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[REVIEW] Alvvays - Antisocialites
評価:
Polyvinyl
(2017-09-06)

トロント、三丁目の夕日

建国100周年を記念して行われた67年のカナダ・モントリオール万博の映像アーカイヴを素材にして制作された、アルバムのリード曲「Dreams Tonite」のレトロフューチャーなMVは、彼らが考えるように(現在の視線からでも)クールでありながら同時にノスタルジックな空気が漂っている。


カナダはトロントで結成されたインディー・バンド、Alvvaysの放つイメージはこれまでも一貫してノスタルジックだった。8mmフィルムのような質感を持った前作からのMVや、昔の雑誌/定期刊行誌のコラージュを用いて制作されたという新作『Antisocialites』のジャケットは、ともすると2010年代のモノではないような印象を受けるかもしれない。

トーンが絞られて丸みを帯びたシンセの音や、ジャングリーなギターに因るスコティッシュなバンド・サウンド、それらを覆う深いリヴァーヴ、そして小節に多くの言葉(≒母音)を詰め込まない伸びるような歌は白昼夢のようで捉え所がないが、とてつもなく温かく優しく、何故か胸をざわつかせる。まるで、(自分が)経験してもない甘酸っぱい恋を勝手に記憶の中に作り出してしまうような心地だ。The Jesus and Mary ChainのJim Reidに捧げられた「Lollipop(Ode to Jim)」などは、恋する女の子特有の「あの」視線を交えて描かれる佳曲だろう。

前作で見られた成長期特有のニヒルな視線や気難しさのようなものは薄れつつも、自身/他人の過去の経験に基づいたものと思われる詩作法は今作にも通底している(ソングライターのモリーは必ずしも自分の経験のみを題材にしているわけではない、とインタビューで答えている)。と同時に彼女の過去に対する「決別」の意思がはっきり見て取れるのも確かだ。鳴っている音の優しさに反して、音楽を通して示されている意思表明は確固たるもののように映る。

Did you want to forget about life with me tonight?
今夜、私と歩んできた人生を忘れたいと思った?
Underneath this flickering light
点滅する光にさらされ
Left the apartment in a state of disarray
混乱したままアパートを飛び出した
Tried out the synthesizer you bought yesterday
あなたが昨日買ってきたシンセサイザーを弾いてみる

「Forget About life」


No turning, There's no turning back after what's been said
言われた事に影響を受けて元に戻ったりしない
No turning, There's no turning back
絶対に元に戻ったりしない

「In Undertow」


Now that you’re not my baby I go do whatever I want
No need to turn around to see what’s behind me I don’t care
あなたは私の赤ちゃんじゃないから、振り返って何がいるか確かめる必要もないし
何をしても何処へ行ってもいいの

「Not My Baby」


かつてはバイトをしてお金を貯めながら、20分のショウの為に毎回片道16時間かけて移動していた、そんなバンド活動をしていた彼女たちは、それらの過去を否定することなく、しかし記憶のどこかに留めていたに違いない。もしかしたら彼女たちは、その繊細なビジュアルに反して、その辛さ/苦しさバネにしてきた反骨精神の塊なのかもしれない。反・〈社交界の有名人〉や〈資産家のお嬢様〉を意味する本作のタイトル『Antisocialites』は自分たちのバンドとしてのアティチュードの提示ではないだろうか。全曲を通して聴き終えると、そんな風に思えてくる。最後に、現在のバンドのモードを表しているような、ギターのアレックのシンプルで印象的な言葉を紹介しておこう。

「僕らはギター・ポップ・バンドだ。人に聴いて貰うことが何よりのやりがいだよ」


Posted by 山岡弘明
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