フジロックでのステージも好評だったMelina Duterteのソロ・プロジェクトJay Somが、サード・アルバムとなる『Anak Ko』を、8月21日に日本先行でリリースする。

母親の生まれたフィリピンのタガログ語で“わたしの子”を意味する本作には、アルバムは自分が生んだ子供のようなものだという、彼女の想いが込められているという。本人曰く“Alanis MorissetteミーツCocteau Twins”だという「Superbike」や、Steve Reichの「18人の音楽家のための音楽」に影響を受けたという「Devotion」など、新境地を開いた新作について、エピソードを交えながら語ってくれた。



Kevin Shieldsのサウンドを再現できる
LOOMERっていうギター・ペダルを買った


――気のせいかもしれませんが、フジロックで新曲「Nighttime Drive」を紹介する時に、全然違うタイトルを言ってませんでした?

言ってた(笑)。“次の曲は「John Mayer」”ってね。あの曲がJohn Mayerっぽく聴こえるからなんだけど、“Me and All My Friends〜”って曲なんだっけ? あ、「Waiting On The World To Change」だ。まあ、内輪ネタというか(笑)。



――一週間前にPitchfork Music Festivalに出演した時も、違うタイトルを言ってませんでした?(笑)

そうそう、実はよくやってるんだけど、面白いかなと思って(笑)。

――あなたが知っているかどうかわかりませんけど、カナダのAndy Shaufというシンガー・ソングライターがいて…。

彼のことは大好き!

――本当ですか? この曲と「Peace Out」には、少しAndy Shaufっぽい雰囲気もあると思いました。

そうかな…(納得行かない様子)。

――そうですか(笑)。ところでこの曲には“ホールフーズで万引きした”というフレーズが出てきますが、これは実話ですか?

イエスとも、ノーとも言えない(笑)。これも内輪ネタというか、ホールフーズって家族経営じゃなくて大企業だし、やってる人も多いって聞くけど…トラブルに巻き込まれたくないから止めとこうかな(笑)。

――あなたは肩にDeath Cab For Cutieのタトゥーを入れていますし、新作にはCureも影響を与えているそうですが、フジロックでこの2組は見ましたか?

ノ〜。すぐに帰らなくちゃいけなくて。うちのベースのDylanがCureの大ファンなんだけど、彼も悲しがってたな。

―― あなたはMitskiとも親しくて、自宅でツアー・グッズのスウェットを着ている写真もありましたが、彼女のステージは見ましたか?

それが見られなくって。というのも、私たちが会場に着いたのは、彼女が演奏した後だったから。

――彼女は「人間に戻る」と言って、SNSをすべて辞めてしまいました。あなたの新作の「Tenderness」もSNSでの人間関係について歌っているそうですが、共感する部分はありますか?

Mitskiのしたことは、すごく理にかなってると思う。人気という点では、彼女は私とは全然違うレベルにいるから。2016年に私が彼女とツアーした時、トイレにまで追いかけてくるストーカーみたいな人がいたんだけど、今でもそうだと思う。だから自分と繋がっているものを全部消してしまったのも理解できるかな。みんなが彼女の発言に執着して、崇めていて、彼女はその中にいたくなかったんだと思う。そこから距離を置くっていうのは賢いよね。



――「Tenderness」は、それとはちょっと違う?

そうだな、私の曲はどちらかと言うと、インスタグラムをスクロールしていて、自分といろいろあった人たちを見つけた時のこと。そういう人たちはネット上のどこにでもいるから、逃れようがないっていう。

――ちなみに、Prefab Sproutに影響を受けたというのはこの「Tenderness」だと思うのですが、彼らのどの曲が好きですか?

うーん、「Cars and Girls」か「Goodbye Lucille #1 (Johnny Johnny)」かな。



――そのふたつが「Tenderness」にも影響を与えている?

