故Andrew Weatherallによるリミックス・シングルも話題を呼んだ、英ハリファックス出身のインディー・ロック・トリオThe Orielles。そのセカンド・アルバム『Disco Volador』の冒頭を飾る「Come Down On Jupiter」の歌詞は、アンドレイ・タルコフスキーの映画『鏡』の中で、監督自身が朗読する父アルセニー・タルコフスキーの詩「初めての逢瀬」にインスパイアされているという。

同じくタルコフスキーの信奉者であるPatti Smithは2012年、Sun Raの曲に詩をつけた、「Tarkovsky(The Second Stop Is Jupiter)」という曲を発表した。ヴォーカル/ベースのEsmeとドラムのSidonieのHand-Halford姉妹はDJとしても活動しているというだけあって、音楽センスには定評のある彼女たち。パンクやハウス、イタリアン・チネ・ジャズから辺境サイケなど、様々な音楽やカルチャーを線で繋いで星座を象ったようなアルバムについて、メールでインタビューに答えてくれた。



音楽をたくさん聴かなかったら
自分は良いプレイヤーにはなれなかった


──2018年に開催された内田裕也のNew Years World Rock Festivalのロンドン公演には、どういった経緯で出演することになったんですか? もちろんあのイベントが実際には大晦日に開催されていないことはみんな知ってますが…。

超適当にメールをもらって、参加しないかって聞かれたんだけど、楽しそうだからやることにしたんだ! 結果的には超楽しいフェイク大晦日になったけどね、ハハハ。



──2019年のBig Weekendで、Esmeが水原希子デザインのTシャツを着ているのが気になったんですが、彼女のことは知ってたんですか?

彼女のことは知らなくて、彼女の作品だってことも知らなかったんだけど、あのTシャツのデザインと色が気に入ったから。でも彼女が出演してる作品も絶対に見ないとね、ありがとう!



──シングルでリリースされた「Sugar Tastes Like Salt」のAndrew Weatherallミックスは、どういった経緯で実現したんでしょう? 彼と話したことはありますか?

レーベル経由で実現したんだけど、彼らがAndyと近しい関係にあったから。幸運なことに、何度か彼と会う機会もあったんだ。すごくフレンドリーで、暖かい心を持った面白い人だった。



──新作『Disco Volador』を共同プロデュースしたMarta SalogniのスタジオZonaの名前は、アンドレイ・タルコフスキーの映画『ストーカー』から取られているそうですね。彼女との作業はいかがでしたか? 「Whilst The Flowers Look」で、彼女にイタリア語を朗読してもらった理由は?

彼女とはいろんな部分で繋がっていて、物事の趣味とか、政治社会的な話題についても、似た視点を持ってる。彼女との作業はいつも素晴らしくて、触発されるし、周りにいてくれると楽しいんだ。博識だし、いろんな形の創造力を許容してくれる。あの詩に関しては、誰に読んでもらったらいいのかわからなかったんだけど、彼女が母国語で朗読してくれたらクールだし、Esmeの朗読に呼応してくれると思って決めたんだ。

──ところで、「Memories of Miso」のミソって一体?

ミソは猫の名前だよ!

──アルバムに影響を与えた映画や小説ってありますか?

『ふたりのベロニカ』や『欲望』といった映画と並んで、村上春樹の『海辺のカフカ』は間違いなくインスピレーションだったね。

──本作収録の「Bobbi's Second World」はファースト・アルバムと同じ2018年にリリースされていますが、当時から次のアルバムのヴィジョンがあったのでしょうか?

そう、当時既に半分ぐらいアルバムのデモがあったんだけど、「Bobbi's Second World」は一番シングル向きで強力な曲だった。タイトルはわたしたちが飼っているBobbiというまた別の猫のことで、彼女には家の前と裏庭で違う世界があるんだ。

──「Rapid I」は“RapidEye”という人工衛星を連想させますが、本作のスペーシーなサウンドや、“boogie to space, space to boogie”というコンセプトには、どんな意味が込められているのでしょう?

そう、でも同時に、(「Rapid I」は)レム睡眠についての考えでもあるんだ。(“boogie to space, space to boogie”は)もともとアルバムのタイトルにしようとしていた。わたしたちは片面を切実で、アンビエントで、落ち着く感じ(space to boogie)にして、片面をアップビートで、ダンサブル(boogie to space)にするというアイデアが気に入っていたから。このコンセプトを心の片隅に置いて、“boogie to space”と“space to boogie”というコンセプトが、どちらもひとつの曲に存在するように、緊張と緩和という考え方を使いながら曲を作ったんだ。



──あなたたちは音楽のセンスも良いですし、ライヴ・バンドとしても素晴らしいと思うのですが、自分たちの曲を作るうえで、聴く楽しさと演奏する楽しさ、どちらを重視していますか?

うー、興味深い質問。間違いなくこのふたつには強い関係があるよね。曲を作ることの楽しさって、わたしたちがそれに誇りを持って愛していれば、演奏することも楽しくなることを意味しているから。個人的には聴くことより演奏することのほうが好きだけど、それは密接に繋がっていると思う。音楽をたくさん聴かなかったら、自分は良いプレイヤーにはなれなかったと思うから。他のプレイヤーにいつも触発されてるし、そのことが創作を後押ししてくれるんだ。

──では最後に、メンバーそれぞれの最近のお気に入りを教えてください。



Sidonie:Frank Zappa - The Hot Rats Sessions
Esme:Linda Perhacs - Parallelograms
Henry:Silver Jews - American Water



The Orielles - Disco Volador
(Heavenly)


1. Come Down On Jupiter
2. Rapid I
3. Memoirs Of Miso
4. Bobbi's Second World
5. Whilst The Flowers Look
6. The Square Eyed Pack
7. 7th Dynamic Goo
8. A Material Mistake
9. Euro Borealis
10. Space Samba (Disco Volador Theme)