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[LINER NOTES] Day of The Dead


1989年の4月8日、シンシナティ州オハイオのリヴァーフロント・コリシアムで行われたグレイトフル・デッドのコンサートに、15歳の少女の姿があった。彼女の名前は、ジェシカ・デスナー。ロック・バンド、ザ・ナショナルの中心メンバーである双子のデスナー兄弟、ブライス・デスナーとアーロン・デスナーの、3歳上の実姉だ。絵画や詩、バレエを嗜んでいたという彼女からの影響もあったのだろう、1990年、当時14歳だったデスナー兄弟が、のちにザ・ナショナルのドラマーとなるブライアン・デヴェンドルフとはじめてセッションしたのも、グレイトフル・デッドの「アイズ・オブ・ザ・ワールド」という曲だった。人と話すのが苦手だった彼らは、居場所のないパーティーで、何時間もその曲を演奏し続けたこともあったという。


時は流れて、1999年。ニューヨークのコロンビア大学を卒業したアーロンは、ブライアンとその兄であるスコット、そしてその友人だったマット・バーニンガーとザ・ナショナルを結成して活動する傍ら、エイズ撲滅を訴える非営利団体レッド・ホット・オーガニゼーションの関連デザイン会社、ファニー・ガービッジで働く日々を送っていた。ザ・ナショナルは2005年にイギリスの大手インディー・レーベルであるベガーズ・バンケットと契約し、アーロンもバンドに専念するために会社を去っているのだが、その後も続いたレッド・ホットとの交流は、デスナー兄弟がキュレーターを務め、2009年にリリースされたインディー・ロック・ミュージシャンたちによるチャリティ・コンピレーション・アルバム『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』として、見事に実を結ぶことになる。ダーティー・プロジェクターズとデヴィッド・バーンのコラボレーションを筆頭に、アーケイド・ファイア、ボン・イヴェール、スフィアン・スティーヴンスなど総勢30組を超えるミュージシャンが参加したこのアルバムは、チャリティ・コンピとしては異例の好セールスを記録し、3億円近い収益をもたらすなど、2002年の『レッド・ホット+ライオット』以降リリースが途絶えていたエイズ撲滅チャリティ・コンピ、レッド・ホット・シリーズの20周年を飾るアルバムとして、大きな成功を収めたのである。


Dark Was The Night

そんな『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』の続編となるアルバムの噂が流れだしたのは、2年後の2011年だ。コーチェラ・フェスティバルに出演していたザ・ナショナルを訪ねた音楽サイトのインタビューで、ベースのスコットが「グレイトフル・デッドのトリビュート・アルバムを企画している」ことを明かしたのである。俄かに周囲が慌ただしくなる中、2012年の3月24日には、決定的な出来事が起こる。グレイトフル・デッドのオリジナル・メンバーであるボブ・ウィアーがカリフォルニアに所有するライヴストリーミング・スタジオ、TRIにアーロンとデヴェンドルフ兄弟が招かれ、ボブと一緒にグレイトフル・デッドとザ・ナショナル双方のレパートリーに加え、ボブ・ディランや現代のシンガー・ソングライター、キャス・マッコムズのカバーを披露したのだ。


Bob Weir & The National 3-24-12 TRI Studios San Rafael CA

ポスターにニューヨークのブルックリン・ブリッジとカリフォルニアのゴールデン・ブリッジが描かれていたことから、通称“ブリッジ・セッション”と呼ばれるこの日のセッションには、アーロンとデヴェンドルフ兄弟に加え、イエローバーズというバンドのメンバーだったジョシュ・カウフマンとサム・コーエン、ニューヨークのバンド、ザ・ウォークメンの鍵盤奏者ウォルター・マーティン、同じくニューヨークのバンド、タッカ・タッカのドラマーだったコンラッド・ドーセットが参加。2013年にはザ・ナショナルが目下の最新作となる『トラブル・ウィル・ファインド・ミー』をリリースしているが、そのツアーにもボブ・ウィアーが何度か飛び入り参加し、プロジェクトが動き始めていることを印象づけたのである。そして2015年の2月には、ニューヨーク北部のウッドストックに程近い場所にある教会を改装したドリームランド・レコーディングで、メインとなるセッションの録音を開始。“ブリッジ・セッション”と同様のラインナップにブライスを加えた8人によるコア・バンドに、様々なゲストを招いたこのレコーディングの模様はフェイスブックやインスタグラムにアップされ、徐々にその全貌が明らかになっていく。

Woodstock church recording #gratefuldead

Aaron Dessnerさん(@aarondessner)が投稿した写真 -









こうして完成した本作『デイ・オブ・ザ・デッド』は、全59曲、トータル6時間近くにも及ぶ、圧倒的なヴォリュームの作品だ。デジタル配信では20曲ずつ、それぞれ“サンダー”、“ライトニング”、“サンシャイン”という3パートに分かれた構成になっているが、CDでは収録時間の関係だろうか、曲順の大幅に異なる、5枚組のセットになっている。タイトルこそ前作『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』と対になっているが、ザ・ナショナルを除けば、前作に引き続き参加しているのはアントニー、グリズリー・ベアー、ボン・イヴェール(ジャスティン・ヴァーノン)、マイ・モーニング・ジャケット、ヨ・ラ・テンゴの5組のみ。その5組もソロ、もしくは別名義での参加ということを考えれば、前作から7年の間に起きたシーンの変化を捉えたフレッシュな顔ぶれになっており、また同時に、ザ・ナショナルの健在ぶりが伺えるのではないだろうか。





