80年代に「10年間で10枚のアルバムと10枚のシングルをリリース」して解散したバーミンガムの偏屈詩人Lawrence率いる伝説のバンドFelt。その10枚のアルバムの内、5作品が2月26日に日本にて紙ジャケット仕様でDisk Unionから復刻されます。

“UKオリジナル盤のジャケットやインサート、さらに当時の日本盤の帯やライナーノーツもできる限り再現した限定紙ジャケット仕様盤としてリイシュー”

とのことで、バンドの持つ美意識をかなりの度合いで再現したものになりそうです。もちろん『美の崩壊』『毛氈』をはじめとする秀逸な邦題もそのまま再現。さらに『美の崩壊』のジャケはUKオリジナル盤ではレアな全顔ヴァージョンを採用しているとか。

フェルトのカタログはこれまでにも何度か復刻されてきましたが、灰色バックに文字情報のみとか白地に文字情報だけとか唐突に赤くなったりとかアートワークがガラッと変わることが多かったので、これは嬉しい仕様です。GirlsやThe Pains Of Being Pure At Heart, Real Estate, Belle & Sebatian, The Clientele, The Tydeといった現代のインディー・バンドも敬愛する彼らの名盤をオリジナルに近い形で味わえるチャンス。・・・というわけで今回の復刻を記念してその5枚のアルバムを独断と偏見でミニ・レビューしてみました。



『美の崩壊』(Crumbling The Antiseptic Beauty)

Year: 1982
Label: Cherry Red
Produce: John A. Rivers
Member: Lawrence (vocals, electric guitar), Maurice Deebank (electric guitar), Gary Ainge (drums) , Nick Gilbert (bass)

記念すべき6曲入りデビュー・アルバム。モーリス・ディーバンクの奏でる鋭くきらめくアルペジオ、ローレンスの独白調呟きヴォーカル、そしてゲイリー・エインジのポコポコ・ビートが織り成すスカスカで骨ばったサウンドは、まだ演奏&音質ともに荒削りだが、それ故の原石の輝きともいえる独自の魅力が。ヴェルヴェッツのヨーロッパの息子が明かりを消した部屋でテレヴィジョンを見ながら引き篭もっているかのよう。原題を忠実に訳すと「防腐処理された美の崩壊」と、ちょっと怖い。

★★★
(屈折した青年の主張がお好きな方に)





『毛氈』(The Splendour Of Fear)

Year: 1984
Label: Cherry Red
Produce: John A. Rivers
Member: Lawrence (guitar, vocals), Maurice Deebank (guitar, lead guitar), Mick Lloyd (bass), Gary Ainge (drums)

セカンド・アルバム。前作に引き続き6曲収録だがヴォーカル入りは2曲のみとややクセのある構成。ただ、ローレンスによれば「もっとも完成したフェルトのレコード」とのこと(恐らく、自らのイメージ通りの作品が作れたことを意味すると思われる)。原題の直訳は「恐れの輝き」だが、帯に描かれた“毛氈”の字面の迫力には有無を言わせない説得力がある。本作の主役は何と言っても(この後でキャリア唯一のソロ作『Inner Thought Zone』をリリースする)モーリスのギターサウンドで、前作よりも情感の増した指さばきががじっくりと堪能できる。ちなみに「The World Is As Soft As Lace」の女性バックコーラスが誰なのかがいまだに謎。

★★★☆
(美アルペジオ好きの方へ)




『彩霞』(The Strange Idols Pattern And Other Short Stories)

Year: 1984
Label: Cherry Red
Produce: John Leckie
Member: Lawrence (guitar, vocals), Maurice Deebank (lead guitar), Mick Lloyd (bass), Gary Ainge (drums)

ここにきてついに30分越えを果たした3作目。プロデュースはXTCやThe Stone Rosesで知られるブリットポップ職人ジョン・レッキ―。彼の貢献か、くっきり&すっきりとしたバンドサウンドを獲得。ゲイリーがスネアらしいスネアを叩き、ローレンスがサビらしいサビを歌うようになった。それでもじわりと滲み出る屈折感に業の深さを感じざるを得ない。チェリー・レッド期では最も聴きやすくポップなため、入門編としてもオススメの一枚だ。ちなみに「Sunlight Bathed The Golden Glow」はシングル・ヴァージョンだとストリングスが入っていて、だいぶ印象が変わる。

★★★★☆
(凛としたサウンドがお好みの方に)




『カスピの詩人』(Ignite The Seven Cannons)

Year: 1985
Label: Cherry Red
Produce: Robyn Guthrie
Member: Lawrence (electric guitar, vocals), Maurice Deebank (lead guitar), Gary Ainge (drums), Martin Duffy (keyboards, back vocals), Marco Thomas (bass), Elizabeth Frazer (vocals)

チェリレからは最後のオリジナル・アルバムとなった4作目。現プライマル・スクリームのキーボーディスト、マーティン・ダフィが加入。彼の鍵盤とモーリスのギター、そして全体を覆う「もわっ」としたリヴァーヴが交わり、ネオサイケの匠ガスリーならではの4AD風幻想空間を創出。サイケ度はキャリア中随一だが、音が濃密過ぎて互いの楽器の響きが相殺されている箇所もあり、その辺で好き嫌いが分かれるかも。ハイライトはやはりコクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーが参加した「Primitive Painters」で、彼女の天上歌唱に聞き惚れる。心なしかジャケも4AD風。

★★★★
(もやっとしたサウンドがお好みの方に)




『微睡みの果てに』(Forever Breathes The Lonely Word)

Year: 1986年
Label: Creation
Produce: John A. Rivers
Member: Lawrence (vocals, electric guitar), Martin Duffy (hammond organ, piano), Marco Thomas (bass, guitar), Gary Ainge(drums), Tony Willé (electric & acoustic guitar)

クリエイション移籍後2枚目、通算6枚目の本作はバンドの代表作ともいえる一枚。プロデュースにギタポ職人ジョン・A・リヴァースが返り咲き。モーリスが脱退し、メイン楽器がマーティン・ダフィ(ジャケに写っている美青年)のハモンド・オルガンへとシフト。その軽快かつアーシーな響きがローレンスのヨレたヴォーカル、そしてより率直な言い回しの増えた言葉と相まって、Big StarやModern Lovers、後期VUにも通じるそこはかとなく哀愁の漂う名曲揃いのポップ・アルバムへと結実している。

★★★★★
(ハモンドと美青年好きの方へ)


Felt - Primitive Painters


Felt - live on Spanish TV (1985)


残りの5枚も復刻されるといいな〜。