23年ぶりにオリジナル・メンバーでの活動を再開し、10月には東京・大阪でのライブも決定しているVelvet Crush

80年代からレコードを自主制作し、ファン主導による来日公演を行うなどDIYな活動を行ってきた彼らの、ノイジーなギター・サウンドと瑞々しいメロディーが融合した名曲の数々は、今も多くのポップ・ファンに愛されている。

来日公演を前にメールでインタビューに答えてくれたのは、ヴォーカル/ベースのPaul Chastain。バンドの現状報告から、96年のJeffrey Underhillの脱退の経緯、故Tommy Keeneの話など、いろいろな話を聞かせてくれた。



このままリユニオンの計画が立ち消えてしまったら
Tommy Keeneはきっと怒るだろうということに気がついた


――こんにちは、お久しぶりです。まずは、Velvet Crush再始動おめでとうございます。7月にはロードアイランド〜マサチューセッツでライブをやっていましたが、あの辺は昔のVelvet Crushの本拠地ですよね? 久しぶりのライブはいかがでしたか?

以前の活動の拠点だったプロビデンスや、その周りで小規模のライブをいくつかした。たくさん昔なじみの人が来てくれた。複数のライブにきてくれた人もいたよ。今までプレイしたことのないヴェニューばっかりだったけど、ひとつひとつ個性があって全部よかったよ。ツアーもうまく行った。僕たちは、以前の自分たちがどうだったかまだ覚えていて、そして今の自分たちがどんな風に一緒にやっていけるか模索していたと思う。ライブごとに良くなって、スムーズになっていったと思う。

――今回は、23年ぶりにギタリストのJeffrey Underhill (Borchardt) が参加するオリジナル・メンバーでのツアーですね。言いにくいかもしれませんが、1996年にJeffreyが脱退した時のことを教えてください。あの時に一度Velvet Crushは解散して、Jeffrey抜きで再結成したという認識で合っていますか?

できる限り思い出してみるね。3rdアルバム『Heavy Changes』の完成後、(当時の所属レーベルの)Creationはあの作品をリリースしないことを決めた。その後のツアーは、辛くて、そんなに楽しくなかった。2ndアルバム『Teenage Symphonies to God』があんまり商業的に成功しなかったこと、また“メジャー・レーベル”のEpicとの仕事やCreationから突き放されてしまったことで、僕たちはしばらくの間ぽっかりと穴が空いたような気分だった。この時点でRic(Menck/ドラマー)はLAに引越しすることを決め、僕は南ロードアイランドに引っ越すことにしていた。正直言って、Jeffreyがバンドを脱退したのか、僕たちみんなそれぞれがそう決めたのか分からないけど、僕たちは、そのままなんとなくそれぞれ別の方向に進んでいった。Ricと僕はバンドをすること自体に背を向けることはなく、僕はロードアイランドのナラガンセットにある家で曲を書いたりレコーディングを続けていた。ある時Ricと僕はもう一度Velvet Crushのアルバムをリリースしてみたくなった。僕たちは旧友であるMatthew Sweetに電話をして、もう一度僕たちとアルバムを作ってくれないかと頼んだ。彼は快諾してくれて、そうしてできたのが4thアルバム『Free Expression』だ。同じ頃僕たちは、Bobsled Recordsという自主レーベルを立ち上げたいというVelvet Crushのファンに出会った。彼がアメリカで『Free Expression』をリリースすることになって、日本ではソニーがリリースしてくれることになった。そうして、あのアルバムがJeffrey抜きで作った最初のアルバムとなった(『Heavy Changes』時代からサポートギターで入ってくれていたPete Phillipsも参加していない)。長い説明で申し訳ない。ちょっとややこしいんだ。


(左から)『Teenage Symphonies to God』(1994)、『Heavy Changes』(1998)、『Free Expression』(1999)


――2014年にボストンで3人揃って演奏してから、今回の再始動にいたるまでの経緯を教えてください。もともとはTommy Keeneを含めた4人でツアーをする予定だったのでしょうか?

