既にご存知の方も多いかもしれませんが、9月19日未明、Dirty ProjectorsがSNSのアカウントに謎の動画をアップしました。翌20日にはプロフィール写真が更新され、21日には“What We Imagined And What We Became”というメッセージと共に、再び謎の動画をアップ。そして今日、オフィシャル・ビデオと共に新曲「Keep Your Name」が公開され、謎の動画がビデオのワンシーンであること、“What We Imagined And What We Became”が新曲の歌詞の一部であることが判明しました。しかしこのビデオにも、いくつかの謎が隠されているようです。


1. ピッチシフト&スローダウンされている?

歌詞を聴く限りでは、かなり赤裸々な失恋ソングになっているこの曲。しかし肝心のDave Longstrethのヴォーカルは歪められ、まるで別人のように聴こえます。そこで早速ファンがピッチと速度を修正したヴァージョンがアップされていますが、これを聴くとその歌詞の内容が、より鮮明に伝わってくるのではないでしょうか。このあたりの経緯は、Animal CollectiveのAvey Tareが、当時の奥さんだった元MumのKria Brekkanと発表した全編逆回転によるアルバム『Pullhair Rubeye』を連想させます。





2. Dirty Projectorsの「Impregnable Question」をサンプリング?

1:45あたりからは同じく変調されたコーラスが入ってきますが、これはDirty Projectorsの前作『Swing Lo Magellan』に収録されていた、「Impregnable Question」におけるDaveとAmber Coffmanのヴォーカル(“We Don't See Eye to Eye”の部分)をサンプリングしたもの。ビデオにDaveひとりしか出演していないこと、曲が別れを連想させる内容であることを考えると意味深ですが、さらに2:42からは男性のラップがスタート。ここではレーベル・メイトでもあるDan Deaconの昨年のアルバム『Gliss Riffer』収録の「Sheathed Wings」がサンプリングされているそうで、ビデオではラップの歌詞にシンクしてDaveがウンチの絵文字やKISSのジーン・シモンズのイラストを描いているシーンが挿入されています。





3. デイヴが描いている絵の意味?

ビデオの中でDaveが描いている絵は、オランダの騙し絵画家エッシャーが1956年に描いた「Bond of Union(婚姻の絆)」によく似ています。螺旋状に繋がった男女の絵は、Dirty Projectorsの『Bitte Orca』のジャケットも連想させますが、AmberとDaveの関係を表しているのでしょうか?


Dirty Projectors - Bitte Orca

M.C. Escher – Bond of Union


4. 冒頭に隠されたメッセージ?

ビデオの再生速度を落とすと、冒頭にほんの一瞬だけMissy Elliott、Joni Mitchell、そしてベートーベンの写真が登場することに気づきます。Daveのベートーベンへの傾倒は有名ですが、YouTubeには「ミッシー・エリオットは奇妙なラップ、ジョニ・ミッチェルは失恋の雰囲気、ベートーベンは取り憑くようなピアノのコード」というコメントがあり、“この曲の3大要素”だと考えれば納得が行くのではないでしょうか。



ここだけの話ですが、実はDaveはここ数年ソロ・アルバムを制作していたという情報もあり、それをDirty Projectorsとしてリリースすることになったとすれば、新作もパーソナルな内容になっていることが予想されます。いずれにせよ、明日にはまた何らかの続報があるはずなので、今後も引き続きその動向に注目しましょう!

Dirty Projectors - Keep Your Name

I don't know why you abandoned me
どうして君が僕を見捨てたのかわからない
You were my soul and my partner
君は僕の魂で パートナーだった
What we imagined and what we became
僕らが描いたものと 僕らの成れの果て
We'll keep 'em separate
僕らはそれを切り離したままにする
and you keep your name
君は君のままでいる

You keep your name
君は君のままでいる

There is a place that we both know
僕らがふたりとも知っている場所がある
It lives in our hearts, we built it together
それは僕らの心の中で生き 僕らはそれを一緒に築いた
Fear is a manacle but love is unchained
恐れは手錠 だけど愛は繋げない
So we'll keep 'em separate
だから僕らはそれを切り離したままにする
and you keep your name
君は君のままでいる

You keep your name
君は君のままでいる

I wasn't there for you
僕は君のためにそこにいたんじゃない
I didn't pay attention
関心も払わなかったし
I didn't take you seriously and I didn't listen
真剣に受け止めたり 耳を傾けもしなかった
I don't think I ever loved you
君を愛していたとさえ思わない
That was some stupid shit
それは愚かだったね
I wanted what, you wanted but we never really felt the same
君の欲しいものを欲しがったけど 同じように感じたことはなかった
I kept my name 'cause we were just different
僕は僕のままでいた だって僕らは違うんだから
Your heart is saying clothing line
君の心は言う クロージング・ライン
My body said Naomi Klein,
僕の体は言った ナオミ・クライン
No Logo
『ノー・ロゴ(ブランドなんか、いらない)』
We shared kisses and visions
僕らはキスと理想を交わした
But I guess it's shit that Gene Simmons said
だけどそんなのはクソで ジーン・シモンズが言ったように
Our band is a brand
僕らのバンドはブランドで
and it looks that our vision is dissonance
僕らの理想は不協和音みたいだ

You always hurried to grow up
君はいつでも早く成長したがった
I think I'll always just feel kinda the same
僕はいつだって変わらないと思う
What I want from art is truth
僕が芸術に求めるのは真実で
What you want is fame
君が求めるのは名声
Now we'll keep 'em separate
これから僕らはそれを切り離したままにする
and you keep your name
君は君のままでいる

You keep your name
君は君のままでいる