評価:
Iliad / Hostess
(2008-07-08)
 言わずもがなのベックさんの新作。前宣伝などでは「60sサイケを意識した」というようなことが書いてありましたが、たしかにそんな若干スモーキーな感じが全編を漂います。他のサイト評でも「渋くて無駄がなくてカッコいい」的な評価が書かれてますが概ね同意です。今回はベックなりの「現代的サイケ(アシッド・ロック?)のあり方」というものを現出してみようという意図があったんじゃないでしょうか。「Walls」や「Replica」、「Profanity Prayers」の後ろで鳴っている奇妙な音処理とか「Gamma Ray」のサイケなPVとか見てるとそういう意図がうっすらと透けて見えてくるような気がします。

 近年のベックはあまりにも器用すぎて逆に器用貧乏という印象が若干ありましたが、今作はアプローチを絞って意図的に60年代SSW風楽曲をデンジャーマウスのモダンなサウンドと重ね合わせることで、異化作用を発生させ、さらにそれをいろいろと角度を変えることで、音のモアレ模様の変化する様を楽しんでいるという感覚があって、シンプルながらも奥行きのある充実した作品に仕上がっています。こういった音作りはBroadcast辺りのアプローチと偶然か否か重なってみえます。あっという間に終わる濃密で幻密(「幻覚が密になっている」という意味)な30分間です。

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