photo: Terry Magson


5月にNonesuchから新作『Following Mountain』をリリースしたばかりの、バンジョー奏者Sam Amidon

Nico MuhlyDovemanことThomas Bartlettの友人でもある彼は、現在発売中のムック『Folk Roots, New Routes フォークのルーツへ、新しいルートで』で奥方のBeth Ortonとの馴れ初めも語ってくれていますが、今回はそこに掲載できなかったインタビューを紹介したいと思います。意外な交友関係も明らかに?
いつもコーヒー・ショップでたむろしてたのに、
彼はある日突然ロック・スターになったんだ!


──King TuffことKyle Thomasや、tUnE-yArDsことMerrill Garbusとは以前からの知り合いだそうですが、出会ったきっかけは?

僕が育ったヴァーモントのブラトルボロには、ミュージシャンの根強いコミュニティがあるんだ。僕より1〜2歳年下のKing TuffことKyle Thomasもブラトルボロ育ちで、彼とは大した知り合いじゃなかったけど、繁華街のCDショップやコーヒー・ショップで、パンクみたいな恰好した彼をよく見かけていたよ。彼はいつもコーヒー・ショップの隅でたむろしていたと思っていたら、ある日突然ロック・スターになったんだ! tUnE-yArDsで知られるMerrill Garbusは素晴らしい女性だし、途方もないミュージシャンでパフォーマーだよ。彼女の母親も僕の両親と同じ世界のフォーク・ミュージシャンで、彼女は僕らが10代の頃に行ったフォーク・ミュージックのサマーキャンプで働いていたんだ。僕が弟のSteffanやThomas Bartlettと一緒に結成したPopcorn Behaviorの曲に合わせて踊ってくれたし、Steffanが開いたパーカッションのワークショップにも参加してくれたんだ。あの当時はお互いの事をよく知らなかったけど、彼女とは同じ世界にいたんだよね。最近になってから友達になったけど、数年前に彼女のアルバムでフィドルを演奏して光栄だったよ。他にもChris Weismanというブラトルボロ出身のディープなミュージシャンがいるんだ。彼はそれほど有名じゃないけど、チェックしてみてよ。




Sam Amidonがフィドルで参加したtUnE-yArDsの「Rocking Chair」



──Nico Muhlyのアルバム『Mothertongue』に収録されていたあなたとのコラボレート曲「The Only Tune」は、自分のお気に入りのひとつです。あの曲はマーダー・バラッドの「Two Sisters」を下敷きにしたものですが、どのように生まれたのでしょう?

ありがとう! あの曲は、Nicoと僕が、プロデューサーのValgeir Sigurðssonと初めて一緒に作った曲なんだ。僕が自分のパートだけを全部書いて、それからニコがヴィオラ、ピアノ、キーボード、髪を切る音、エレクトロニクスなんかを後で追加したんだ。彼の頭の中にそのピースが全部入っていたなんて驚きだったし、行き当たりばったりのやり方で僕に歌と演奏をさせて、それを曲にするんだからすごいよね。1年に数回はこの曲を演奏するけど、そのたびに感動的で素晴らしい経験をしているよ。



──セカンド・アルバムまでは“Samamidon”という名義でしたが、Sam Amidonとの違いは何なのでしょう?

Samamidonは、もうちょっと架空のキャラクターっぽい感じだね。

──あなたはDock BoggsやBessie Jonesといったアーティストのレパートリーを取り上げていますが、彼らのどこに惹かれたのでしょう?

Dock BoggsもBessie Jonesも、僕が大好きなシンガーでミュージシャンなんだ。Dockについて言えば、声の質と、彼の暗い歌、その歌を歌う彼の美しさに魅力を感じるし、Bessieは、声を使ってタンバリンを叩く演奏から伝わってくる深いリズム感だね。僕は二人の曲をたくさん聴きながら育ったし、彼らの世界に浸るのが大好きなんだ。





──あなたがベネフィット・コンピの『Our First 100 Days』に提供していた「Correspondence」という曲はJimi Hendrixと架空の文通を歌ったものでしたが、新作にJimi Hendrixのパーカッション奏者だったJuma Saltanが参加していることと、何か関係があるのでしょうか? 新作の「Juma Mountain」という曲の“Juma”も彼のことですか?

おっしゃる通り、「Juma Mountain」では、Jumaがパーカッションを演奏しているよ。Jumaとコラボするチャンスが来たのは、友達のShahzad IsmailyがJumaと知り合いで、彼と一緒に演奏するチャンスがあると知らせてくれたからなんだ。JumaがJimiのバンドにいた時から彼の演奏は知っていたし、彼と会えるなんてワクワクしたよ。Jumaは温厚で素晴らしい人で、いろんな体験をしているし、彼のコンガに対するセンスは物凄いよ。



──あなたはNonesuchに所属していますが、Bill FrisellやKronos QuartetといったNonesuch所属アーティストとの共演はいかがでしたか?

Kronos Quartetのメンバーは、人間的にも素晴らしいミュージシャンだし、僕は彼らのニュー・アルバム『Folk Songs』で2曲歌ってるんだ。彼らは常に美しくて興味深い方向性を追求しているよ。Bill Frisellは僕の本当のヒーローだし、彼は自分だけの心地良い広大なサウンドの世界を作り上げたんだ。彼と一緒に演奏して友達になれたなんて、人生の夢の一つが実現したよ。



──新作に収録された9曲は全てあなたのオリジナルですが、いくつかの曲の歌詞はトラディショナル・ソングを下敷きにしていると聞きました。たとえばどのあたりですか?

「Blackbird」の歌詞はフォーク・ソングの歌詞を使っているし、「Warren」の歌詞の大半もそうなんだ。他の曲では自分の文章や他から引用した文を切り貼りして、そこから歌詞を作ったりしたけど、音楽自体は全て100%僕のオリジナルだからね。


Sam Amidon - Following Mountain