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[REVIEW] Yo La Tengo - There's A Riot Going On

Ashes of American Flags

マーティン・ルーサー・キングが暗殺され、公民権法が制定されてまだ間もない1971年に発表されたSly & The Family Stoneの『暴動』は当時のスライ自身の精神状態とアメリカ全体の社会状況を見事に反映してしまった、非常に重苦しい、陰鬱した雰囲気に覆われた稀代の作品だ。

LAなどの都市部を含め全米各地でまだ多くの混乱や人種間対立が残っていた頃の、図らずも時代と合わせ鏡になったそのアルバムの中盤に置かれた演奏時間0:00(=無音)の表題曲「There's A Riot Goin' On」には、スライ自身の「暴動よ静まれ」という願いが込められていたという(因みに"There's A Riot Goin' On"を正確に訳すとすると、「今まさに暴動がそこで起こっている」といった具合だろうか)。
Yo La Tengoのオリジナル作品としては5年ぶりとなる本作は彼らのディスコグラフィの中でも最も“静かな”1枚だ。2000年作の『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』が最も近い雰囲気を持っているだろうか、そこには彼らの得意としてきたフィードバック・ノイズや半ば投げやりにも感じられる長尺のジャム・セッションはなく、セルフ・プロデュースで生み出された丸く奥行きのあるサウンドで全編が覆われている。



アルバムは、いかにも彼ららしい柔らかなインストのオープニング・ナンバー「You Are Here」で幕をあけ、続く「Shades Of Blue」や「For You Too」こそ小気味良いリズムを刻むヨラ王道の“歌モノ”ナンバーであるが、中盤に差し掛かるにつれ、作品はだんだんと別の様相を呈していく。ジョージアの優しいヴォーカルが印象的なミドルナンバー「Ashes」と「Polynesia #1」を挟み、「Dream Dream Away」ではアコースティック・ギターのストロークが重ねられた後にタイトルさながらのアンビエントの世界に突入。そしてアルバムのちょうど真ん中に置かれたドローン・ナンバー「Shortwave」は正に、スライがかつて沈静への願いを込めた『暴動』の表題曲を思わせる静けさに包まれている。また、複数のパーカッションが重ねられたエクスペリメンタル・ジャズのような「Above The Sound」からはじまる後半も、その暖かく微睡むようなサウンドは徹底され、結局平熱を保ったままアルバムは終わってしまう(白昼夢の中で歌われるドゥー・ワップ調の『Forever』や60Sのポップスへのオマージュのようなスロウ・ナンバー『Let's Do It Wrong』など、後半も粒揃いだ)。それはまるで、終始「不穏さ」を滲ませている詞とバランスを保とうとしているようにも感じられる。

shaken by the feeling
感情に揺さぶられる
shaken, misdirected, waylaid
揺さぶられ、誤った方向に導かれ、待ち伏せされる
did I take it for granted
それを当然だと考えていたのか
「Forever」


we are out of words
僕らは言葉を失った
we’re out of time
僕らは時間を失った
believe the worst
最悪のことが起きるはずだ
while we, we gasp the air
僕らが息を切らしながら
grasp at straws
藁をも掴もうとする時には
no longer there
もうそこには無い
「Here You Are」


決定的な事象を思わせるラスト曲「Here You Are」の言葉は特に辛辣だが、しかし何より引っかかるのは、これまでジャンルやその知名度を問わず数々のクラシックをカバーしてきた彼らが、自らの作品に既存の、しかも歴史的に重要な位置づけを与えられたアルバムと同じタイトルを冠したという事(特にアイラのスライ好きは有名で、中でも『暴動』は大のお気に入りだそうだ)。一見柔らかな印象を与える今作のオブスキュアなカバー・アートが、スライの『暴動』のジャケにあしらわれているアメリカ国旗がすべて朽ち果ててしまった後の姿に見えるのはあまりにも飛躍しすぎだろうか。

for us one thing to do
僕らにはやるべきことがある
see if this’ll work for you
上手く行くか試してみよう
cry and hue, let’s push our way
声を上げながら、人をかき分けて這い上がるんだ
above the sound
サウンドに乗って
over sideways down, above the sound
over sideways down, above the sound
上に横に下に、サウンドに乗って
「Above The Sound」


この作品には、これまでに感じられなかった彼らの困惑や憤りと共に、何か大きなものと対峙する時の気概や闘志のようなものが明らかに宿っている。このままで良いはずがない。彼らもまた、音楽を通して自分たちのやり方で抗っているのだ。
Posted by 山岡弘明
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