評価:
Drag City
(2008-06-17)
 怒っています。とても怒っています。「上半期のベストを決めるなら、俺のアルバムを聴いてからにしろ」と、三匹の象が、いや、あの男が怒っています。
 あの男とは、デヴィッド・バーマン。ペイヴメントのスティーヴン・マルクマス、ボブ・ナスタノヴィッチと、ヴァージニア大学で同級生だった男です。バーマン、マルクマス、ナスタノヴィッチの3人は、ペイヴメントと並行する形で、1989年にシルヴァー・ジューズを結成。1994年には、同じくペイヴメントのドラマーだったスティーヴ・ウェストも参加したファースト・アルバム『Starlite Walker』をドラッグ・シティからリリースしています。

 通算5枚目にあたる2005年の前作『Tanglewood Numbers』は一聴してダークな印象を受けましたが、それもそのはず、あのアルバムは、長年ドラッグの後遺症と闘ってきたバーマンの、ドキュメントとも言える作品でした。しかし2006年には、大のライヴ嫌いで知られる彼が、初のアメリカ・ツアーを敢行。周囲を驚かせたのも記憶に新しいところですが、そんなツアー・メンバーたちと作り上げた本作は、まるで人が変わったかのように、生命力に満ち溢れています。

 前作に続いての参加となるラムチョップのウィリアム・タイラー(G.)、トニー・クロウ(Kb.)、ブライアン・コッツァー(Dr.)はもちろん、セカンド・アルバムの『The Natural Bridge』以来、久々にパーニス・ブラザーズのペイトン・ピンカートンが復帰。おそらく彼が弾いていると思われる12弦ギターの響きが、まさにバーズ〜パーニス・ブラザーズといった感じの軽快さを、楽曲に与えています。ミドル・テンポのナンバーで入ってくる、奥方キャシーのヘタクソな(失礼!)コーラスも効果的。バーマンのダミ声と風通しの良いカントリー・ロック・サウンドのミスマッチぶりは、どこかリー・ヘイゼルウッド&ナンシー・シナトラの作品を連想させます。

 どの曲も捨てがたいですが、ホンキートンク・ピアノが走り回るキャバレー風の「Aloysius, Bluegrass Drummer」から、レイドバックしたAMポップ風(She & Him風?)ナンバー「Suffering Jukebox」への流れが最高。象のババール(?)が断崖絶壁で佇んでるようなジャケも意味不明で最高。つまり、全部最高です! 酒だ! 酒持ってこい!