Ⓒ Taio Konishi

愛くるしいルックスと美しい歌声にパワフルなパフォーマンスで、フジロックフェスティバル'19、3日目のお昼のレッドマーキーを大いに沸かせたStella Donnelly

しかし、もしあなたがルックスだけで彼女を評価していたとしたら、それはナンセンスだ。満を持してリリースされたファーストアルバム『Beware of the Dogs』は、友人のレイプ被害の体験を基にし、#MeTooムーヴメントの代表曲として取り上げられる「Boys Will Be Boys」を始めとして、男女間の格差や故郷オーストラリアにおける人種差別など、彼女が世の中や社会に対して「これっておかしいんじゃない?」と思ったことを訴えかける内容になっている。

でも彼女は世界に絶望しているわけではない。くるくると表情を変え、笑いとユーモアを交えながらも冷静に自分自身の意見をはっきりと言う彼女に、音楽は世界を変えられるかもしれない、という希望が見えてくるだろう。



「カワイイ!」と言ってTシャツを買った人たちが
私自身や私の政治への意見を理解してくれることを祈るわ


――フジロックはどうでしたか。何か他のアーティストは見ましたか。

うーん、実はあまり時間がなかったのよね。でもTENDREは見たわ。彼ら、素晴らしかった。あと同じオーストラリアのHiatus Kaiyoteもちょっとだけ見たわね。でも残念ながら、取材をたくさん受けていたから全然時間がなかったのよ。私のバンド・メンバーはThe CureやSIAを見たみたい。

――フジロックではライブ中にお父さんに挨拶していましたよね。

ええ、YouTubeでの配信を父が見ていたから、「ハーイ」って言ったの。

――そのお父さんはスタンダップ・コメディアンだったそうですが、自分の性格や音楽活動に何か影響がありますか。

そうなの! ちょっとの間だけだったみたいだけどね。影響はもちろんあると思う。私の父とその母、つまり私にとってのおばあちゃんはすごくお喋りが面白い人たちなの。彼らは人に喋るのが好きで、すごくフレンドリーでスウィートな人たちね。この温かくて誰にでもウェルカムな部分は、私に影響を与えたと思う。逆に母はおとなしい人なんだけれど、それはそれで魅力的なの。父親は今は学校の先生で、ちいさい子を教えているわ。母親は看護師をしているの。

――そういえば、あなた自身も介護の仕事に少し携わっていたことがあったとか。

ええ、介護の仕事、というかそれに近いことをしていたかな。ある友人がいて、その子が障害があって、毎週のように彼女を訪ねていたの。それでボランティアとして、例えば彼女がうまく喋れないのを手伝ってあげて、もっと自由に生活ができるお手伝いをしていたわ。

――そういった経験も、あなたの音楽に生かされているのでしょうか。

もちろん、間違いなく! 自分の周りで起きていることを、ポジティブに変えていこうとしていると思うわ。

――ご両親は、あなたの音楽活動をどう受け止めているのでしょう?

彼らはすごく嬉しく思っているみたいで、応援してくれているわ! 私のことをちいさい時からずっと見ていて、いろんなことをやってきたことも知っているから。私には歳の離れた妹と弟がいるんだけれど、両親は私たちがどんな選択をしても、それがどんなに大変なことでも、私たちのことを応援してくれていて、私たちが幸せで安全に過ごしてくれれば、どんなことでも挑戦してほしいと考えてくれているわ。シドニーのオペラハウスで演奏した時は、わざわざパースから駆けつけてくれたの!

――良いご両親ですね! ちなみに、ご両親が好きなあなたの曲は?

父は「Beware of the Dogs」、母は「Tricks」が好きなの!



――話は変わって、フジロックに向かう途中にラーメンを食べている写真をインスタグラムで見ました! 麺といえばデビューEP『Thrush Metal』のジャケットでヌードルを頬張っていますが、これは何を食べていたのでしょう?

ラーメン大好きなの! これは豚骨ラーメンよ!



――豚骨ラーメン…? ミーゴレンとかではなく?

そう、豚骨ラーメンよ! オーストラリアの私の家の近くにある日本料理のお店のラーメンで、それをテイクアウトしたのよ。TAKA'Sというお店で、有名だと思うわ。彼らすごくフレンドリーで私のことをよく知っていて、お店に行くと「ハーイ、ステラ!」って、いつも声をかけてくれるの!(笑)※恥ずかしそうに片手で目を隠す仕草をしながら

――オーストラリアに行く機会があればぜひ寄ってみます(笑)。ちなみに、日本で豚骨ラーメンは食べられました?

