歌は世につれ、世は歌につれ――今年を彩った名曲の数々の中から、モンチコンのお気に入りの10曲をピックアップしてご紹介したいと思います。

さて、あなたの好きな曲は入っているでしょうか? 早速ご覧ください!

10. Mark Pritchard - Under The Sun



Global Communication、Harmonic 33、Africa HiTechなどのプロジェクトで活動してきたMark Pritchardの初の本名名義のアルバムから、『サウンド・オブ・ミュージック』で知られる女優ジュリー・アンドリュースの歌う童謡(アレンジはMoondog!)をサンプリングしたタイトル曲。そのボイス・ループには、Jean Ritchieのフォーク・ソングを使ったDan Deaconの「Wet Wing」や、Ravi Shankarのチャントを使ったGold Pandaの「Quitters Raga」にも似た奇妙な中毒性が。

9. Teenage Fanclub - It's A Sign



グラスゴーの良心ことTeenage Fanclubの6年ぶりの新作から、Lightships名義でのソロも素晴らしかったベース&ヴォーカルのGerard Loveのペンによる隠れた名曲。近年親交を深めているBeachwood Sparksとの相思相愛ぶりもうかがえるカントリー・ロック風の前半から一転、一気にメロディが溢れ出すサビでのコーラス・ワークがお見事。そういえばTFCの名盤『Grand Prix』には、Gerardの書いた「Sparky's Dream」という曲も入ってましたね(無理矢理)。

8. Bibio - Town & Country



かつてはフォークトロニカのジャンルに括られていたイギリス人ミュージシャンStephen Wilkinsonのソロ・プロジェクトの最新作から、生ドラムを導入し、もはや完全なソウル・ミュージックと呼んでしまいたい先行シングル。エレピの優しい響きと甘いハイトーン・ヴォイスはAllen Toussaintあたりの作品にも通じるもので、最近だとWhitneyのファンにもオススメ。

7. Benji Hughes - Fall Me In Love




Father John Mistyのプロデューサー、Jonathan Wilsonと結成したバンドMuscadineでメジャー・デビュー。2008年のファースト・ソロ・アルバム収録曲を女優のジェニファー・ローレンスが主演映画でカバーして注目されるという異色の経歴といい、そのルックスといい、どこか今年亡くなったLeon Russellを思わせる才人。Meshell Ndegeocelloも参加した8年ぶりのセカンド・アルバムは楽曲の出来にバラつきが激しいが、この曲は文句無しに素晴らしい。

6. Tim Burgess & Peter Gordon - Begin



最近は自身のレーベルからR. Stevie Mooreのベスト盤をリリースしたりもしているCharlatansのフロントマンと、Arthur Russell関連作品で知られるサックス奏者の異色コラボ作のオープニング曲。アルバムにはPeter Zummo、Mustafa Ahmed、Ernie Brooks(Modern Lovers)といったArthur Russell人脈はもちろん、Factory FloorのNik Void嬢も参加し、Timとのデュエットを披露。ラスト曲はなんとLambchopのKurt Wagnerとの共作だ。

5. Drugdealer - Suddenly feat. Weyes Blood



Run DMTやSalvia Plathといったドラッグ絡みの名義で活動してきたMicahel Collinsが、性懲りもなくドラッグ絡み(というかそのまんま)の名義に改名、Weyes BloodことNatalie Mering嬢をヴォーカルに招いたリード曲(ベースを弾いているのはAriel Pink)。どうにも陰の部分が表に出てしまいがちなWeyes Bloodの作品とは対照的に、Carole KingやCarpentersあたりを思わせる70年代SSW風の楽曲とアレンジで、Natalieの新しい魅力を引き出した名演。

4. Deakin - Good House




2009年にソロ・アルバム制作のためのアフリカ渡航費をKickstarterでファンから募るも、出る出る詐欺でバッシングされていたAnimal Collectiveの幽霊部員が、ようやく完成に漕ぎ着けたファースト・ソロのラスト曲。アルバム自体も待った甲斐があったと言いたくなる力作で、このうちの何曲かがAnimal Collectiveの新作『Painting With』に収録されていたら、『Merriweather Post Pavilion』に匹敵する作品になっていたのではないかとさえ思わせる。

3. Little Scream - The Kissing




Arcade FireのRichard Reed Parryのパートナーとして、Arthur RussellやGrateful Deadのトリビュート作に参加していたLaurel Sprengelmeyerのプロジェクト。5年ぶりの新作にはThe NationalのメンバーやSufjan Stevens、Owen Pallett、Sharon Van Ettenらが参加しているが、なかでもTV On The RadioのKyp Maloneとデュエットしたこの曲が出色の出来。ミックスはRusty Santosで、Grizzly Bearを思わせる歪んだギターの音が素晴らしい。

2. Car Seat Headrest - Drunk Drivers/Killer Whales



実家の車内で録音した大量の曲をbandcampにアップしていた眼鏡の青年が、過去のレパートリーを再録した前作に続きリリースした、初のスタジオ録音作のハイライト。トレーナーを殺してしまったシーワールドのシャチのエピソードを、飲酒運転するドライバーに重ねたダウナーなこの曲は、全編に渡って異様なテンションが横溢するアルバムの中でも、一際異彩を放っている。個人的にはCourtney Barnettの「Depreston」と並べて語りたい、郊外の憂鬱を描いた名曲。

1. Dirty Projectors -Keep Your Name




4年間の沈黙を破って、突如発表されたニュー・シングル。シンボリックなミュージック・ビデオとピッチシフトして歪められたトラックもさることながら、バンドの崩壊を仄めかす歌詞も相当に衝撃的。ウェディング・ベルを思わせる冒頭の鐘の音と、「夫婦別姓」とも解釈できるタイトルが意味するものは一体何なのか。メジャーからのソロ・デビューが決まったメンバーのAmber Coffmanとは対照的に、リーダーのDave Longstrethは再び固く口を閉ざしている。