2012年にSub Popからリリースしたファースト・アルバムで注目を集めたトロントのノイズ・ロック・トリオ、METZ。そんな彼らが1月29日に、新代田FEVERで一夜限りの来日公演を行う。

前作に続きCrystal Castles作品で知られるAlex BonenfantとHoly FuckのGraham Walshをエンジニアに迎えた昨年の『II』について、そして自身が経験した“奇妙な仕事”について、フロントマンのAlex Edkinsに話を聞いてみた。


強制収容所や、たくさんの屍体。
そういう写真を眺めるのは気が滅入る作業だった。


──METZのメンバー3人のうち、ベースのChris SlorachとドラムのHayden Menziesは90年代から様々なバンドで活動していたようですが、あなたはいかがですか? 世代的にも、彼らより少し若いんでしょうか?

俺はChrisやHaydenよりもちょっとだけ若いけど、ほんの数年だけだよ。俺たちはみんな、METZの前にいろんなバンドで演奏してきたんだ。俺がやってたのはほとんどが風変わりなバンドで、大した結果は残せなかった。ただ地下室で遊んでただけさ。ChrisとHaydenは、もっと真剣に取り組んでたけどね。

──カナダのヴァンクーヴァーにはハードコア・パンクのシーンがあることで知られていますが、あなたたちの育ったオタワや、現在活動するトロントはいかがですか?

オタワやトロントにも素晴らしい音楽シーンがあるよ。俺が(90年代の中頃に)アンダーグラウンドな音楽にのめり込むようになった時、オタワのパンク・シーンは自分の家族みたいなものだった。心の広い、密接な友人たちのコミュニティで、すごく重要だったし、俺の人生に大きなインパクトを与えてくれたんだ。今のトロントのシーンもすごく似ているけど、もっとスケールが大きいね。世界で最も活気に満ちたシーンのひとつだと思う。ここではどんな種類の音楽も見つけることができるし、ほとんどの人たちが、他の人たちのやっていることに協力的なんだ。

──MudhoneyのMark Armとはどうやって親しくなったのですか? そのことがSub Popとの契約に繋がったのでしょうか?

Mudhoneyとは、トロントのHorseshoe Tavernで、彼らの前座をした時に初めて会ったんだ。俺たちはちょうどファースト・アルバムを録り終えて、レーベルを探しているところだった。Markから直接返事をもらったわけじゃないけど、彼が契約を後押ししてくれたって話は聞いているよ。その後で俺たちはMudhoneyとMeat Puppetsと一緒にUKをツアーして、Mudhoneyとは南アメリカも一緒にツアーした。彼らは素晴らしい人たちで、音楽的にも大きな影響を受けてるよ。

──「Negative Space」はバンドの初期シングル曲ですが、ファースト・アルバムでも再録されていますし、あなたたちの楽曲の出版社の名前でもあります。この曲はバンドにとってどんな意味を持っていますか?

「Negative Space」は、俺たちが自分たちの誇れるものを作れたって、初めて思えた曲なんだ。あの曲がファースト・アルバムのムードを決めてくれたと思ってるよ。



──前作と本作でエンジニアを務めたAlex BonenfaltとHoly FuckのGraham Walshとは、どうやって知り合ったのですか?

GrahamとAlexとは、トロントの音楽シーンの友人を通じて知り合ったんだ。俺たちはみんな同じライヴに行っていたし、自然と話をするようになって、すぐに一緒に作業できるって感じた。彼らは音楽を作るうえで、全く異なるスタイルとアプローチを持っているんだ。ファースト・アルバムではAlexがレコーディングとミックスの大半を行っていて、『II』ではGrahamがレコーディングとミックスの大半を行っている。俺たちはそれについて話し合ったわけじゃないけど、両方に携わってほしかったし、自然とうまくいったんだ。

──以前Holy FuckのBrian Borcherdtにインタビューした時、彼が『ジョンQ 最後の決断』のフィルムの編集をしていたことを教えてくれました。あなたも映画のリサーチの仕事をしていたそうですが、それはどういった内容だったのでしょう? あなたの書く詞にも影響を与えましたか?

