photo by Pooneh Ghana


昨年リリースされたセカンド・アルバム『Tell Me How You Really Feel』も好評なオーストラリアのシンガー・ソングライター、Courtney Barnett。そんな彼女のジャパン・ツアーが、いよいよ来月からスタートする。そこで今回はメルボルンの自宅で休日を過ごすCourtneyに電話し、アルバム・リリース後のあれこれについて、いろいろと話を聞いてみた。



笛吹きケトルが延々と鳴り続ける
まるでどんどん怒りが増していくみたいに


――こんにちは。今は自宅でしょうか? 飼い猫のバブルスくんは元気ですか?

ええ、元気よ。今はメルボルンに戻っているわ。
 
――彼の名前は、やっぱりマイケル・ジャクソンの飼っていたチンパンジーから来ているのでしょうか?

そんなことはないと思う。もらった時からバブルスって名前で、実は名前の由来を知らないままもらったの。



――昨年のアルバム『Tell Me How You Really Feel』に収録されていた「Need A Little Time」をKurt Vileが昨年のベストに挙げていましたが、同曲はオバマ前アメリカ大統領が発表したプレイリストにも入っていましたね。改めて、アルバムやツアーの反響はいかがでしたか?

すごく良かったんじゃないかしら。自分だとなかなかわからない部分もあって…。アルバムを出す時って、色々な感情が入り混じっていっぱいいっぱいな感じだけど、いざツアーに出ると、新しい曲に人がどう反応するかを見ることができるし、みんなそれぞれ違う形で曲を楽しんでくれているのがわかる。作品の本質が本当にわかるまでの道のりはいつも不思議な感じ。正直自分でもわからないままやってるの(笑)。でもツアーは間違いなく楽しかったわ。どのライヴも楽しかった。たぶん時間の経過とともに、曲がさらに進化していくからだと思う。アルバムを作るときは、できるだけ曲を新鮮なまま表現したいの。スタジオに入る前に、ツアーとかで何百回と演奏されていない状態で出したい。そうやって世に出してから、ツアーをしていく中で進化していく。演奏する度に、変化していくのがまた面白いの。



――セカンド・アルバムは作るのにかなり悩まれたという話も前にありましたが、実際に完成してから新曲をツアーしてみて、アルバムに対する気持ちに変化はありましたか?

そうね。いつもそう。さっきの本質を本当に理解するまでの過程で、ある程度時間と距離ができることで、アルバムの曲を8ヶ月前よりも自分の中で消化できていると言う実感がある。不思議なプロセスだと思う。

――昨年のツアーには、Kurt Vileとのツアーに続いてSky LarkinのKatie Harkinが参加していたようですが、彼女は日本にも来ますか? 

今回は来ないわ。残念ながら。

――彼女が参加してから、演奏面やそれ以外の面で、どんな変化がありましたか?

変化はたくさんあったわ。音楽的な部分だと、アンサンブルに一人加わることで音の層がひとつ増えるわけで、それひとつ取っても大きいわ。この2年の間、3ピースと4ピースを行ったり来たりしていて…。最初に自分のバンドを組んだ時は確か6ピース・バンドだったんじゃないかしら。常に少しずつ変わってるの。色々やってみるのも楽しいわ。

――誰がツアーに参加するしないは、例えば“今回は4ピースで回りたい”といったあなた自身の意思で決まるのか、単なるスケジュール上の理由だったりもするのでしょうか。

実際はその両方ね。他の活動と重なって参加できないということもあるわ。あとは、単純に音楽的に違うことをやってみたいと思うこともある。

――Katie HarkinはSleater-Kinneyが再結成した時にもサポートを務めていましたが、あなたは昨年、Sleater-KinneyのJanet Weissが聴かせてくれたという60年代の女性シンガー・ソングライター、Elyse Weinbergの「Houses」という曲をカバーしていましたよね。

そうそう。ツアー中に彼女の家に遊びに行った時に、初めて聴いたの。彼女が教えてくれて。本当に素晴らしいレコードよね。



――Sleater-Kinneyの新作のアナウンスには興奮していると思いますが…。

もちろん。

――実はあなたも何か情報を握っていたりするのでしょうか?
 
まだ首を突っ込んでないわ。みんなと同じ情報しか持ってない。でも、すごくワクワクしている。ネットに公開されていた写真を見る限りSt. Vincentがプロデュースするみたいね。どんなアルバムになるのか聴くのが今から楽しみよ。




――好きなSleater-Kinneyの曲や、カバーしてみたい曲があれば教えてください。

そうね…。お気に入りのひとつは…名前なんだったけ…そうそう、「Modern Girl」よ。大好きな曲。



――カバーしたことはありますか?

ないわ。彼女たちの曲を何曲か自分でやってみようと思ったんだけど、すごく難しくって。二本のギターを使った、彼女たちのあの曲の構築の仕方が…私がこれまで聴いたどの曲とも違っていて…。なんていうか、まるで彼女たちでルールを書き換えたみたいで…。でもいつかカバーできたらいいなと思っている。

――昨年のツアーではJanet Weissとも交流の深いオーストラリアのバンド、The Go-Betweensの「Streets of Your Town」をカバーしていましたが、あなたの「Depreston」という曲のギター・リフは、この曲にインスパイアされているというのは本当でしょうか? 

