photo by Barrett Emke

「僕の頭上を、26、49、58人の死者が飛んでいる」

Kevin Morbyの新作『Oh My God』に収録された「OMG Rock n Roll」の歌詞に登場するこの数字は、それぞれテキサス、フロリダ、ラスベガスの銃乱射事件で亡くなった犠牲者たちの数を表している。軽快なロックンロール調のこの曲は、後半で突然賛美歌のようなコーラス・パートに切り替わるが、それは音楽に溢れた普段の生活が、一瞬で終わってしまう可能性を示唆しているのだという。

ツアーの移動中、飛行機に乗って過ごすことの多かったKevinが、ずっと晴れた雲の上の静けさと、嵐が渦巻いているかもしれないその下の世界に想いを馳せながら曲を書いたというこのアルバムは、常に宗教とは距離を置いてきた彼が作った、宗教的な作品だ。

MitskiやGrizzly Bearのミュージック・ビデオで知られるChristopher Goodが全曲を映像化し、Fleet FoxesのRobin PecknoldやHand HabitsことMeg Duffyも参加したこのアルバムについて、故郷のカンサスで暮らすKevinにメールで話を聞いてみた。



神はどこにでもいる。彼は人気者なんだ。


――『Oh My God』という新作のタイトルは、あなたが2016年に発表した「Beautiful Strangers」という曲の歌詞から取られているそうですが、昨年Nathaniel Rateliffにインタビューした際に、彼にとってこの曲が重要だから、カバーしようと思っていると話してくれました。この曲に対する反応と、それがどのように新作に繋がっていったのかを教えてください。

Nathanielがそう言ってくれて良かったよ。彼は素晴らしいからね。みんな個人的なレベルで、その曲と繋がってくれたみたいだった。僕は当時の世界が分け合っていた感傷について書こうと思って始めたんだけど、それでみんながあの曲に共感してくれたんじゃないかな。そこで僕は「Oh my god, oh my lord」というマントラを歌っていて、それは僕の他の曲にも登場するけど、その種は「Beautiful Strangers」で撒かれたんだ。“Oh My God”という表現は、あの動揺した時期に一番しっくり来るフレーズだった。それが何であれ、ニュースを読むたびに僕は「Oh My God!」と言っていたからね。



――Nathanielによれば、Richard SwiftとDelta SpiritのKelly Winrichはかつて同じ教会に通ってクリスチャン・ミュージックを演奏していたけど、そのことをあまり話したがらないとのことでした。あなた自身は、宗教とどのように向き合ってきましたか?

僕は成長する上でどんな宗教も実践してこなかったけど、アメリカ中西部で、そういったものに囲まれて育った。僕が住んでいた地域は“バイブル・ベルト”と呼ばれていて、組織化された宗教があちこちにあったんだ。福音主義派の教会や、罪人を脅すような看板があって、国の中でも信心深い場所だった。自分がそこに加わらなかったのに、そこに近い場所にいたという事実に、僕は魅了されたんだ。

――“宗教的”なアルバムで、好きな作品はありますか?

宗教的なアルバムで好きな作品があるとは思わないけど、考えてみたら、クラシックでもポピュラーな作品でも、なんらかの形で宗教やスピリチュアリティについて言及していない作品が思い浮かばないし、そういう意味では、僕の好きなすべてのアートやアーティストが、神をもじって使っているとも言える。僕が聴いて育ったBob DylanやLeonard Cohen、The Velvet Undergroundのすべての作品のいたるところに、宗教からの影響が感じられるからね。同じように、僕はNina SimoneやTownes Van Zandtもたくさん聴く。どこを向いても、音楽にスピリチュアリティが欠けることはないみたいだ。僕が若い時に聴いていた、The Mountain GoatsやNeutral Milk HotelやThe Microphonesといった現代のバンドの中にさえね。神はどこにでもいる。彼は人気者なんだ。

――プロデューサーのSam Cohenを筆頭に、新作には2016年の『Singing Saw』と同じミュージシャンが何人か参加していますが、Richard Swiftがプロデュースした前作『City Music』の後で、再びSam Cohenと組んでみていかがでしたか? あなたの中では、『City Music』はどういった位置づけなのでしょう?

Samとまた作業できたのは素晴らしかったし、僕らには確固としたやり方があって、お互いから驚くような仕事を引き出すことができるんだ。SamとRichardは全然違うけれど、両方と作業できて良かった。Richardが亡くなってしまって寂しいよ。『City Music』は、僕の一番“ロック”なアルバムだと言えるね。



――「OMG Rock n Roll」のミュージック・ビデオに登場する5枚のアルバムは、新作に影響を与えましたか?

与えたし、単純に僕の好きなアルバムのうちの5枚でもある。僕はあのアルバムをリビング・ルームに飾っていて、Christopher Goodがビデオに登場させたのもそれが理由なんだ。Nina SimoneとNick Caveのリリシズムや表現方法、Emahoy Tsegue Maryam Guebrouのピアノ演奏、Patti Smithの詩…それらはすべて、僕が自分の音楽に取り入れようとしたものだよ。

    

※左からNick Cave & The Bad Seedsの『The Boatman's Call』(1997)、Sadeの『Diamond Life』(1984)、Emahoy Tsegué-Maryam Guèbrouの『Ethiopiques vol. 21』(2006)、Nina Simoneの『Silk & Soul』(1967)、Patti Smith Groupの『Radio Ethiopia』(1976)


――Christopher Goodはアルバム全曲を映像化したそうですが、その作業はどのように進められたのでしょう?