俺は以前、ドキュメンタリー映画のアーカイヴのリサーチの仕事をしていたんだ。基本的には、監督が希望する古い写真や映画のワンシーンを探して、そのシーンを法的に使えるように、ライセンスを取る仕事だね。俺は第二次世界大戦と実際にあった犯罪に関するドキュメンタリーを制作していたから、すごくダークで不快な映像が必要だったんだ。強制収容所や、たくさんの屍体。そういう写真を1日に8時間も眺めるのは、気が滅入る作業だったよ。それはちょうどファースト・アルバムのレコーディングをしていた頃だったから、かなりの確率で自分の気分や歌詞に影響しただろうね。

みんながミュージシャンに、数ヶ月ごとに
生まれ変わることを期待しているみたいだ


──あなたがそのHoly FuckのBrianとConstantinesのDoug MacGregorと一緒にやっている、LIDSというプロジェクトについても教えてください。

LIDSは、俺が親しい友人2人、Brian Borcherdt(Holy Fuck)とDoug MacGregor(Constantines、City and Colour)と一緒に始めたエクスペリメンタル・バンドだよ。俺たち3人は全員バンドのツアーで飛び回っているから、トロントにいる時には集まって、楽しい気分になれる奇妙な音楽を作ってるんだ。すごく自由で即興性の高い、長尺のリズミックなジャムなんだ!



──タイトルやジャケット写真からも、『II』は前作の正統な続編だと言えると思います。すべてのことが目まぐるしく変化していくこの時代に、ファースト・アルバムから3年経ってもバンドの初期衝動に忠実であるということは、ある意味ラディカルだとすら思えるのですが、ご自身ではどのように感じますか?

同意するよ。みんながミュージシャンに、数ヶ月ごとに生まれ変わることを期待しているみたいだ。俺たちは自分たちのサウンドを完全に変えることなく、進化させたいと思った。『II』ではそれが出来たと思っているよ。ミュージシャンとして、ソングライターとして、プロデューサーとして俺たちは成長したんだ。俺たちはライヴでの激しさを維持しながら、楽曲により多くの空間と、メロディーを与えようと意識していた。プロダクションはファーストと比べるとダークで、完璧にハマってると思うよ。


(左)『METZ』(2012) (右)『METZ II』(2015)


──ジャケット写真と、撮影したあなたのお父さんについて教えてください。

親父はいつだって写真を愛してたんだ。親父の写真を見て育ったし、彼の作品が本当に好きだった。いくつかの写真が自分の中に消えずに残っていて、アルバムのアートワークを選ぶ時になって、いくつかの写真が音楽全体のムードにフィットして、歌詞の内容を反映しているように思えたんだ。『II』に使った写真は、俺にとって孤独や絶望、自暴自棄といった状況を連想させる。望んでいる場所に辿り着けない2人。水の向こうにそれが見えているのに、辿り着くことができない。彼らは閉じ込められているんだ。

──「Nervous System」はスタジオでのエフェクトを使った実験的なサウンドになっていますが、どうやって録音したのですか?

ヴォーカルをスペース・エコーに通して、大量のエフェクトをリアル・タイムで操作したんだよ。ビートをキープしながら良いテイクを取るのは難しかったけど、楽しかったね。

──アルバムのラストには延々とノイズが続きますが、これはもしかして、アルバムの収録時間がちょうど30分になるまで引き延ばしたんでしょうか?

ハハハ、違うよ。アルバムの収録時間のことは考えなかったんだ。第六感ってやつさ。

──日本盤のボーナス・トラックの「Good, Not Great」という曲について教えてください。

実はあれは、Mission of Burmaのカバーなんだ。彼らは俺たちのフェイヴァリット・バンドのひとつだよ!


Mission of Burmaの2006年作『The Obliterati』収録の「Good, Not Great」

──カバーといえば、以前SparklehorseのMark Linkousの「Pig」という曲をカバーしていましたが、彼の曲のどんなところに惹かれますか?

俺はSparklehorseが大好きなんだ! 彼の楽曲とプロダクションは、素晴らしいの一言だね。彼の音楽はMETZにも多大な影響を与えているよ。

──ジャパン・ツアーに向けての抱負も聞かせてください。

俺はずっと日本に行ってみたかったんだ。唯一無二だと思える場所だからね。3日間過ごす予定だから、何らかの文化を吸収できたらと思ってるよ。みんなと会って、音楽が聴けることに興奮してるよ!


1月22日にリリースされる新曲「Eraser」のビデオ



FEVER presents
METZ JAPAN TOUR 2016


1月29日(金) 新代田FEVER
GUEST: Crypt City
開場18:30 開演19:00
前売¥4300(+1drink) 当日¥4800(+1drink)
Info:FEVER(03-6304-7899)