いや、実際に影響を受けたのは、『Steve McQueen』に入ってる別の曲で…ちょっと名前が出てこないけど、トラックリストを見ればわかると思う。

――ところで、あなたのbandcampにデビュー前の曲が残されていますが、自分の昔の曲を聴かれることに抵抗はないのでしょうか?

人が聴く分には構わないかな。自分で聴くとちょっと恥ずかしいけど(笑)。誇りには思ってるけど、「あ〜、若かったな〜、何考えてたんだろう〜」って感じで。

――一番古い音源は18歳の頃の「See You, Later」という曲ですが、このアートワークはあなたの部屋ですか?

そう、高校の最後の年かな。



――当時を振り返ってどう思います?

悪い思い出は、学校に通ってたこと(笑)。世界へのドアを開けて、大人になることを期待されているのに、大学に行けばいいのか、仕事に就けばいいのか、誰も教えてくれなくて。人生の教訓っていうか、18歳にありがちな悩みだよね。

――「Forget About It Kid」という曲のアートワークに写っているのは、あなたの飼い犬ですか?

そう、わたしの犬。彼女はここにもいるよ(と言って腕のタトゥーを見せる)。名前はYang Yangっていうんだけど、フィリピンのニックネームで、“可愛い”みたいな意味。



――同じく、「I Think You're Alright」のアートワークに写っているのは、若い頃のあなたのお母さんでしょうか?

そうそう。日付が入っている日に撮ったんだと思う。



――新作『Anak Ko』のタイトルも、お母さんの母国フィリピンのタガログ語で“わたしの子”という意味だそうですね。フィリピンならではの変わった習慣ってありましたか?

変わった習慣…でもママは私が知っている最高のコックで、今でもフィリピン料理を、みんなのパーティーに届けたりしてる。あとはカラオケかな。フィリピンではどこの家にもカラオケ・マシーンがあって、いつも歌ってるから。

――あなたのレパートリーは?

最近友達とカラオケ・バーに行って歌ったのは、Kelly Clarksonの「Since U Been Gone」。名曲だよね。昔はBonnie Tylerの「Total Eclipse of the Heart」で叫んでた。それからWheatusの「Teenage Dirtbag」。



――そういえばtwitterのアイコンが、柔道着みたいな服を着て刀を持っている写真になってましたが、あれは一体?

あれはパパが撮ったんだよね(笑)。切れちゃってるけど兄弟も写ってて、確かバットを刀代わりにしてるんだけど、私は空手を6歳から16歳ぐらいまで習ってて、2年生の頃には黒帯だったから。



――70年代にフィリピンのフレディー・アギラという歌手が「Anak(息子)」という曲を歌って、ここ日本でもヒットしたんですが知っていますか?

知らないけど、その名前には聞き覚えがあるから、たぶん聴いたことがあると思う。



――彼はカウボーイ・ハットがトレードマークなんですけど、そういえばあなたもよくカウボーイ・ハットを被ってますよね。

カウボーイ・ハットは確かに好き。でもフィリピンの習慣じゃなくて、カウボーイの習慣だと思うけど(笑)。

――新作の曲作りはジョシュア・ツリーで行ったそうですが、どうしてジョシュア・ツリーだったのでしょう? 

LAに引っ越してきた時、よくレコーディングをしてたんだけど、たくさんすることがあったり、たくさんの人が訪ねてきて、気が散ることが多くて。毎晩のようにライヴがあるしね。そこから離れて、自分自身に集中したかったというか。

――「Superbike」のビデオに映っているのもジョシュア・ツリーですか?

そう!



――最近だとKurt VileやWarpaintとか、古くはU2だったり、たくさんのミュージシャンがジョシュア・ツリーでレコーディングしていますが、そういったことは知っていましたか?

