悲しき酒場の唄

“夜の9時を15分回った頃、僕はチャーリーをネオン・スカイラインに呼び出した。スツールを確保すると、僕のことをよく知っているローズは、何も聞かずに冷たい缶を開けて、目の前に置いてくれる。ありがとうと言うと、僕はジュディと一緒にここに来ていた頃のことを思い出していた──”



とあるパーティーに集う人々を描いた前作『The Party』が絶賛されたカナダのシンガー・ソングライターAndy Shaufの新作『The Neon Skyline』は、その路線をさらに推し進め、“ネオン・スカイライン”という名前のバーを訪れる人たちの、一夜を描いたコンセプト・アルバムだ。

ミックスを手掛けたのは、Andyも敬愛するElliott Smithの諸作で知られ、『The Party』の後に録音されたシングル「Jenny Come Home」(リリースはこちらが先)でもタッグを組んだRob Schnapf。前作に続いてすべての楽器をAndy自身が演奏し、トレードマークとも言える2本のクラリネットを使った室内楽的なアレンジこそ変わりないが、サイケデリックな雰囲気もあった前作と比べると、アコースティック・ギターの弾き語りを基調とした本作は、よりシンガー・ソングライター的な作品となっている。

スプリング・リバーブのペダルを使ったというリード・ギターの甘いトーンが、アルバムが進むにつれて酔いの回るような心地良い酩酊感を生み出しており、ハンドクラップが軽快な先行シングルの「Try Again」や冒頭の「Neon Skyline」など、ギター・ポップとすら言えそうな曲もあるが、その歌詞の内容は前作以上にヘヴィだ。



待ち合わせ時間に遅れてやってきたチャーリーから、街を去ったはずの元恋人ジュディが帰ってきたことを聞かされた主人公は、バーテンダーのローズが吸うクローブ煙草の匂いで、忘れていた記憶を思い出してしまう。とある旅行の帰り道で起きた不幸な事故をきっかけにジュディとの関係にヒビが入り、険悪になってしまったのだ。ディストーション・ギターが不穏な空気を運ぶ中、彼女を驚かせようと思って早く帰宅したら浮気相手と鉢合わせしてしまったという「Things I Do」で、主人公は後悔の念に襲われる。

そんな彼を現実に引き戻すかのように声を掛けたのが、ちいさな子供を持つ母親のクレアだ。ミステリアスなギターのストロークが印象的な「Living Room」では、幼い頃父親に見せたくて絵を描いたのに冷たくあしらわれたという記憶のある彼女が、自分の息子に同じように絵を見せられて、ないがしろにしてしまったというエピソードが語られる。



クレアの話を聞いて、「間違えて他人のリビングに入ってしまったみたいだ」と顔を見合わせる主人公とチャーリー。ふたりは「子供は2歳になるまで前世の記憶があるらしい」という与太話に花を咲かせ、主人公はもしも生まれ変わったら、ジュディは自分とまた一緒になりたいだろうかと想いを巡らせるのだった。

塞ぎ込む彼を見かねたチャーリーは、クレアも誘って別の店に場所を移そうとするが、そこに思いがけずジュディが現れ、4人は月明かりの下、夜の街へと繰り出すことになる。昔と同じように冗談を言い、笑い合うふたり。ジュディにコートの袖をつかまれ、「懐かしいな」と言われた主人公は思わず「僕も君が懐かしいよ」と口にするが、「コートのことだったんだけど」と返され、気まずい思いをするハメに。



そんな時、消防車の行き交う音を聴いて主人公が思い出したのは、家に帰ってこないジュディを、朝の4時まで待っていた日のことだった。サイレンの中、燃え上がる炎を眺めながら立ち尽くしていた貧しい家族を見て、いっそのこと全部燃えてしまえば、また新しく始められるのにと思う主人公だったが、自分自身がすでに燃え尽きてしまっていたことに、彼は気づいていなかったのだ。

ところがそんな話をすると、昔の出来事を蒸し返されたジュディは不機嫌になってしまう。その時彼女のお気に入りの曲が流れてふたりは手を取り合うが、曲が終わるとジュディは何事もなかったかのように店を去り、チャーリーとクレアも、最後の一杯を空けて家路に就くのだった。

アルバムのエピローグとなる「Changer」では、街に戻ってきた気分屋(Changer)の元恋人に向けて、“Change On(変わり続けてくれ)”と歌われる。束の間の再会は記憶を甦らせてはくれるが、変わってしまった人の心を元に戻すことはできない。失恋は悲しいけれど、それを受け入れて成長することを、『The Neon Skyline』は描いているのだ。



Jeremy's Wedding
ジェレミーの結婚式


It was so nice
とても素敵だったよ
I thought the bridesmaids looked so beautiful
花嫁介添人たちも美しいと思ったし
Jeremy's suit was a little stiff
ジェレミーのスーツは少しきつそうだった
But that's how it goes
でもそれはいつものこと
Judy
ジュディ

Why didn't you come say hello in the receiving line ?
どうして歓待の列に来て挨拶しなかったの?
I think you would have liked to say "hi"
「ハイ」って言いたかったんだろうと思うけど
Oh you look so nice
君は素敵だったよ
Judy
ジュディ

Part of me
僕はどこかで
Misses you almost all the time
君がいなくていつも寂しい
you stayed out of sight, out of my hand
君は僕の視界や手の届かない場所にいる
Oh I disagree
賛成しないな
Judy
ジュディ

Smoke a Joint
ハッパを吸おう
By the side stairs it's so nice
階段の脇で、良い気分だよ
You would asked me if I wanna dance
君は踊らないかと尋ねて
Oh it makes me laugh
僕を笑わせてくれる
Judy
ジュディ

Skip a step
足を踏み外して
Land on your toe you make a face
爪先を踏まれた君は顔をしかめる
You forgot that I'm so bad at this
僕が下手だってこと忘れてただろ
and I'm so stoned
それにひどく酔ってるし
and it makes me laugh
笑わせてくれるよ
Is it okay?
これでいいかな?
Judy?
ジュディ?

and it makes you laugh
そして君を笑わせる
Is it okay?
これでいいかな?
Judy?
ジュディ?

※『The Neon Skyline』の限定盤付属の7インチに収録