ところで、実は一昨年、デスナー兄弟にとって嬉しい出来事があった。姉のジェシカがアートワークを手掛けたグレイトフル・デッドのボックス・セット『スプリング・1990(ジ・アザー・ワン)』が、グラミー賞の最優秀パッケージ部門にノミネートされたのだ。このボックスの収録曲が録音された1990年といえば、デスナー兄弟がブライアンと一緒にはじめてセッションしたあの年。偶然とはいえ、もしもデスナー兄弟がトリビュート・アルバムを企画していなかったら、ジェシカにアートワークの依頼が来ることもなかったかもしれない。グレイトフル・デッドの功績だけでなく、(『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』がそうだったように)インディー・ロックの未来を定義することになるだろう労作『デイ・オブ・ザ・デッド』。けれどもその完成を一番喜んでいるのは、あの時オハイオのコンサート会場にいた、15歳の少女なのかもしれない。

(V.A.『デイ・オブ・ザ・デッド』国内盤ライナーノーツより一部抜粋)



Grateful Dead - Spring 1990(The Other One)
artwork by Jessica Dessner



"Day of the Dead"

DISC 1
1. The War on Drugs - Touch of Grey
2. Phosphorescent, Jenny Lewis & Friends - Sugaree
3. Jim James & Friends - Candyman
4. The Lone Bellow & Friends - Dire Wolf
5. Courtney Barnett - New Speedway Boogie
6. Mumford & Sons - Friend of the Devil
7. Bruce Hornsby and DeYarmond Edison - Black Muddy River
8. The National - Morning Dew
9. Anohni and yMusic - Black Peter
10. Ed Droste, Binki Shapiro & Friends - Loser
11. Perfume Genius, Sharon Van Etten & Friends - To Lay Me Down

DISC 2
1. Kurt Vile and the Violators (featuring J Mascis) - Box of Rain
2. Bonnie 'Prince' Billy & Friends - Rubin and Cherise
3. The Lone Bellow & Friends - Me and My Uncle
4. Moses Sumney, Jenny Lewis & Friends - Cassidy
5. Lucius - Uncle John's Band
6. Lee Ranaldo, Lisa Hannigan & Friends - Mountains of the Moon
7. Cass McCombs, Joe Russo & Friends - Dark Star
8. Nightfall of Diamonds - Nightfall of Diamonds
9. Tim Hecker - Transitive Refraction Axis for John Oswald
10. Tunde Adebimpe, Lee Ranaldo & Friends - Playing in the Band
11. Richard Reed Parry with Caroline Shaw and Little Scream (featuring Garth Hudson) - Brokedown Palace

DISC 3
1. The National - Peggy-O
2. Bryce Dessner - Garcia Counterpoint
3. Daniel Rossen, Christopher Bear and The National (featuring Josh Kaufman, Conrad Doucette, So Percussion and Brooklyn Youth Chorus) - Terrapin Station (Suite)
4. Orchestra Baobab - Clementine Jam
5. Stephen Malkmus and the Jicks - China Cat Sunflower -> I Know You Rider
6. This Is the Kit - Jack-A-Roe
7. Bill Callahan - Easy Wind
8. Ira Kaplan & Friends - Wharf Rat
9. Lucinda Williams & Friends - Going Down The Road Feelin' Bad
10. Sam Amidon - And We Bid You Goodnight

DISC 4
1. The Walkmen - Ripple
2. Marijuana Deathsquads - Truckin'
3. The Flaming Lips - Dark Star
4. Local Natives - Stella Blue
5. Unknown Mortal Orchestra - Shakedown Street
6. Orchestra Baobab - Franklin's Tower
7. Tal National - Eyes of the World
8. Bela Fleck - Help on the Way
9. The Rileys - Estimated Prophet
10. s t a r g a z e - What's Become of the Baby
11. Vijay Iyer - King Solomon's Marbles
12. Bonnie 'Prince' Billy - If I Had the World to Give

DISC 5
1. Phosphorescent & Friends - Standing on the Moon
2. The Tallest Man on Earth & Friends - Ship of Fools
3. Bonnie 'Prince' Billy & Friends - Bird Song
4. Hiss Golden Messenger - Brown-Eyed Women
5. Real Estate - Here Comes Sunshine
6. Charles Bradley and Menahan Street Band - Cumberland Blues
7. Man Forever, So Percussion and Oneida - Drums -> Space
8. Fucked Up - Cream Puff War
9. Mina Tindle & Friends - Rosemary
10. Daniel Rossen and Christopher Bear - High Time
11. Luluc with Xylouris White - Till the Morning Comes
12. Winston Marshall, Kodiak Blue and Shura - Althea
13. Angel Olsen - Attics of My Life
14. Wilco with Bob Weir - St. Stephen (live)
15. The National with Bob Weir - I Know You Rider (live)

Posted by Monchicon
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