評価:
Domino
(2014-03-04)

Springtime Blues

ずっと変わらないままでいること、そしてそんな自分を表現し続けるということは、無限に選択肢が増えた現在、極端に変化することよりも実はよっぽど難しいんじゃないだろか。そういう意味でいえば、Real Estateの変わらなさはもはや至高の芸だ。シカゴにあるWilcoのスタジオで録音されたという通算3作目となるこの新作でも、前情報からベタに思い浮かぶ「オルタナ・カントリー」への傾倒などはあくまで見せない。基本的には以前と変わらない“洗練”と“いなたさ”が同居する「日陰の小道散歩」系のギター・ポップを実直に鳴らしている。
・・・・・・とはいえ、ミクロな視点での変化ならいくつか確認できる。鍵盤奏者と正式なドラマーの加入によるアレンジの幅の広がり、そして半年間リハを重ねたが故の演奏の滑らかさなど、音楽的な部分できちんと進化を遂げていたり、「Had To Hear」のギターのトーンがもはや完全に初期のFeltのそれになっていたり、「The Bend」の後半でちょっとだけジャムっぽい展開になったり、ラストの「Navigator」がAメロ→サビ→サビ→Aメロと微妙にひねった曲構成になっていたり・・・・・・などなど。何より、初期のややおどけ気味だった表情がなくなって、今はどこか確信に満ちた風情で近所を散歩(演奏)している点が最大の変化だろうか。

この本(宣伝)で言及されているとおり、Real Estateはニュージャージーのリッジウッド高校の幼馴染だった3人が中心となって結成されたバンドだ。Ducktailsの異名を持つ眼鏡紳士マットのギターがリリカルな音色を鳴らし、Grateful Dead狂で熊さんみたいな風貌のアレックスがベースで曲の土台をしっかり支え、そして故郷に人一倍思い入れの強いメイン・ソングライターのマーティン(最近結婚)がその中でややまどろみながら歌う、このトライアングルによって彼らのサウンドは成り立っている。そして、アルバムには小春日和感漂うギターインスト「April's Song」や、アレックスがおセンチな喉を披露する「How Might I Live」など、マーティン以外の二人の見せ場もちゃんと用意されていたりもする。そう、長年の付き合いで気心の知れたこの3人だけが持ちうる親密な空気がここにはあり、そして今回の新作でその繋がりはより一層強まっている。

ちなみに本作のジャケには、マーティンの子供時代から20年以上も近所のデパートに掲げられてきた大きな壁画があしらわれているという。時が経って少し寂れてしまったけれどいろいろな思い出の詰まった場所、そして田舎の幼馴染3人組が語る気のおけない深夜の昔話、世界のどこにでもありそうなごくありふれた光景なのに、いざそれが音楽として鳴らされると大きな吸引力を持つポップ・ソングへと生まれ変わることの不思議。Real Estateはノスタルジーという名の甘美な病には処方箋がないことを実にさりげなく証明してくれている。


「ここはもう僕がかつて知っていた馴染みの場所じゃない
でも、まだあの頃と同じ古ぼけたサウンドが鳴っている」
(Past Lives)


Real Estate - Talking Backwards