そうそう。そうだったわ! あの曲を自分で弾こうと思って練習していたのと同じ頃に「Depreston」のギター・リフを書いたの。全く同じではないけど、聴けば通じるものがあるってわかるはずよ。カバーをしたのはちょうど1年くらい前になるわ。Laura Jeanとツアーをしていて。彼女もオーストラリア人のソングライターだから、オーストラリアで敬愛されているバンドといえばThe Go-Betweensでしょ、と言うのでやったの。すごく楽しかったわ。



――The Go-Betweensのメンバーとは面識がありますか?

ドラマーのLindy Morrisonとは会ったことがあるわ。凄くいい人だった。ドラマーとしても素晴らしい。あとRobert Forsterとも一瞬だけど会ったことがあると思う。Grant McLennanとは彼の生前に会うことができなかったけど、共通の友人が何人かいて、彼にまつわる思い出話を聞かせてもらうことがあるわ。

――昨年あなたとThe Breedersはお互いのアルバムに参加していましたが、その後フェスティバルでも、何度か同じステージに立つ機会があったそうですね。お互いのアルバムの感想など、何か話したりしましたか?

そうね。数年前にKim Dealと何かの雑誌の取材で対談をしたことがあって、それがきっかけでEメールでペンパルになって、お互いのアルバムに参加することになって。で、いくつかのフェスティバルでも一緒になったから、あなたの言う通りステージに上がって彼女たちの曲をやる機会があったわ。でもアルバムの話はしなかった。普通に楽屋裏で挨拶を交わしながら、近況を報告し合った感じ。でも、ああいう機会が上手くいく時は本当に楽しい。最近も彼女たちがメルボルンにライヴで来てたんだけど、その時もステージに飛び入りさせてもらって、別の曲を一緒にやったの。えっと、なんて曲だったかしら…。曲名をド忘れしたわ…。えっと…ちょっと待ってね。直ぐにわかるから…。そう、これこれ。「Off You」。この曲のギター・ソロをやらせてもらったの。

――あなたの昨年のアルバムの1曲目、「Hopefulessness」にヤカンが沸く音が入っているのは、デヴィッド・リンチ監督の映画『イレイザーヘッド』の挿入歌「In Heaven (Lady In The Radiator Song)」へのオマージュだそうですが…。

そうそう。つい最近あの映画を初めて観たんだけど、サントラのあのノイズ音が、不穏な空気を醸し出して、映画を通して見ている者の不安を煽っていて…。映画でああいう音楽の使われ方って、それまで聞いたことがなかったからすごく興味深いと思った。それはあくまで発想のきっかけで、ちょうど家に笛吹きケトルがあって、お湯が沸くと音がなるんだけど、家の別の場所にいたりして、直ぐに台所まで行けない時とかに、延々と鳴り続けてて、まるでどんどん怒りが増していくみたいに聞こえるの。なぜかやたらと攻撃的に聞こえるのよね。すごくストレスの溜まる音。だから、あの曲の最後に緊張感を高める意図で入れてみようと思ったの。



――あの曲をPixiesもカバーしているのは偶然でしょうか?

えっ、そうなの? すごくクールじゃない。知らなかったわ。

――昨年Boygeniusというグループ名義でミニ・アルバムをリリースしたJulien BakerとPhoebe Bridgersが今月立て続けに来日するのですが、「boygeniusにもうひとりメンバーを加えるなら?」と訊かれた彼女たちが、Courtney Barnettと答えていました。

そうなの?

――boygeniusのジャケット写真はCrosby, Stills & Nashのファースト・アルバムを模したものでしたが、もうひとりのメンバー、つまりNeil Young役としてboygeniusに誘われたら、参加する意志はありますか?

(笑)もしそうなったら絶対に楽しいでしょうね。面白そうだからぜひ参加させてもらうわ。

――あなたはMilk! Recordsのオーナーとしての顔もありますが、新しく契約したアーティスト、Tiny Ruinsと、Hand Habitsの魅力について語ってください。

Tiny Ruinsは新作が本当に素晴らしいと思う。これまでも他のレーベルからアルバムを何枚か出しているけど、すごく面白いバンドだと思うし、Hollie Fullbrookは卓越したソングライターだと思う。Hand Habitsも最高よ。新作のリリースに関わることができてとにかく光栄に思っているわ。



――Milk!Recordsはグッズも魅力的ですが、来日公演にも何か持ってきてくれますか?
 
もちろん。Milk! Recordsの Tシャツは絶対に持っていく予定だから、会場で買えるはずよ。

――イチオシのグッズがあれば教えてください。

ネットで注文するなら靴下がオススメかしら。おしゃれな靴下がいくつかあるから、ぜひチェックしてみて。



COURTNEY BARNETT
Japan Tour 2019


2019年3月8日(金)東京  渋谷TSUTAYA O-EAST
OPEN 18:00 START 19:00

スタンディング 前売り:¥6,500(ドリンク代別)
お問い合わせ:SMASH(03-3444-6751)

2019年3月10日(日)愛知 名古屋Electric Lady Land
OPEN 18:00 START 19:00

スタンディング 前売り:¥6,500(ドリンク代別)
お問い合わせ:JAIL HOUSE(052-936-6041)

2019年3月11日(月)大阪 梅田CLUB QUATRRO
OPEN 18:00 START 19:00

スタンディング 前売り:¥6,500(ドリンク代別)
お問い合わせ:SMASH WEST(06-6535-5569)