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[REVIEW] Dirty Projectors - Lamp Lit Prose


そこのみにて光輝く

大きく息を吸い込んだ後で、あの特徴的なギターに乗せてDave Longstrethが歌うと、トランペットが鳴り響き、The InternetのSydによるコーラスが飛び込んでくる──冒頭の「Right Now」を聴いただけでも、かつてのDirty Projectorsが帰ってきたことがわかるはずだ。

 胸の中には沈黙があったけど/今僕はバンドを演奏し始める
 彼らが焚き火を燃やしたから/ランプを灯すことができるんだ

レーベルの資料によれば“デヴィッド・リンチ監督の『ブルーベルベット』に対する『ストレイト・ストーリー』であり、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』に対する『パンチドランク・ラヴ』”だというDirty Projectorsの新作『Lamp Lit Prose』は、ジャケットを飾る太極図を模したガラス細工のバンド・エンブレムが示すように、前作『Dirty Projectors』と陰と陽の関係になっている。
自身の失恋とバンドの崩壊を綴った、あまりにも悲痛な前作のリリース後に突如として創作意欲が沸き上がり、ツアーを行わず曲作りに没頭していたというDave。従って、本作には現在のツアー・バンドのメンバーであるFelicia Douglass、Maia Friedman、Kristin Slippの女性3人は参加しておらず、Tyondai BraxtonとMauro Refoscoに加え、ホーン隊とリズム・セクションは意外にも前作とほとんど同じ布陣で録音されている。その代わりにアルバムに華を添えているのが、曲ごとに招かれたゲスト・ヴォーカル陣だ。
 
Daveが『Bitte Orca』の「Temecula Sunrise」のようなギターを弾き、HAIMの三姉妹がコーラスで参加したプロテスト・ソングの「That’s A Lifestyle」や、Empress OfことLorely Rodriguezを招き、『Rise Above』を思わせる強烈なパワー・ドラムを聴かせる「Zombie Conqueror」など、過去のDirty Projectorsのレパートリーを今のスタイルで再演したかのような、ファンにはたまらない楽曲が並ぶ前半。逆に言えば、R&BシンガーのAmber Markを迎え、ファンキーなブラスとラテン・パーカッション、そしてBjorkが日本で録音したというヒグラシの鳴き声が降り注ぐMichael Jackson風の「I Feel Energy」を除けば焼き直しの感も否めないのだが、アルバムの後半で、Dave Longstrethのソングライティングは更なる飛躍を見せている。

ダビーな音響の中でローズ・ピアノとウーリッツァーが飛び回る「Blue Bird」、PrinceとNirvanaの名前を織り交ぜながら疾走するロック・ナンバーの「Found It In U」、“アローン”と“コール・デュ・ローヌ”で韻を踏むソウル・バラードの「What Is The Time」といったラヴソングが続くあたりは間違いなく本作のハイライトだが、Fleet FoxesのRobin Pecknoldと元Vampire WeekendのRostam Batmanglij、そしてDaveという(本人曰く)インディー・ロック界の3大テノールがハーモニーを聴かせる「You’re The One」は、この10年間を彼らの音楽と共に歩んできた人なら、涙なくしては聴けないはずだ。

そんなアルバムの最後を飾るのが、Daveの好きなGil EvansやNelson Riddleを意識したというオーケストラ・アレンジによる「Feel It All」。ここでデュエットを聴かせるKaty DavidsonのバンドDear Noraでは、かつてDaveの兄がギターを弾いていたことがあり、Daveは10代の頃に4トラックのテープを録音しては、Katyと交換する間柄だったという。高く昇っていく時の興奮から落ちていく時の後悔まで、甘美な青春から年老いることの痛みまで、文字通りすべてを感じたいと歌うDave。遠回りこそしたものの、そう思えるようになったのは、やはり前作での苦しみがあったからなのだろう。

 誰かが言った/暗闇が広がる場所に光は輝くと
 だから僕は泣いたり/打ちひしがれて倒れていたくはない
 (「Right Now」)

『Bitte Orca』と同じJason Frank Rothenbergが撮影したジャケット写真が象徴するように、この2枚のアルバムは確かに似ている。けれどもあの時よりも暗く、重苦しい空気が漂う今だからこそ、彼らの灯したランプは輝きを増すはずだ。
Posted by Monchicon
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