2014年にMatthew Sweetのツアー(※PaulとRicはMatthew Sweetのバンド・メンバーとしてツアーに参加している)のオープニング・アクトをTommy Keeneがソロで務めていた。Tommyのセットの最後の曲は、Lou Reedの「Kill Your Sons」だったのだけれど、そこでMatthew以外のバンド・メンバーがステージに入っていくような演出だった。ボストンでのライブはJeffreyが見にきてくれることになっていた。だからその日はJeffreyにも入ってもらって、代わりにVelvet Crushの曲をTommyと一緒に演奏しようということになった。多分これが僕たちが正式なリユニオンを考えるきっかけになったと思う。



※ボストンでのサプライズ・リユニオンの動画


2017年の夏、またTommyがMatthewのツアーに加わった。TommyはVelvet Crushのリユニオンにとっても乗り気で、毎日熱心にRicと僕に発破をかけていた。そのツアーでロードアイランド/マサチューセッツ方面に行った時にJeffreyが、「Tommyと4人で集まって一度Velvet Crushのジャムセッションをしよう」と提案してくれた。その日は本当に楽しくて、またVelvet Crushを再起動させようと計画し始めた。Tommyが一緒だと、どんどん計画が進んでいくように思えた。

その年の11月にTommyが亡くなって、僕たちはかなり打ちひしがれてしまった。そしてTommy抜きではこのまま計画を進めていくのは絶対不可能だとみんな思っていたと思う。しばらくして、僕たちは、もしこのままリユニオンの計画が立ち消えてしまったら、Tommyはきっと怒るだろうということに気がついた。Tommy無しではまだ大きな穴がぽっかり空いたようだったけれど、とにかくやってみることにした。

僕たち3人は、2018年の夏にミネアポリス(Ricが今住んでるところの近く)で、試しに集まってリハーサルをした。もともとJeffreyとRicと僕で曲を演奏するところから始めたように、もう一度そんな感じで、僕たちは再始動した。3日間リハーサルしたり一緒にいたら、近い将来いくつかライブができそうな気分になった。

――Tommy Keene亡き後、誰がサポート・ギタリストをつとめるのか多くのファンが注目していたと思います。今回のサポート・ギタリスト、Jason Victor(Steve Wynn & The Miracle 3、The Dream Syndicate)が参加することになった経緯を教えてください。

Jason Victorは、ここ数年Matthewのバンドでギターを弾いているんだ。一緒にいて僕たちは、Jasonの演奏や熱意、適応性や性格が好きになった。2018年のMatthew Sweetのツアー中、僕たちはVelvet Crushのライブで誰にギターを弾いてもらうかを考えていた。Ricと僕は移動中に相談したりしていたけど、ある日、そこにJasonもいたのを覚えている。JasonはVelvet Crushのライブに参加しても良いというようなことを言っていたけど、その時点では僕たちは彼が本気だと思っていなかったので、一度も尋ねたりしなかった。彼はすごいミュージシャンで、僕たちは仲良しだし、しばらく一緒に演奏もしている。だからJasonがバンドに参加してくれるのは、堅実なチョイスのように思えた。Jasonはきっと観客が喜んでくれるようないいエネルギーをバンドに吹き込んでくれるはずだと思った。それに、Jasonは日本に行ったことがないから、(短い滞在になるけど)日本に行くのをとっても楽しみにしているし、素晴らしい日本のヴェルクラ・ファンのために演奏するのを楽しみにしているよ。

――7月のライブのセットリストを見ましたが、オールタイム・ベスト的な選曲ですね。Jeffreyが離れていた頃の曲を演奏しているのも嬉しかったです。特に『Stereo Blues』からは多めに選ばれていますね。選曲はどのように決めたのでしょうか?

初めの2作からの好みの曲と、それ以外のアルバムからの代表的な曲をバランス良く入れようとした。僕は、『Stereo Blues』からのロック・ソングが好きなんだ。そうだ、『Stereo Blues』の曲にはJeffreyが演奏したことがないのもあるからね。実際、Ricと僕だって、レコーディング以来一緒に演奏したことのない曲もある。そんな曲が新しいVelvet Crushでの僕のお気に入りの曲になっている。この夏に始動するまで、これらの曲は全くほったらかしだったから、まるで新曲みたいなんだ。まだ発展中。演奏するたびに変わってきている。ある意味、セット全てがそんな感じでもある。僕たちはまだ音を模索していて、それが楽しくてワクワクするんだ。少なくとも僕にとってはね。


『Stereo Blues』(2004)


――00年代中頃以降のバンドの活動休止期間中、あなた以外の2人はどんな音楽活動をしていたんでしょうか?