うん。だからちょっと安っぽいし古臭いのかもしれないけど、自分で試してみて、どうしてみんながそうしたがるのかもわかった。砂漠の真ん中で美しくて、天気も良いし、とても静かで、すべての音が聴こえる。ときどき雪も降るんだけど…実際に、一日だけすごく高くまで雪が積もって、次の日には溶けてしまったこともあって。

――録音自体はこれまで通りあなたの部屋で行ったそうですが、今回はあなたひとりではなくて、バンド・メンバーを筆頭に、様々なゲスト・ミュージシャンが参加していますね。部屋に他人が来てレコーディングするのは抵抗ないのでしょうか?

いいえ、むしろ逆かな。ずっとやってきたことだし、誰かを録音したり、プロデュースしたいという気持ちもあったから。才能のあるミュージシャンをたくさん知ってたから、好きな人を呼んで、一緒に作業をするチャンスだったし、ドラムも自分で叩きたくなかったし(笑)。

――次は実際にライヴを見た人からの質問ですが、「バンドメンバーとはとても仲の良い印象を受けました。デビュー前からの関係なのでしょうか?」とのことです。

ドラマーのZachとは彼が14歳で、わたしが15歳ぐらいの時から知り合いで、一緒に演奏してきた。ジャズ・グループで彼がドラムを叩いて、わたしがトランペットを吹いたり。ベースのDylanとギターのOliverは幼馴染みで、彼らとは4年ぐらい一緒に演奏してるかな。すごくタイトで、音楽的にも良い関係になっていると思う。

――この質問をくれた人によると、「ギタリストとは少し歳が離れているようにも見えました」とのことですが。

そんなことないんだけど、ヒゲのせいかな(笑)。でも意外と若いんだよね。

――実際にライヴを見たんですが、「Superbike」のギター・ソロはOliverではなくて、あなたが自分で弾いてるんですね。

そう。「Superbike」のビデオにも写っているから彼が弾いてるみたいに思えるけど、実際はわたしが弾いてる。My Bloody ValentineのKevin Shieldsのサウンドを再現できる、LOOMERっていうギター・ペダルがあるんだけど、そのためだけに買って(笑)。

――「Crown」のギター・ソロは?

あれはOliver。すごくクールだよね。

――アルバムでメンバーがドラムを叩く曲と、自分で叩く曲はどのように決めているんでしょう?

それを決めるのも初めてだったかも。「If You Want It」と「Nighttime Drive」では自分で叩いてるんだけど、この2曲はすごく簡単だったから。他の曲はもっとファンキーで複雑だから、Zachに叩いてもらったほうがいいと思って。それから友達のJustus Proffitにはもっとパンクっぽい曲、「Peace Out」と最後の曲「Get Well」で叩いてもらった。

――「If You Want It」のドラムはOasisを意識したとか?

「Wonderwall」っていう曲でドラマーがホットロッド・スティックを使っているって聞いて同じものを買ったんだけど、甲高くて、跳ねるような感じにしたかったから。

――アルバムに参加しているAnnie TruscottのバンドChastity Beltや、シンガー・ソングライターのSASAMIの作品をプロデュースしていると聞きました。Chastity Beltのアルバムは9月に出ますが、SASAMIとの作品はいつリリースされるのでしょう?

SASAMIのアルバムはわたしがプロデュースしたわけじゃなくて、2人ともSokoと録音していたから、同じセッションにいたんだよね。彼女のギターやフレンチホルンを録音したりはしたけど、彼女も自分でプロデュースする人だから。



――ところで、「see you next year」とMCで発言していましたが、来日の予定はあるんでしょうか? それとも願望?

両方かな(笑)。2月にジャカルタのジャズ・フェスティバルに出演するから、その頃に戻ってこれたらいいな。

(通訳:和気充郎、質問作成協力:今井雄太)

Anak Ko
Jay Som - Anak Ko
(Polyvinyl / Tugboat)

1. If You Want It
2. Superbike
3. Peace Out
4. Devotion
5. Nighttime Drive
6. Tenderness
7. Anak Ko
8. Crown
9. Get Well