今年の3月、詳細不明のままSoundcloudにアップされたMuzzというグループの「Bad Feeling」。その憂いを秘めた歌声と楽曲に様々な憶測が飛び交ったが、その正体はInterpolのPaul Banks、元The WalkmenのドラマーMatt Barrick、そしてBonny Light Horsemanのメンバーであり、The NationalやThe War On Drugs作品への参加でも知られるマルチ・プレイヤー、Josh Kaufmanによるスーパーグループだった。

今回のインタビューにあたって、残念ながらヴォーカリストであるPaul Banksは都合がつかなかったが、一昨年Fleet Foxesのドラマーとして来日し、今年リリースされたReal Estateの新作にも参加していたMatt Barrickを指名。3人の関係性や、全員が公平にソングライティングに関わったというファースト・アルバムの制作秘話を明かしてくれた。



俺たちの個々の活動歴やイメージを取り除いて
曲だけを聴いてもらえたらいいなと思ったんだ


──以前Grizzly BearのDaniel Rossenにインタビューした際に、自分のバンドのドラマー以外で好きなドラマーを聞いたら、あなたの名前を挙げていました。本人と話す機会があったら伝えると約束したのですが、7年越しにようやく伝えることができて嬉しいです。あなたの率直な感想は?

それはとても嬉しいよ。Danielは素晴らしいミュージシャンだし、Grizzly Bearも良いバンドだからね。ありがとう。

──あなたは一昨年にFleet Foxesのドラマーとして来日していましたが、印象に残っていることはありますか?

数日間しかいなかったから短い期間だったけど、Fleet Foxesのメンバーのひとりがイエロー・マジック・オーケストラの大ファンで、ちょうどイエロー・マジック・オーケストラの誰かの誕生日だった。坂本龍一だったかな。だから俺たちはイエロー・マジック・オーケストラの曲を練習して、ライブでカバーした。「1000 Knives」*という曲だったかな。 俺たちはあんまりそういう即興的なことやカバー曲は普段やらないんだけど、その時は楽しかった。
(*実際には「Behind The Mask」でした)

──自分としても意外だったのですが、あなたはセッション・ドラマーとしてはそこまで多くのミュージシャンの作品に参加しているわけではなく、基本的にはThe Walkmenと、その前身のJonathan Fire*Eaterでの活動が中心でしたよね。Fleet Foxesのレコーディングとツアーに、全面的に参加してみていかがでしたか?

良かったよ。ツアー以来、あまり活動はしていないんだけど、俺は2年間くらいFleet Foxesにいたかな。俺はバンドが『Crack-Up』をレコーディングしている頃に参加して、アルバムの曲の半分くらいでドラムを担当していた。アルバムをリリースした後は2年間ノンストップでツアーをしていたよ。その後はバンドの活動が停止した。他のバンドだと、ツアーをして、作曲をして、ツアーをしてというように常に何らかの音楽活動はしていることが多いんだけど、Fleet Foxesは2年間ツアーをして、今はRobin(Pecknold)が新しい曲を書いているみたいだから、他のメンバーはRobinの作曲が出来上がるまで待っている状態なんだ。

──以前InterpolのDaniel Kesslerにインタビューした時、彼はJonathan Fire*Eaterの大ファンだったと話していたのですが、彼やPaul Banksのことは、その時から知っていたのでしょうか?

Jonathan Fire*Eaterの時は、彼らのことは知らなかった。まだInetrpolとして活動していなかったんじゃないかな。確かJonathan Fire*Eaterが解散した頃ぐらいにInetrpolは結成されたと思う。でも俺がThe Walkmenで活動をしている頃に彼らと知り合った。DanielとはJonathan Fire*Eaterの話をしたことがあると思う。PaulはThe Walkmenのライブに来たことがあって、その時に会った。友達の友達だったんだ。でもまだ有名なシンガーではなかった頃だよ。ニューヨークのTrampsというクラブでBlonde Redheadとライブをやったんだ。

──ちなみに今はニューヨークにいるんですか?

