2020年も下半期に突入! そこで今年も上半期にリリースされた作品の中から、「内容や参加メンバーのわりに、あまり話題になっていないんじゃないか?」と思うアルバムを、モンチコンが8枚ピックアップして紹介したいと思います!


JANUARY


A Girl Called Eddy - Been Around (Elephant)


床に散らばったMotownやStax、Prefab Sproutのレコードに、壁に貼られたGilbert O'Sullivanのポスターと、テレビで歌うTodd Rundgren──Last Detail名義での一昨年のアルバムも素晴らしかったErin Moranによるプロジェクト16年ぶりの新作は、Kacey Musgravesの『Golden Hour』を手掛けたDaniel Tashianをプロデューサーに迎えたナッシュヴィル録音で、なんとPaul Williamsとの共作曲も収録。パリ、ロンドン、 ニューヨークと放浪を続けて来た彼女の想い出を詰め込んだ、トランクのような作品だ。(清水祐也)





Ethan Gruska - En Garde (Warner)


ここ日本でも有名な映画音楽の巨匠、John Williamsを祖父に持つLAのSSWによるソロ2作目。前作の作風を踏襲したようなシンプルな弾き語りの楽曲からエレクトロ・ポップ、ひいてはネオ・ソウルやニュー・ジャズ、デジタル・クワイアの手法を採ったゴスペルなど、生音とエレクトロニクスを巧みに配合し紡いでいく多彩さもありながら、全体に漂うトーンは内省的なSSWのそれ。本作にゲストで参加し、奇しくも同時期に新作をリリースしたPhoebe BridgersやBlake Millsらとの互いの作品をとりまく相関性も、この時代ならではの疑似コミュニティといった感じで面白い。(山岡弘明)



FEBRUARY



The Orielles - Disco Volador
 (Heavenly)


歪んだサイケデリックなギターとファンク・ビートに瑞々しい歌声が織りなす、奇妙でポップなサウンドを確立したデビュー作から、彼らは更なる現実逃避を求め、銀河へと旅立った(そして戻ってこないかも、とも本人が述べている)。Peggy Gouの曲をカバーをしたり、バンドの傍らDJ活動もする等、クラブ・ミュージックにも精通する彼らが、70年代のディスコ、ファンク、ブギーやハウスといったダンスの要素を取り込み、2020年のインディー・ロックを再構築した本作。映画のプロットのようなスリリングな展開にワクワクする1枚だ。(栗原葵)



MARCH


iji - iji (Feeding Tube)


以前はBright EyesのConor Oberstが主宰するTeam Loveから作品をリリースしていた、シアトルのZach Burbaによるプロジェクト4年ぶりの新作は、彼も参加するグループMega BogのErin Birgyと、Big ThiefのドラマーJames Krivcheniaによる共同プロデュース。Frankie CosmosことGreta Klineとデュエットする「In Motion」から、Peter Iversのようなアウトサイダー・ポップまで、何ともトリトメのない魅力に溢れた一枚だ。(清水祐也)



APRIL


Benjamin Schoos - Doubt In My Heart (Freaksville)


Marker Starling、Nicholas Krgovich、Dent Mayというインディー・ロック界の3大クルーナーをゲスト・ヴォーカルに迎えた、ベルギーのシャンソン歌手による全曲英語アルバム。なんでも彼らを紹介したのが、過去に共演経験のあるStereolabのLætitia Sadierだったそうで、世界中のシンガーたちがバトン代わりにマイクを繋ぐ、Benjamin氏司会の架空の歌番組といった趣も。特に3曲に参加したMarker Starlingが貢献大。(清水祐也)



MAY


Devon Williams - A Tear In The Fabric (Slumberland)


“瑞々しさ”とは果たして”若さ”だけが持ち得る筆致だろうか。人生の折り返しにさしかかったであろう彼が、「生地の裂け目」からこぼれ落ちる感情や思いを、惜しげもないネオ・アコースティックに乗せて歌う様の頼もしさと歯がゆさ。どうしても音楽をやめることが出来ない葛藤や苦悩、そして日々の生活を自身の父親宛に綴った、このごく私的なロックンロール・アルバムは、心当たりのある者にとってはきっと、胸が締め付けられるような1枚かもしれない。(山岡弘明)





Happyness - Floatr (Infinit Suds)


ギター&ヴォーカルのBenji Compstonの脱退、ドラマーのAsh KenaziことAsh Cooperのカミング・アウトといった変化を経た3作目。LambchopやSilver Jewsで知られるMark Neversがミックスを手掛け、Cass McCombs「What Isn't Nature」へのアンサー・ソングも収録するなど、ロンドンのバンドらしからぬ90年代USオルタナティヴなサウンドで、YuckのMax Bloomがミックスを手掛けた「Ouch (Yup)」にはElliott Smithの面影が。(清水祐也)



JUNE



Sports Team - Deep Down Happy (Bright Antenna)


ケンブリッジ大学在学中に結成された6人組のデビュー作は、ロック・キッズに熱狂的に受け入れられ、全英アルバムチャート初登場2位を記録した。2019年UK選挙の間に書かれた「Here’s the Thing」で彼らは、人生の全てが公平でそれがルールなんて嘘、と蹴散らし、「Camel Crew」ではビッグ・レーベルと契約したHMLTDをディスる。目新しくないが、ブリット・ポップを継承したスタイルと彼らのその正直な物言い、そしてカリスマ的なヴォーカル、Alexというフロントマンの存在は、人々が求めるロック・バンドの理想なのかもしれない。(栗原葵)