Jeffreyは、何年かオレゴンとフロリダにいて、またロードアイランドに戻ってきた。ロードアイランドのポーツマスに奥さんのRachel Blumbergと一緒に住んでいる。RachelはThe Decemberists、Califone、M. Ward他多くのアーティストと共演しているミュージシャンで、ビジュアル・アーティストなんだ。Jeffreyは、(Rachelとの)Field Drums、Honey Bunch、Death Vessel、(Brent Rademakerとの)The Cosmic Gospel Hourなどのバンドで演奏していた。その他の時間はIKEAで仕事したり、かっこいいビーチハウスを手入れしたりしていた。

Ricは、数年前までLAに住んでいた。その間彼はTydeでドラムを叩いたり、何年も色々なアーティストと演奏したり、レコーディングをしていた。それに、33 1/3シリーズ(※一人の著者が一枚のアルバムについて一冊の本を書く企画)でByrdsの『Notorious Byrd Brothers』の巻を執筆したり、Freak Beat Recordsというレコード店で仕事したり、Matthew Sweetのバンド・メンバーとしてツアーしたり、レコーディングをしたり(今もしてるね)。奥さんのLauraとLAからミネソタ州のホプキンズに引っ越してからは、地元のクールなレコードショップで働いたり、執筆をしたりしている。

――今後、Velvet Crushとしてニューアルバムを作る可能性はありますか? 作るとしたら、どんなアルバムにしたいですか?

計画はしていて、今は曲を作っているよ。僕たちが集まって実際に曲ができると、方向性は定まってくると思う。今のところは、色々な可能性を視野に入れて、まだ明確に決めてはいないよ。

――『In the Presence of Greatness』、『Free Expression』のレコードが再発されましたが、『Teenage Symphonies to God』や、それ以外のアルバムの再発の予定はありますか?

『Teenage Symphonies to God』のレコードも出したいんだけど、どうしたらできるか模索しているところ。あのアルバムだけ著作権を持っていないんだ。

――日本ツアーではどんなグッズが販売されますか? アナログ盤もありますか?

Tシャツ、トートバッグ、タオル、ワッペン、ステッカー、バッジなど。音源はどれだけ持って行くかわからないけど、いくつか販売したいと思っているよ。

――日本ツアー以外で決まっているVelvet Crushのライブの予定はありますか? また、The Small Square(PaulとドラマーのJohn Richardsonによるユニット)、Matthew Sweetのツアーなど、活動の予定があれば教えてください。

Velvet Crushのスペイン・ツアーを計画している。それに、多分来年アメリカでもう少しツアーをする。今はMatthew SweetのUSツアーに参加しているよ。The Small Squareとしては、新しいアルバムを今制作中。来年初めにアメリカのレーベルでリリースしたいと思っている。リリースの日程が決まったら、日本を含めてライブをしようと思っているよ。

(翻訳:Yatsuka Chastain)


※1992年の来日公演より


VELVET CRUSH | "REUNION" Japan Tour 2019

10月1日(火)大阪・梅田クラブクアトロ
開場18:00/開演19:00
前売¥7,800(スタンディング・整理番号付・税込)※入場時別途1ドリンク代
問い合わせ:梅田クラブクアトロ(06-6311-8111)

10月2日(水)東京・渋谷クラブクアトロ
開場18:00/開演19:00
前売¥7,800(スタンディング・整理番号付・税込)※入場時別途1ドリンク代
問い合わせ:M&Iカンパニー(03-6276-1144)
http://www.mandicompany.co.jp/VelvetCrush.html

来日予定メンバー
PAUL CHASTAIN - Vocal, Bass
RIC MENCK - Drums
JEFFREY UNDERHILL (Borchardt) - Guitar
JASON VICTOR - Guitar