ここはフィラデルフィアだよ。俺の自宅。天井を防音にして、自宅にも音楽スタジオを作ろうとしているんだ。

──Paul BanksとJosh Kaufmanが、海外の同じ高校に通っていたと聞いてビックリしたんですが、それはPaulが通っていたというメキシコの高校ですか? 当時のエピソードなど、2人から聞いたりしましたか?

スペインのマドリード*だよ。Paulは何年かそこに住んでいて、Joshは1年いたらしい。2人は高1の時に出会って、親友になったそうだ。PaulはJoshにギターのことをたくさん教わったと言っていたよ。
(*Paulはスペインに数年間住んだ後、メキシコに引っ越したそうです)

この投稿をInstagramで見る

Muzz writing session circa fall 1994 📷: probly Paul’s mom.

Muzz(@muzztheband)がシェアした投稿 -




──というのも、本作のホーンにどことなくメキシコや中南米っぽい雰囲気があると思ったからなのですが、これは彼らのルーツが反映されているのでしょうか?

俺はそうは思わないけどね。もしかするとそうかもしれないけど。でも俺がラテンっぽいリズムを取り入れた箇所はあるかもしれない。「How Many Days」という曲は俺とPaulが始めの頃に一緒に作った曲なんだけど、俺たちはBanks & Steelzという(Wu-Tang Clanの)RZAと一緒にやっていたプロジェクトのツアーをしていた。サウンドチェックをしている時に「How Many Days」のビートを俺が叩いたんだけど、それが少しラテンっぽいビートだった。Paulはすでに曲のコードを作っていたから、Paulはビートに合わせて演奏した。

──あなたとJosh Kaufmanは、2015年にリリースされたJosh Ritterのアルバムで共演していますが、一緒に曲作りを始めたのもこの頃ですか?

そうだね。俺たちはその1年前に会って、俺がいたバンドThe WalkmenのメンバーだったWalter Martinのソロ・アルバムに参加した。そのあとにJosh Ritterのアルバムに参加して、そのすぐ後にJoshがフィラデルフィアに来てくれたんだ。俺たちは何曲か一緒に曲を書いて、デモを何曲かレコーディングした。まだPaulは関与していなかった頃だよ。その時の曲はしばらく放置されていたんだけど、Muzzをやろうということになって、Paulに曲を渡して、彼がそれにボーカルを合わせた。その内の1曲はアルバムに収録された「Knuckleduster」だよ。デモを2015年に録音して、その後に曲を直してみたんだけど、最初に感じられた魔法みたいなのが再現できなかったから、最初の録音を採用したんだ。



──基本的にあなたとJoshが書いた曲にPaulが歌詞を乗せることが多かったそうですが、その際はPaulに曲の大まかなイメージを伝えるのでしょうか? 全然イメージと違う歌詞がついてきてビックリしたりしませんでしたか? もしくは、歌詞の意味を尋ねたりしましたか?

曲によって作り方が違ったりもするんだけど、Paulは結構音楽の部分にも関与しているよ。さっき話した「How Many Days」は、Paulがもともと作ったコードを使って、みんなでデモを作ったし、他の曲はJoshが作ったデモが元になっていたり、それをみんなで作り直したりしている。曲の多くは俺たち3人がスタジオで一緒にいるときに作られたんだ。Joshと俺が始めに音楽を作ってPaulがそれにボーカルを載せるという曲もいくつかあったけど、「Patchouli」という曲はPaulがエレキ・ギターを弾いていて、それは俺たちがライブで演奏している時に生み出されたものなんだ。歌詞や言葉は、俺たち3人がスタジオで作業している時に、晩飯をみんなで食べていて、その時にPaulが歌って歌詞を考えているという場面がよくあったね。Paulがどんな内容のことを歌うのかという予想は特にしていなかったけど、彼の歌詞に驚かされることはよくあったよ。Paulは変わった選択をする奴で、それが最高の選択になることが多いんだ。歌詞は、あまり良いと思わないものがあったら、Joshと俺でたまに意見して、作り直そうとした。アルバムに収録された曲よりもずっと数多くの曲を録音していたけど、全てが素晴らしい曲ばかりではなかったからね。

──たとえばツイストの王様と呼ばれたミュージシャンの名前がついた「Chubby Checker」という曲がありますが、歌詞にはChubby Checkerの名前は出て来ませんよね?

