエンドとDEVO”と聞いて、いまいちピンと来なかった人も多いと思いますが、実はこの2組には、意外な共通点がありました。
 もともとDEVOは、マークが自主映画のサントラを制作するために結成したというだけあって、バンドの活動休止後、彼は映画音楽の世界で大きな成功を収めることになりますが、その中でも有名なのが、ウェス・アンダーソン監督とのコラボレーション。デビュー作『アンソニーのハッピー・モーテル』('96)に始まり、『ライフ・アクアティック』('04)に至るまで、4作で音楽を担当しています。
 
 ヴァンパイア・ウィークエンドのフロントマンであるエズラ・コーニグは、そんなウェス・アンダーソン作品のファンであることを公言しており、言われてみれば確かに、ニューヨークを舞台に、かつての天才少年たちの苦悩を描いた『ロイヤル・テネンバウムズ』などは、ヴァンパイア・ウィークエンドの音楽とも共通する部分がありそうです。

 しかし、ウェス・アンダーソン監督の最新作となるこの『ダージリン急行』には、デビュー以来初めて、マーク・マザーズバーが参加していません。ウェス・アンダーソンの作品には、毎回キンクスの楽曲が使用されていることで有名で、今回も「Strangers」と「This Time Tomorrow」という、よっぽどのファンでないとわからないような曲が効果的に使われているのですが、それ以外の場面では、三人の兄弟がインドへスピリチュアルな旅行をする、というストーリー設定に合わせてか、インド映画の巨匠、サタジット・レイ監督作品のサントラから、音楽を引用しています。

 というわけで、一見ヴァンパイア・ウィークエンドとは無縁な本作ですが、実はエズラ・コーニグは、2005年に単身インド旅行をしており、その時の経験が、彼に西洋と東洋の文化の関係について、考えさせるきっかけを与えてくれたそうです。そういえば、本作にはスーツケースが象徴的に使われているのですが、そのデザインを担当したのは、ルイ・ヴィトンのマーク・ジェイコブス! ご存知の通り、ヴァンパイア・ウィークエンドの代表曲「Cape Cod Kwassa Kwassa」には“ルイ・ヴィトン”というフレーズが登場しますが、偶然にしては出来すぎです。また、本作における演出の特徴として、ハイスピードカメラの使用や、横方向へのパン撮影が挙げられますが、これもまた、ヴァンパイア・ウィークエンドの「Oxford Comma」のPVとそっくり。もっとも、映画の公開時期などを考えると、エズラが『ダージリン急行』にインスパイアされたということはありえないのですが、本作がインドを西洋主観から類型的に描き過ぎだとして批判されている点も含めて、非常に良く似通っています。

 ただし、“イギリスの朝食はダージリンの味”(「One」)といったヴァンパイア・ウィークエンドの歌詞は、むしろそういった異なる文化の関連性を暗示しているのであって、啓蒙的ではあっても、搾取的では無いと思うのですが…。