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[REVIEW] Khruangbin - Con Todo El Mundo
評価:
Dead Oceans

(2018-02-02)

エキゾチック・オブスキュア・ライド

「こっちに来てからというものどうにも毎晩寝つきが悪い。やはり亜熱帯地方特有の湿気と気温のせいだろうか、ジトっとした汗が身体全体を覆っている。時刻は既に午前4時、一向に寝られないので、そこいらを散歩する事にした。バンコクやホーチミンに比べ、ここヴィエンチャン、特にその郊外に至ってはまだ都市としてのインフラが行き届いておらず、立ち並ぶ石造りのブティックや売店、飲食店の趣もどこか前時代的だ。薄紫色に染まりつつある寂れた市街地を彷徨い歩いていると、どこからともなくバンドの演奏が聞こえる。フラフラとした足取りで赴き、音のするいかにも場末のバーの木製の扉を開いてみると、得体の知れない3人組がその音楽を演奏していた。深夜から明け方にかけての、いつでもない時間に溶け込むようなその音楽――」
Bonoboが監修した2013年リリースの夜聴きコンピレーション『Late Night Tales』に楽曲が収録された事で欧米で人気に火が付き、ここ日本でも1stアルバムが話題になったアメリカはテキサスの3人組、Khruangbin(クルアンビン)の新作は正に越境するグルーヴ・ミュージックだ。1960〜70年代の東南アジアのポップミュージックに影響を受けたという前作のソウル/ファンク路線はそのままに、その音楽が放つ記名性は更に曖昧になってしまっている。メロウでありサイケデリックでありガレージ、という矛盾を孕むそれは、未来から掘り起こされたレアグルーヴのようですらある。



ファンクのレコードを半分の回転数でかけたかのようなリズム隊の演奏が聴けるアルバム冒頭の「Cómo Me Quieres」や終盤にインドネシアのチャントのような唱和が入る「Lady and Man」、エスニックなギターのフレーズが印象的な「Maria También」や女性ベーシストのLaura Leeが全体のグルーヴを引っ張る「August 10」は共にミディアム・テンポのエキゾチシズム漂うソウル・ナンバーだ。今作中最もタイトな演奏が聴けるディスコ・ファンク調の「Evan Finds The Third Room」、メンバーらが新たにインスピレーションを受けたという中東音楽の影響が窺える「Rules」を挟み、テンポチェンジを繰り返す極上のコーラス・メロウ・ナンバー「Friday Morning」でこの旅は終着する。インドネシアを出発して小1時間、バンコクを遥か北上し、アルプス山脈を跨ぎチベット高原を抜けた我々は中東の小さな国にいる事に気付く。そして楽曲のどれもがオブスキュアで微睡むマジックアワーのような質感を持っている。



しかし同時に面白いのは、ステージの大小に関わらず、ギター・ベース・ドラムのミニマムな編成を厳守する彼らのライブパフォーマンスが限りなくフィジカルであるという点。昨年は100を超える公演をこなしたという経験値から生まれるそのグルーヴは、音源とはまた少し異なった印象を聴き手に与える。特筆すべきは、タイトで寡黙なドラミングに、滑らかでしなやかなベースプレイによるリズム隊をバックに、緩急剛柔なプレイをこなすギターのMark Speerから溢れ出るその“ロック感”。ギリシャの伝承曲である 「Misirlou」で知られるディック・デイルからジミヘンまでをも彷彿とさせる彼のプレイには、あらゆるジャンルを消化してきたであろう以前のロックの下地が明らかに見え隠れしている。



彼らの公式HPでは現在、メンバーが選曲したプレイリストを元に、架空の音楽旅行が出来る素敵な企画〈Air Khruang〉が実施されている。リスナー自身が架空のフライトをカスタマイズする事で、プレイリストの内容が変わるというものだ。是非一度、Khruangbinと一緒に素敵な空の旅を味わってみては如何だろうか?
Posted by 山岡弘明
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