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[INTERVIEW] Ryley Walker

photo by Evan Jenkins

本人曰く、“かつては森の中でクールに佇むアーティスト写真を撮っていた”シカゴのギタリスト、Ryley Walker。しかしアヴァンギャルド・ミュージックとスナック菓子をこよなく愛し、ツアーに出る度に体重を増やして帰ってくるという彼は、フォーキーなシンガー・ソングライターという世間のイメージとのギャップに人知れず悩んでいた。

24歳でデビューし、Tim HardinやBert Janschと比較された2014年のファースト・アルバム『All Kinds of You』以降、毎年コンスタントに作品をリリースしてきたRyleyは、昨年のBill MacKayとのギター・デュオ作『SpiderBeetleBee』を挟み、オリジナルとしては2年ぶりとなる4thアルバム『Deafman Glance』で、ようやく借り物でない、自分の声を見つけることができたのだという。

前作に引き続き元WilcoのLeroy Bachを共同プロデューサーに迎え、地元シカゴのポスト・ロックはもちろん、GenesisやGentle Giantにも通じるプログレッシヴな展開を見せる新作について、そしてtwitter禁止令の真相について、本人が気さくに語ってくれた。


レコード制作は勝手にどんどん進んでしまうこともある
ワイルドなミツバチを追いかけないといけない感じ


——昨年の5月に来日した時に、金延幸子の『み空』のレコードを渡したのですが覚えていますか?

覚えてるよ。すごく良かった。ありがとう!

——その後神経衰弱になっていたと聞いたので、あの時の取材が原因でないことを祈っていますが……体調はいかがですか? 

神経衰弱はジョークさ(笑)。だから気にしないで(笑)。もちろんインタビューが原因なんかじゃない。体調はすこぶる良いよ。

——新作の『Deafman Glance』のレコーディングは昨年の1月に始まったそうですね。来日公演で既に新曲の「Can't Ask Why」を披露していましたし、インタビューした際に新作の展望も語っていたので、思ったよりもリリースまで間隔が空いたという印象だったのですが、当時の構想から二転三転した部分があったのでしょうか?

スタートしてはストップしてって感じで、ディレイがたくさんあったんだ。最初レコーディングしていたバンドとあまり馬が合わなくて、またレコーディングを一からやり直したりね。プロセスは長くかかったけど、仕上がった作品には心から満足してる。

——もう少し早く出来る予定でした?

レコード制作は山あり谷ありだからね。一度制作が始まると、勝手にどんどん進んでしまうこともある。ワイルドなミツバチを追いかけないといけない感じ。あっちに行ったり、こっちに行ったり、イメージがどんどん変わっていく。でも、日本で初めて新曲をプレイできて良かったよ。やっと作品として披露することができたから、良い形で曲をデビューさせることが出来たと思う。日本に行くのはずっと夢だったから、最高だった。すごく美しかったし、素晴らしい経験だったね。

——特にリズム隊は、来日時にベースを弾いていたIngebrigt Haker FlatenとドラムのFrank Rosalyと録音すると話していましたが、結局この2人は参加せず、新たにドラマーのMikel Averyと、元Isotope 217のベーシストMatt Luxが参加しています。この辺はどういった経緯だったのでしょう?

彼ら(IngebrigtとFrank)のことは大好きなんだけど、二人ともヨーロッパに住んでいるから、スケジュールを合わせるのが大変だった。だから、シカゴでレコーディング出来る友達二人に頼むことにしたんだ。でも彼らは今でも俺のバンドのメンバーだから、ヨーロッパでプレイするときはもちろん彼らとプレイするよ。

——Mikel AveryとMatt Luxを起用することになった経緯は?

MikelはFrankのバンド、Natural Information Societyのメンバーなんだ。本当に才能があって、彼とはもう何年も友達。彼のドラムはすごく革新的で、枠を超えたプレイをする。本当に素晴らしいし、未来的だから、彼に頼みたかったんだ。Matt Luxも友達。Isotope 217は俺のお気に入りのバンドの一つだし、彼のベースはスペシャルだと思うから、彼に頼むことにした。あの二人が参加してくれたのは、俺にとって大きなことだったんだ。彼らからは、一緒に演奏していてすごく刺激を受けたよ。

——刺激になったもの、彼らがアルバムにもたらしてくれたものとは?

コンテンポラリーなフィーリング。前の作品では、トラディショナルなフォーク、アメリカン・ミュージック、イングリッシュ・フォークっぽさが強かったと思う。でも今回のレコードでは、もっとフリージャズやエクスペリメンタル・ミュージックに影響を受けているんだ。彼らは、確実にそれをもたらすのを助けてくれたね。




——新作の影響源として、そのIsotope 217のファースト・アルバムを含む9枚のアルバムを挙げていましたが、その多くはJim O'Rourkeがフェイヴァリットに挙げている作品か、彼が何らかの形で参加している作品でした。あなたはJim O'Rourkeの大ファンなので納得ですが、そんな中で異色にも思えるニューヨークのラッパーJeru The Damajaの『The Sun Rises in The East』からは、どのあたりに影響を受けたのでしょう?