僕らはレコードが完成した後で映画を撮影したんだ。僕が以前からアイデアを温めていた3本のビデオの撮影を決めた後で、これだけ一緒にやってるんだから、どうせならアルバム全体を表現する映画を撮らないかってことになった。だから映画は後づけなんだけど、作るのはとても楽しかったよ。アルバムがとても“深刻”なのに対して映画は“楽しい”から、お互いに釣り合っていると思う。制作には3ヶ月かかって、撮影はすべてここカンサスで行われたんだ。



――アルバムのほとんどの曲はギターではなくピアノで演奏されていますが、自分で弾いているのでしょうか? ピアノはどのように練習したのでしょう?

僕はピアノをたくさん弾いているけど、全部じゃないんだ。1曲のなかでギターとピアノがあったら、友達のJared Samuelがピアノを弾いている。ピアノだけの曲だったら、それは僕だ。僕は当時ジャズ・ピアニストのEmahoy Tsegue Maryam Guebrouをたくさん聴いていたから、彼女の演奏にはとても影響を受けたし、演奏を覚える助けになったよ。

――2017年の2月に、Robin Pecknoldが「MorbyのためにGarfunkelingしてる」という写真をインスタグラムに投稿していましたが、彼はこのアルバムのどこで歌っているのでしょう?

Robinは1曲目の「Oh My God」で聴こえるクワイアーのひとりだよ。男性の声が彼なんだ。Robinとは良い友達で、彼のお姉さんのAjaは僕たち両方のマネージャーでもあるから、光栄なことに僕もPecknold家の一部みたいな気がするね。

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Garfunkel-ing for Morby

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――「Seven Devils」で素晴らしいギター・ソロを弾いているのはHand HabitsのMeg Duffyだそうですが、「Congratulations」で弾いているのも彼女ですか? Hand Habitsのニュー・アルバムについても感想を聞かせてください。

Megが演奏しているのは「Seven Devils」だけなんだ。「Congratulations」で弾いているのはSamなんだけど、彼とMegは僕の好きなギタリストの二人だから、どちらにもレコードに参加してもらえて、僕はとても恵まれてるよ。Samは僕のツアー・バンドに参加してくれて、オープニングも務めてくれることになった。すごくラッキーだし、彼の新しい音楽は驚異的だよ。Megのニュー・アルバムに関しては、素晴らしいと思うよ!

――ところで、「Ballad of Faye」の“Faye”は誰のことですか?

Faye Dunawayだよ。


※『俺たちに明日はない』や『チャイナタウン』で知られる女優のフェイ・ダナウェイ


――あなたがテキサスでMegafaunのBrad CookやBig ThiefのJames Krivcheniaとレコーディングしている写真を見たのですが、その2人は新作に参加していませんでした。ということは、また別のアルバムがリリースされるのでしょうか?

それは秘密!



――ここからは、あなたのファンだというオンライン・レコード・ショップのCLASSICS RECORDSさんからの質問です。「 Woodsも大好きですが、あなたのファースト・ソロ・アルバム『Harlem River』から大ファンです。 Webのインタビューで、あなたがお父様の仕事の関係で引っ越しが多く、パニック障害で苦しんでいたと知り、私も同じ障害があるのでとても親近感がわきました。カンサスに戻られてしばらく経ちましたが、生活、体調、また精神的に落ち着きましたか? また、ワールド・ツアーなどあって、不規則な生活が続くときに気をつけていることはありますか?」

カンサスに戻ったことはある意味では助けになったけど、別の意味で新しい不安がもたらされることにもなった。真実を言えば、不安というのは何らかのかたちで常に存在するもので、重要なのはそれをどのように扱うか、そして自分をどのように労るかなんだ。特に年を取るにつれて、心と体をしっかりケアしないといけないし、自分自身に優しくすることは、不安と向き合うにあたって重要なことなんだ。僕は煙草を止めたし、酒も以前ほど飲まない。ドラッグもやらない。瞑想したり、規則正しい食事や体を動かすことに勤めて、常に何らかの水の中にいるようにしている。温かいお湯や、冷たい水…僕は水が好きで、気分が落ちつくんだ。もうひとつ僕が心掛けている大きなことは、画面を見つめる時間と、オンラインの時間を制限していることだ。インターネットやソーシャル・メディアには利点もあるけど、節度を持って使わないと毒になるからね。

――「ミュージック・ビデオでよくループ・タイをされていてかっこいいなあー、と思っています。何本ぐらい持っていますか? また好きなファッション・スタイルはありますか?」

たぶん15〜20本かな。しばらくしてないけど、また必ず着けると思うよ。僕はアメリカ南西部のスタイルやカウボーイの格好が好きで、スーツを着るのも好きだ。でも普段の着こなしはすごくカジュアルだよ。ホワイトTシャツとスラックスにRM Williamsのブーツとか、外が暑かったら、アディダスのサンダルを引っ掛けてるね。



――それでは最後の質問です。もしもあなたが今日死ぬとしたら、何がしたいですか?

食べたいものを、食べたいだけ食べるよ。


Kevin Morby - Oh My God
(Dead Oceans)


1. Oh My God
2. No Halo
3. Nothing Sacred / All Things Wild
4. OMG Rock n Roll
5. Seven Devils
6. Hail Mary
7. Piss River
8. Savannah
9. Storm (Beneath the Weather)
10. Congratulations
11. I Want to Be Clean
12. Sing a Glad Song
13. Ballad of Faye
14. O Behold