実は今朝、朝ごはんで食べたの! もう最高だった。熱かったけど超美味しかったわ!

――さて、あなたの音楽的なバックグラウンドについても聞かせてください。高校生の時はGreen Day等のカバー・バンドをやったり、その後は西オーストラリア・パフォーミングアート・アカデミーでジャズを学んでいたようですが、当時の音楽活動は、あなたの今のスタイルに繋がっていると思いますか。

そうね、私はラッキーだったんだと思う。これはとても長い長いストーリーなんだけれども。私の生まれたパースの街は、シドニーやメルボルンと比較すると音楽的に中心地の街じゃないのね。さっき挙げた街は音楽が盛んだけど、パースは「うーん、遠い!」って感じ。誰も音楽のことなんて気にしない! 街に音楽がない! だから私は10年間、ちいさなバーで、色々なバンドで演奏しながら自分のサウンドを育てていったの。そのうち5年間はカバー・バンドをやっていて、Michael Jackson、Stevie Wonder、The Black Eyed Peas、さらにAC/DCまで、ありとあらゆるものをね! 違うことをどんどん試してみるのは好きだったし、そのおかげで自分が何者かを考えるのに役に立ったと思う。あとは別のパンク・バンドもやったりしたわ。

――Tame Impalaもパース出身ですよね。

ええ、Tame Impalaやそのメンバーの別プロジェクトのPOND、GUM、それからSan Ciscoも出身が一緒で、狭い街だからお互い知り合いなの。私のバンドのベースをやっているJennifer(Aslett)*もGUMでも弾いてたり、お互いのメンバーを借りあったりしているわ。みんな良いヤツよ。

*San Ciscoのメンバーでもあるそう

――他に同郷でオススメのミュージシャンはいます?

Carla Geneveがオススメね。すごく美しいの。Courtney Barnettに少し似ているんだけれど、もっとジャジーなサウンドで本当にオススメ。



――あとでチェックしてみます! 過去にオーストラリアのバンドを取材する機会が何度かあったのですが、オーストラリアはアルバムをリリースするよりも、セルフ・プロデュースでEPをどんどんリリースしていくのを好むバンドが多いと聞きました。あなたも最初はメルボルンのDIYなレーベルHealthy TapesからデビューEP『Trush Metal』をリリースしましたが、その後USのレーベルSecretly Canadianと契約し、アルバムをリリースする選択をしたのはなぜでしょうか。

いいえ、彼らが私を選んだの! デビューEPを出したあの当時は、アルバムを作ってリリースするお金なんてなかったから、DIYなスタイルでベットルームで曲を作って、それをリリースしたのね。そのEPを出してから、BIGSOUNDフェスティバルに出ることになったの。これは、オーストラリア版のSXSWみたいな感じ。そこにSecretly Canadianの人が来て私のパフォーマンスを見てくれて、その後でミーティングをしたの。あ、実はその時も寿司レストランだったわ! 私ってどこでも日本食ね! それで彼は私を自分たちのレーベルに迎えたいと言ってくれて。私は同じレーベルのWhitneyとかAngel Olsenが好きだったし、彼らはOno Yokoもリリースしているし、素晴らしいアーティストがいるから「イエス!」と言ったわ。彼らは世界中で展開しているけれど、オーストラリアには拠点がなかったら、私はレーベルに所属しながら、オーストラリアでは自分でやることになったの。それの方が自分でハンドリングできるし、アメリカや他の国で活動していきたいわけではなかったから。そういった状況でこのレーベルに所属してやらせてもらえるのは、すごくラッキーなことだと思うわ。

――アルバムのタイトル曲の「Beware Of The Dogs」は、オーストラリアのメディアと政府が流す歴史的な、そして未だに継続する人種差別について歌っているようですが、具体的にオーストラリアに住んでいて、どういったシーンで差別を見たりしますか。

