「Girl, where have you been?」
そんなフレーズで始まる『Been Around』は、A Girl Called EddyことErin Moranの、実に16年ぶりのアルバムだ。
どこかサッドでメランコリックだった前作から一転、Kacey Musgravesの『Golden Hour』でグラミーを受賞したDaniel Tashianを共同プロデューサーに迎えナッシュヴィル録音されたこのアルバムで、彼女は子供の頃に聴いて育ったモータウンやブルー・アイド・ソウルに影響された、胸躍るようなポップ・ソングを奏でている。
というわけで今回は、先日のDent Mayに続いて音楽イベント“ミッドナイト・ランブル・ショー”の二人に協力を仰ぎ、Erinにメール・インタビューを打診。年の瀬も迫り、諦めかけた頃に返ってきた答えには、とんでもないビッグ・ニュースが!
質問作成:谷口雄、吉村類(ミッドナイト・ランブル・ショー)
来年リリースされるバート・バカラックの曲で
バッキング・ヴォーカルをすることになったんです!
――「Been Around」のビデオで描かれているように、あなたはいろいろな場所を飛び回ってきたと思います。生まれた時から、どんなところに住んできたか教えてくれますか?
わたしはニュージャージー州のホーボーケン(フランク・シナトラと同じ病院)生まれで、ジャージーショアのアズベリー・パーク付近で育って…90年代の半ばからニューヨークに住みながら、ここ20年ぐらいはロンドンやパリを行き来してますね。
――初めて買ったレコードや、歌うこと、作曲を始めたきっかけなど、幼少時代のことを教えてください。
すごく前のことだから思い出せないかも! でも考えさせて…たぶんBarry Manilowの『Tryin to Get The Feelin'(歌の贈りもの)』で、最初に酷い曲を書こうとしたのは、16の時かな。恐ろしい!
――何度も聞かれている質問で恐縮ですが、あなたのステージ・ネームA Girl Called Eddy」の由来は、Dusty Springfieldのアルバム『A Girl Called Dusty』だそうですね。でも、どうして“Eddy”なんでしょう?
“Eddy”はわたしと活動していたFrancis Dunneryっていうアーティストがくれたニックネームで、彼はイギリス人だから、よく面白がって人の名前を略すんですよね。ゲイリーが“ギャザ”、キャロラインが“キャズ”になるみたいに、エリンが“エディ”になって、それが残ったんです。
――今作はこの16年の間に書き溜めていた曲のセレクションなのでしょうか。それとも、一度立ち止まり、再び歩き始めたのが今作ということ?
止まったり始めたり、だけど大半(75〜80%)はここ数年に書かれたものですね。
――『Been Around』の制作をはじめるにあたり、思い描いていたコンセプトや、サウンドスケープのイメージはありますか?
すごくあります。とても温かく、ニューヨークシティーっぽく、当時の曲がわたしに感じさせてくれたように、70年代っぽくしたかった。シャープで、ソウルフルで、チャーミングで、ディープに。
――前作『A Girl Called Eddy』は、イギリスの文化から刺激を受け、Scott Walkerをモデルに作られたとのことですが、今作ではモデルにした作品はありますか?
さっきわたしが言ったように…ひとつだけ確かなのは、最初のレコードに表れていなかった、自分自身の別の側面を見せることでした。力強く、よりソウルフルに、感情面でもっと“アップ”にすること。常に悲しくないようにね!
――確かに、前作『A Girl Called Eddy』や2018年のMehdi Zannadとのコラボレート・アルバム『The Last Detail』と比較すると、今作の楽曲はよりソウルフルなテイストのように感じます。この様なタイプの曲を書くに至った動機は?
それは単にわたしの性分で、ポップスと一緒にラジオで聴いて、育ってきたものなんです。お気に入りのアーティストはPrince、Sly and the Family Stoneで、わたしは“ヨット・ロック”、Michael McDonaldやSteely Dan、フィリー・ソウルなんかも大好き。
――先日バート・バカラックとの共作を発表したDaniel Tashianと、今作で数曲共作していますね。バカラックはDanielを「彼の直感はいつも的確」「自分が見つけられないコードを発見してくれる」と称賛していますが、彼とはどのように出会ったのでしょう? あなたはDanielのソングライティングをどう感じましたか?
バートに同意します! Danielのことは彼がThe Silver Seasというバンドにいる時に初めて聴いて、一緒に作業できないか頼みました。彼がイエスと言ってくれた時は興奮したし、わたしたちは良いチームだと思います。
――バカラック自身もA Girl Called Eddyのファンだと聞いたことがあるのですが、Danielがどういった経緯でバカラックと共作することになったか知っていますか?
それはわからないんですけど、彼らが共作してくれて嬉しいし、というのも、わたしはちょうどバート・バカラックの曲で、バッキング・ヴォーカルをすることになったんです! たぶん来年リリースされると思うんだけど…「Travelin' Light」って言うんですよ。
――ナッシュヴィルでのレコーディングはいかがでしたか? なにかインスピレーションを受けるような出来事はありましたか?
すごくリラックスできて楽しかったです。素晴らしいミュージシャンたちと、雰囲気が助けてくれました。
――「Charity Shop Window」は、Paul Williamsと一緒に一時間程度で共作したそうですが、歌詞のどの部分を彼が書いたのでしょう?
それは本当で、Paulは「Wedding dress promise / Yellowed with age」っていうラインと、思い出せないけど他にも2、3個ぐらいを書いてくれました。長いセッションではなかったけど、それでも興奮しましたね!
――Swan DiveのBill DeMainとコラボレーションはどのように行われましたか?
とても簡単で楽しかったです。今ではもう数年来の友達だから、わたしたちにとっては自然なことでした。
――良いメロディを作り続けるために心がけていること、メロディ・センスを維持するための習慣などはありますか?
その面についてはあまり考え過ぎないようにしてるんです。メロディーは簡単に浮かんでくるし、それが良い時は、火照りや快感があるのがわかるんです。だけど歌詞はじっくり取り組んで正しくする必要があって、そこはもっと難しいですね。
――現時点で、生涯ベスト3のアルバムは?
The Blue Nileの『Hats』、Prefab Sproutの『Steve McQueen』、Princeの『Purple Rain』。
――ソングライターとして曲を提供したい歌手、歌って欲しい歌手はいますか?生きている人でも、故人でも。
うーん、誰かわたしのためにビッグ・ヒットをくれる人! Kacey MusgravesとかHarry Stylesとか。猫に餌をあげなきゃいけないから(笑)。
――本作のインスピレーションになったGilbert O'SullivanやTodd Rundgrenはあなたの子供の頃からのフェイヴァリットですが、現在活動しているミュージシャンでシンパシーを感じる人はいますか?
The Lemon TwigsとかBoy Pablo、Mini Treesなんかは好きですね。
――Everything But The GirlのTracey Thornの自伝『Naked At The Albert Hall』にあなたの名前が出てくるそうですが、まだ邦訳が出ていないので、どんな風に書かれていたのか教えてくれますか?
Traceyはただその本の中で、彼女の好きなヴォーカル・パフォーマンスとして、わたしを挙げてくれたんです。私のファースト・アルバムの「Somebody Hurt You」に触れてくれたのは嬉しかったですね。
――次作の構想はありますか?もし新しいアルバムを作ってくれるなら、何年でも待ちます!
ちょうど今、計画して/夢見て/書いて/たくらんでます!
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