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Courtney Barnett - Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit
ペンは剣よりも強し

まずはアルバムの冒頭を飾る「Elevator Operator」の、巧みな語り口に驚かされる。

20歳にして社畜の青年オリバー・ポールと、ハイヒールを履いてヘビ革の鞄をぶら下げ、香水の臭いを撒き散らす中年女性。青年に同情した女性は後で強烈なしっぺ返しを食らうことになるのだが、性別も年齢も身分も違う2人の主従関係が1台のエレベーターの中で逆転するというこの曲は、エレベーターと人生のアップダウンを皮肉たっぷりに対比させていて、思わず唸らずにはいられない。
Courtney Barnettは、オーストラリアのシドニー出身の27歳。一昨年に2枚のEPをカップリングした『The Double EP: A Sea of Split Peas』をリリースして注目された彼女の観察眼は、ピザの宅配や、バーテンダーのバイトをしていたという経験から養われたものなのだろう。代表曲「Avan Gardener」も“アヴァンギャルド(Avant-Garde)”と“庭師(Gardener)”の言葉遊びだったが、本作収録の「Depreston」も、“ユーウツ(Depression)”とメルボルン郊外の町プレストン(Preston)を掛け合わせて、気が滅入るようなムードを上手く表現している。かと思えば、キャピタリズムを道路で追い越し運転をする大企業のトラックに重ねた「Dead Fox」や、グレートバリアリーフの汚染に言及した「Kim’s Caravan」のような曲もあり、ユーモアの中にもポリティカルなメッセージを忍ばせるその手腕と早口で捲し立てるようなヴォーカルが、往年のBob Dylanを引き合いに出して語られているのも納得だ。



しかし彼女が言葉だけの人かと言うと、決してそうではない。「Elevator Operator」というタイトルからして、Byrdsのオリジナル・メンバーだったGene Clarkのファースト・ソロ・アルバムに収録されていた同名のガレージ・サイケ・ナンバーを思わせるのだが、彼女の音楽にも『霧の5次元』の頃のByrdsのような、サイケデリックな要素が見え隠れする。それはひとえに、幻に終わったJim O’Rourke主宰の日本版All Tomorrow’s Partiesにも名前を連ねていたオーストラリアのパンク・ブルース・バンド、The DronesのDan Luscombeが弾くギターによるものが大きいのだろうが、Brian Jonestown Massacreのライバル・バンドだったDandy Warholsのドラマーで、現在はオーストラリアに移住しているBrent DeBoerともバンド活動をするなど、彼女自身のテイストも多分に反映されてるはずだ。



「Elevator Operator」のような曲だけではなく、彼女の書くラヴソングにも、恋人同士のすれ違いを歌ったものが多い。「Pedestrian At Best」のビデオにも出演している女性シンガー・ソングライターのJen CloherはCourtneyの恋人で、Jenの「Numbers」という曲は、歳の離れた2人の関係性について歌っているのだという。そのJenの名前は、先述した「Kim's Caravan」にも登場する。彼女は「有機野菜を買うべきだと主張」するが、Courtneyは「多少の農薬なんて問題ないと思ってた/お金に余裕があったことなんて一度もない」と反論するのだ。こういた複眼的な視点が、彼女の歌をより含蓄のあるものにしている。



「私が何を言おうとしてるかは聞かないで/私はあなたが見たいものを映し出してるだけ/だから好きなように解釈して」

と、Courtneyははぐらかすかのように歌っている。けれども本当にそうなのだろうか。彼女はただ座っているだけのように見えるかもしれない。でも時々、彼女は座って考えているのだ。

Posted by 清水祐也
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