オーストラリアは興味深い国だと思うのね。なぜならすごく新しい国だから。200年ぐらい前に移住してきてできた国だから、歴史はとても短い。もともと住んでいたアボリジニの人々はとても深くて濃厚な歴史やカルチャーを持っていて、彼らのストーリーはすごく興味深いの。でも私たちは、彼らの場所を侵略して英語を強制してしまった。今でも彼らに対しての差別をオーストラリアで見るわ。オーストラリアだけでなく他の国でも、白人が差別をしているのを見る。もちろん全ての人がそうではないわよ。でもアメリカやイギリスとかで、パワーを持っている人がそうでない人たちを差別することは未だにある。私自身はそういう差別をするような人たちに加担したくないと思う。私は私の家族や周りの人たちのおかげで様々なカルチャーに触れてきたから、とても幸運だった。だから私は音楽で、オーストラリアの政府やメディアに疑問を投げてかけているの。オーストラリアの政治家でポーリン・ハンソンという人がいるんだけれど、マジで最悪な奴なわけ。彼女はオーストラリアにアジアの移民が来ないよう訴えたり、アボリジニの人が就職できないようにしたがっていたり、さらには今、ムスリムの人たちのことも止めようとしている! 彼女以外、みんな彼女のことが大っ嫌いよ。でも彼女は未だに政府に何年もいて仕事してるわけ! こんなの全然良くないよね。

――こういった政治の話を、普段から友人とカジュアルに議論します?

もちろん。議論することは大事なことね。批判することも大事だけれど、人の意見を聞くことは大切。私のアボリジニの友人からは特にこういった怒りについて聞いたりするわ。議論して、今の権力に対して疑問を持つことって必要ね。

――実は、日本人は政治的な話題を日常会話で避けてしまうんですよ。あなたはこう言った政治的なトピックや社会への批判を歌詞に込めているわけですが、日本のリスナーには、あなたの歌詞が英語であることや、こういった政治的な話を避けることもあって、あなたの歌詞を気にしていない人もいると思います。これについてはどう思います?

確かに! 私も実はそれを気にしていて、歌いながら、「彼らは私の歌っていることをわかっているかな?」と思ったりもした。私のサウンドが好きというだけで嬉しいことではあるわよ。その人たちが歌詞を理解してくれたらもっと嬉しい。だけどもし私の音楽(歌詞)が好きじゃないっていう人がいても、私は気にしない。私の歌詞はターゲットが決まっていて、全ての人に刺さるようなものではないっていうのはわかっているからね。

――なるほど。今日のインタビューに備えてフジロックのあなたのライブの感想を日本語でチェックしていたところ、「かわいい!」の感想で溢れていました。全ての人が、というわけではもちろんないのですが、あなたのビジュアルばかりに注目が集まっているように感じてしまいました。歌詞よりもあなたの見た目に興味を持たれることについては、どう感じてますか?

まさに! それは私も感じていたわ。うーん、鋭い質問ね。でもすごく良い質問。日本でJOURNAL STANDARDからTシャツを出そう、そして私の写真をそのTシャツに載せようと言われた時に、不安もあったのね。それは良い宣伝にはなると思う。ビジュアルが良いと思って買ってくれる人もいるでしょう。でもその人たちって私の歌詞を気にするのかなって。私にとっては歌詞の方が重要なの。でも今、私はあなたとこうやって話をすることができて、この内容が日本語の記事になるでしょう? そして私のイメージを気に入った人たち、「カワイイ!」と言ってTシャツを買った人たちがこの記事を読んだ時、どう感じるのか。私自身や私の政治への意見を理解して、彼らが私の音楽を判断してくれることを祈るわ。



ウディ・アレンの映画が大好き
だから本当に残念に思った


――ウディ・アレンが#MeTooムーヴメントを魔女狩りだと言ったことが取り上げられた2017年に「Old Man」のアイデアを思いついたそうですが、ウディ・アレン自身のことは好きだったのでしょうか?

そう、この話を聞いたときにすごく悲しくなったわ。だって私ウディ・アレンの映画が大好きなの! 『アニーホール』や『それでも恋するバルセロナ』はすごく好き。だから本当に残念に思った。でもウディ・アレンは女性や少女をどう扱っていたかが問題とされていて、女性たちに暴力を振るったハーヴェイ・ワインスタインとは少し違うと思う。でもウディ・アレンが暴力を振るわれた女性達が告発しようとしていることに対しこういう風に言うのはすごく残念だった。中には真実ではないことを言う女性もいるけれども。「Old Man」はこう言ったパワーと権力を持った、外では良く見える歳を取った男性のことを指している。私のお父さんだって“Old Man”よ! 良い男の人もいるけど、悪い面も持っていたりすることもあるの。それにしても、ウディ・アレンの映画が恋しいわね! でも、大丈夫。今はウェス・アンダーソンだったり、若くて優れた映画監督が出てきているから!