これはよく聞かれるんだ(笑)。いくつかの曲のタイトルは、制作途中のタイトルだったんだ。音楽を思いついたらまずそれに名前をつける。それが歌詞とは全く関係のない名前の時もある。「Chubby Checker」を作曲している時、Joshが1960年代のダンスっぽいベースラインを弾いたんだ。それがチャビー・チェッカーを彷彿とさせたから、この曲を「Chubby Checker」と呼ぶようになったんだよ。そのベース・ラインは変更しちゃったんだけど、名前だけはなぜか残った。

──影響としてLeonard CohenやBob Dylan、Neil Youngの名前が挙がっていましたが、サウンド的にはもっとモダンで、同時代のThe NationalやBon Iver、Beirutあたりを連想する曲もありました。あなたとJoshは彼らとも親しい関係にあると思うのですが、刺激を受けたりしますか?

直接的な影響はないかもしれないけど、俺たちは彼らとは友達だし、彼らの音楽は好きだから、何らかの影響はあると思うよ。



──Muzzとしての最初のシングル「Bad Feeling」はメンバーの素性を隠した状態でSoundcloudにアップされたそうですが、これにはどんな意図があったのでしょう? 実際の反響はいかがでしたか?

俺たちの過去のバンド歴──特にInterpolなんだけど──というもの抜きで音楽を公開したかったからだと思う。俺たちの個々の活動歴やイメージを取り除いて、曲だけを聴いてもらえたらいいなと思ったんだ。それで人々の反応を見たかった。反響は結構良かったと思うよ。俺自身にとっても、アルバムの中でお気に入りの曲なんだ。みんな気に入ってくれたんじゃないかな。嫌なコメントとかは来ていないと思うよ。

──リリースに先駆けて、俳優のマイケル・シャノンがあなたたちにインタビューする映像がアップされて驚きましたが、どういった知り合いなのでしょう? どれも1分程度と短いですが、完全版は存在するのでしょうか?

もっと長いインタビューがあるけど、公開されているのは短いクリップだけだよね。マイケル・シャノンはJoshの友人で、バンドについてのインタビューをやって俺たちにバンドについて話してもらいたいということだったから、個性的な人にインタビューに参加してもらったらもっと面白くなるかなと思って、マイケル・シャノンに出演してもらった。バンドにマッチする感じの人だったよ。



──先日リリースされたReal Estateのアルバムではパーカッション奏者として参加していましたが、今回のMuzzのアルバムでも、ドラム以外の打楽器がたくさん使われているように思います。使う打楽器やアレンジは、どのように考えているのですか?

作曲を進めて行って、何が良く聴こえるかというのを直感的に感じて決めているね。試行錯誤するよ。あんまり考えたことがないからうまく答えられないけど。頭の中でアイデアが思い浮かんで、ただそれをやってみるだけ。Joshはタンバリンが大好きで、よくタンバリンを使ったアイデアを出してくる。Real Estateのアルバム制作は楽しかった。マズのアルバムをニューヨーク州北部で録音して、その後に寄ったんだ。Real Estateも同じ時にニューヨーク州北部で録音していたからね。そして彼らの曲のいくつかにパーカッションを加えた。自主隔離が始まる直前にアルバムが出る予定で、Real Estateはアルバムの曲のいくつかでドラマーを必要としていた。だから俺が参加した。楽しかったよ。



──それでは最後に、あなたが好きな現役のドラマーを教えてください。本人と話す機会があったら伝えます。

1人に絞るのは難しいな。

──複数でも結構ですよ。

なんで頭の中が真っ白になっちゃったんだろう。俺は名前を覚えるのがすごく苦手なんだ。それはまた今度答えるということで良いかな?

──はい、スカイプにテキストで送ってもらえればと思います。ありがとうございました!

(*まだ届いてません。待ってます!)



Muzz - Muzz
(Matador / Beatink)


1. Bad Feeling
2. Evergreen
3. Red Western Sky
4. Patchouli
5. Everything Like It Used To Be
6. Broken Tambourine
7. Knuckleduster
8. Chubby Checker
9. How Many Days
10. Summer Love
11. All Is Dead To Me
12. Trinidad