ヒップホップ・アーティストだけど、彼の作品にはストーリーがある。内容がパーソナルだし、彼の観察力は本当に知的なんだ。美しくて、壮大な詩みたいに感じられる。かつオリジナリティがあるし、そこから影響を受けているよ。

——Genesisの『A Trick of the Tail』も挙げていましたが、初期のピーター・ガブリエル時代ではなくて、彼が脱退した後のこのアルバムを挙げていたのはなぜでしょう?

そのアルバムが好きなのと、あと俺はフィル・コリンズが好きだから。ピーター・ガブリエルと彼の作品も尊敬しているけど、Genesisの初期のレコードは、時々ちょっとイギリスの民族音楽っぽいというか…でも、ユーモアのセンスは兼ね備えていると思うけどね。俺にとっては、『A Trick of the Tail』が一番ユーモアがあると思うし、ロックンロールだし、クールなんだ。

——初めてこのレコードを聴いたのは?

10代の頃、レコ屋の1ドル・コーナーで見つけたのがGenesisの作品で、それからずっと聴いてる。

——『A Trick of the Tail』からはどう影響を受けたのですか?

俺は、これまでは同じキーに頼っていて、かなりシンプルなシンガー・ソングライターだったと思う。でも、今回のレコードではどうしても自分の心地よい範囲から抜け出した作品を作りたかったんだ。シンセを使ったロック、ポップ・ミュージックだけど、Depeche Modeみたいなシンセじゃなくて、Genesisみたいなシンセというか、ドイツのバンド、Clusterみたいなシンセを使いたかった。その点で影響を受けているんだ。

——新作の「Opposite Middle」にはあなたも影響に挙げていたSam Prekopが在籍するSea and Cakeっぽい雰囲気もありますが、先週リリースされた彼らの新作を聴いていたら、感想を聞かせてください。

Sea and Cakeは大好きだし、大きな影響を受けている。シカゴの最高のバンドの一つだし、素晴らしいソングライターだとも思う。でも新作はまだ聴いていないんだ。

——自分でも、「Opposite Middle」がSea and Cakeっぽいと思うところはありますか?

あるよ。「Opposite Middle」はこれまでの曲の中でシンプルでポップだけど、今まで作ってきた曲と一番違う曲でもある。それがすごく新鮮で自分でも楽しめるんだけど、曲が持つ脈みたいなものがSea and Cakeっぽいと思うね。



——この曲ではツイン・ドラムに挑戦していますし、ギターも変則チューニングにしているそうですが、この他にアルバムで試してみたことがあれば教えてください。

スタジオで全てを書いたことかな。今回はポスト・プロダクションが重視されていて、ライブ・サウンドなレコードではないんだ。ステジオでのプロセスは、パズルを組み立てるみたいな感覚だったね。何か新しいことをやってみたくってさ。レコードを作ってるというか、映画を編集してるみたいな感じだった。小さなピースをくっつけていく感じ。これまでで一番良いレコードが出来たと思う。

——あなたはシンガー・ソングライター然とした初期の2作があまり好きではないと話していましたが、1曲目の「In Castle Dome」にはあなたがライヴでカバーしていたVan Morrisonの「Fair Play」っぽいムードもありますし、アコースティック・ギターのインスト曲「Rocks On Rainbow」は、ファースト・アルバムに収録されていてもおかしくないと思いました。この辺りのバランスは、どう考えていたのでしょう?

「In Castle Dome」は最後に書いた曲で、スローだし、アルバムのスタートにちょうど良いと思った。さっきも言ったように、今回のレコードはこれまでの音楽へのリアクションというか、これまでとは違う新しいものを作りたかった。これまで作ってきた古い音楽に終止符を打って、新しい何かをスタートさせたかったんだ。それから離れて全く違うものを作りたい、とまではいかないけど、とにかく何かをスタートさせたかった。だから「In Castle Dome」はアップビートじゃなくてすっごくスローなんだよ。今回のレコードは違うぞっていうのを見せたかった。だからあのスローな曲を書いたんだ。

——「Rocks on Rainbow」は?

それもスタジオでの最後の日に書いた曲。最初はアルバムの最後の2曲をつなぐ曲として書いた。レコードの流れを良くするためにね。朝の3時でめちゃくちゃ疲れてたし、家に帰りたかった状態で書いたからちょっと締まりがないけど、ファースト・テイクで満足できたし、自分のパーソナリティが捉えられているから好きなんだ。

——初期の2作は今でも好きじゃない?