――映画もかなり観ているようですね。他にお気に入りを教えてもらえるでしょうか。

アルゼンチンの監督の『人生スイッチ(原題:Wild Tales)』がとても面白かったわ。



――そういえば、『Beware Of The Dogs』のアルバム・ジャケットは下のほうに黄色い文字でタイトルが書かれていて、映画の字幕のようにも見えますよね。

そうなの! オーストラリアにSBSというテレビ局があるのね。そのテレビ局では日本映画、中国映画、イタリア映画と様々な映画が流れていて、その字幕が黄色かったのよ! それでちいさい子が、外国の映画を観ているようなイメージになるかなと思ってつけたの。



――ちなみに、このジャケットの写真のシチュエーションは?

これは、若い女性が罵るような言葉を言っている様子なの。ちいさい子供が悪い言葉を言う時に、親や祖父母が「石鹸で口を洗ってしまうよ!」と脅して注意するのね。みんなこの白いものを卵と思ってるみたいだけど、実は石鹸なのよ! これを面白い感じにしたかったのね。だって、私はいつも口が悪いんだもの!

――今、話をしてくれたように、このアルバムではオーストラリアのアイデンティティやステレオタイプが大きなテーマとなっていますよね。リリース後少し経って、ここ日本や他の国にも訪れる機会もあったと思いますが、改めて自分の国のことについて新しく発見したり、何か感じたことはありますか。

そうね。色々な国を訪れて、それぞれ問題があると感じたわ。アメリカにはトランプがいたりね。そして女性や移民が差別されている状況も見た。それで自分の街に戻ってきて、現状が同じで、改めて、ああ…と思ってしまったわ。

――それで、音楽はこういった状況を良い方向へ変えていくと信じていますか?

イエス! そう思う! 今ちょっと名前が出てこないけれど、アフリカン・アメリカンのミュージシャンが世界を変えていこうと訴えたり、あとBob Marleyは実際にジャマイカの政治のシステムを変えたよね*。新聞を読んで、抗議に行く人たちが音楽を聞いて、その音楽が彼らにとって教育になることもあると思う。

*「Old Man」のビデオにもBob Marley & The WailersのPeter Toshのレコードが登場する。



――友人のレイプ被害の経験を歌った「Boys Will Be Boys」は当時#MeTooブームが盛り上がったころにリリースされ、そのムーヴメントを代表する曲になりました。当時と比べて2019年の状況は変わったと思いますか? デビュー・アルバムにもこの曲を収録しているということは、状況はまだまだ変わっていないということ?

実はこの曲は4年前に作ったもので。ああ、もう4年も経つのね! その頃と比べて状況は良くなってきたけれど、でもそれでもまだ良くないよね。この曲は最初、私の友人のひどい出来事について書いていたのだけれど、でもそれだけが理由じゃない。私には10歳下の、17歳になる美しくてジェントルな弟がいるのね。ある時“Boys Will Be Boys”と書かれたTシャツを見て、加害者の男性に対しても“男の子は男の子”と言うこの状況は、男性にとってもよくないんじゃないかと思ったの。私たちはこう言ったことを議論し続けるべき。議論が好きで楽しんでいて、「私は意見を言わなきゃ!」と思って書いたの。

――最後に、単独来日公演が決まりましたね! その時までに「Die」のダンスを覚えたいので、ハウトゥ動画をアップしてもらえますか?

それは素晴らしいアイデアね! ありがとう! 日本語字幕をつけるわ! 練習してきてね!



STELLA DONNELLY JAPAN TOUR 2019

12月11日(水)東京 渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 19:00 START 20:00
スタンディング 前売り:¥6,000(ドリンク代別)
お問い合わせ:SMASH(03-3444-6751)

12月12日(木)大阪 梅田SHANGRI-LA
OPEN 19:00 START 20:00
スタンディング 前売り:¥6,000(ドリンク代別)
お問い合わせ:SMASH WEST(06-6535-5569)