あんまり。あまり聴いてもいないしね。でも、今でもそれらの作品を聴いてエンジョイしてくれる人たちがいることにはすごく感謝しているし、幸運だと思ってる。今回のレコードではついにユニークな声を見つけることが出来たと思っているし、面白い世界観を表現出来たと思う。このレコードが自分自身のパーソナリティを持っていることが本当に嬉しいんだ。

——新作では全編に渡ってNate Lepineの吹くフルートが活躍していますが、フルートの入ったロック・アルバムで特に好きなものはありますか?

たくさんあるから選ぶのが大変だな。Nick Drakeの『Bryter Layter』。あのアルバムはいい。あと、クラシックなのはJethro Tullの『Thick As A Brick』。あれは定番だよね。Steve Reichの『Music for 18 Musicians』のフルートも美しい。その3つ。





※『Music for 18 Musicians』は正確にはフルートではなくクラリネットでした


——本作同様Bitchin BajasのCooper Crainが録音とミックスを担当したCircuit des Yeuxの昨年のアルバムで、フリーキーなエレクトリック・ギターを弾いていたのが印象的でした。Circuit des YeuxやSix Organs of Admittanceのアルバムに客演した経験はいかがでしたか?

Circuit des Yeuxは仲のいい友達で、自分の音楽と全然違うから、良い影響を受けたよ。Six Organs of Admittanceもそうだけど、コラボが出来るというのは本当にラッキーなことだと思ってる。すごくエンジョイしたし、自分の頭の中から出て作業するというのは新鮮で気分転換にもなる。また機会があったら、これからもぜひ他のアーティストとコラボしたいね。

——アルバム・タイトルはRobert Wilsonの舞台劇に由来しているそうですが、どうしてこのタイトルにしたのでしょう? ジャケットに使われているTim Hallinanの絵についても教えてください。

そのタイトルが自分に響いたんだ。その舞台劇自体が色々なテーマを扱ってるんだけど、自分に一番響いたのは内容よりもタイトル。世界から自分を孤立させるというか。色々溢れていて凝縮された環境から自分を離す、というのがグッときたんだよね。アートワークに関しては、もっとミニマルなものを求めていた。それはアルバムのサウンドのテーマでもあったから、より自分の写真を減らして、よりイメージを減らすことにしたんだ。ごちゃごちゃを取り除いて、全てをミニマルにしたくて。それで、ずっとファンだったTimに彼の作品を使っていいか頼むことにした。あの作品は冬のシカゴの雰囲気がうまく表現されているし、感じるものがあったから。


※乳母が聾唖の少年をナイフで刺すまでを描いた舞台劇『Deafman Glance』のTV版


——神経衰弱になった時に、医者からtwitterを止めるように薦められたと話していましたが、結局また再開していますよね。個人的にもあなたの面白いツイートを読むのが好きなのですが、「Spoil With The Rest」に出てくる“Whenever I do my best, I will spoil with the rest”という歌詞は、“音楽でベストを尽くすたびに、ツイートで台無しにしてしまう”とも受け取れます。今後もtwitterはしばらく続けるのでしょうか?

twitterはほぼジョークだと思ってくれたらいい(笑)。twitterって面白くあるべきものだと思うし、たまには本当のことも書くけど、ほとんどが人を楽しませるための冗談。特に俺の場合はそう(笑)。だから、医者からtwitterを止められてはいないよ(笑)。俺はtwitterでは真剣にならない。人を笑わせたい方が強いんだ。



——最近のツイートで一番反響があった、もしくは手応えがあったものを教えてください。

twitterって使い捨てみたいなもので、どんどん消えて更新されていくからわからない。自分の食生活に関するtweetがウケてるみたいだから、それは続けようと思ってるけど。twitterは、あくまでも笑いのためだからね。

——このアルバムからは前作以上にあなたの住むシカゴへの愛が感じられるのですが、シカゴの良い所、悪い所を教えてください。

良いところは、濃い音楽の歴史と、生活費が高くないところ。だから多くの才能溢れるミュージシャンたちがいるし、音楽を演奏する機会がある。どの場所にも区切りがあるけど、シカゴでは、インディー・ロックのミュージシャンたちとメタルのミュージシャンたちが一緒に遊びに行ったりするんだ。沢山の種類のミュージシャンたちがいるけど、そこに境界線がない。お互いを讃えあっていて、それはすごく良いところだと思う。悪いところは、すっごく寒いところ(笑)。マジで、クソ寒い(笑)。でもそのぶん、みんな夏をめちゃくちゃ楽しむんだ。みんなが出掛けていて、お互いに声を掛け合っている。それは楽しいよ。

——ありがとうございました!

ありがとう!また日本に行けるといいな。
Posted by Monchicon
INTERVIEW / 18:30 / comments(0) / trackbacks(0)
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