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[INTERVIEW] Washed Out


ジョージア州の青年Ernest Greeneによるソロ・プロジェクト、Washed Out。彼が2009年の夏にリリースしたミニ・アルバム、『Life of Leisure』で起こしたチルウェイヴというちいさな波は、やがて全米を覆う一大ムーヴメントへと発展していく。

それから4年、再び夏の盛りを迎える前に新作『Paracosm』を携えて帰ってきた彼が、アルバムにインスピレーションを与えたものや、親友Toro Y Moiとの関係について語ってくれた。
人生には暗い瞬間もあるけど、
僕は45分間の白日夢に浸っていたいんだ


――70年代から活動を続けていて、YMOのメンバーとも関わりの深い日本のヴェテラン・ミュージシャン鈴木慶一氏が、昨年のあなたの来日公演を観て「ライブはとても良かった。OMDを暗くした感じか」と評していましたが、こうした感想についてはどう思いますか?

すごく的確だと思うよ! 実際、『Within and Without』を作ったとき、自分では夜っぽいサウンドだとはあんまり思ってなかったんだけど、ライブを重ねるにつれどんどんダークになっていったんだ。音楽的に完全を求めてるようなところがあるから、シンセにも独特の冷たい感触がある。それをライブでやるときに僕らが美意識として選んだもの、ステージでのあり方がある意味、ダークな場所に向かっていって。だからこそ、今回のアルバムは日差しが感じられるような、温かくてオプティミスティックなサウンドにしようとしたんだ。このアルバムのライブはかなり前とは違うものになると思う。でも、僕はOMDの大ファンだし、彼らと比べられるのはほんと光栄だね。

――『Paracosm』というタイトルは、『指輪物語』や『ナルニア国物語』で描かれているような架空の世界を意味しているそうですが、本作と同じBen Allenがプロデュースを手掛けたYouth Lagoonも、今年リリースされた『Wonderous Bughouse』というアルバムで、精神世界というある種のパラコズムを描いていました。彼のアルバムは聴きましたか?

もちろん。あのアルバムは大好きなんだ。あのレコードの仕上がりにはBen Allenも深く関与してると思う。僕がやってることと、Youth Lagoonがやってることには共通点があると思うよ。二人ともソロ・アーティストで、たぶん年齢も近いから聴いてきた音楽にも共通するところがある。二人ともコンピュータで音楽を作ってるしね。

――本作のレコーディングでは、ノヴァトロンやオプティガンといった、50種類以上の楽器を使ったと聞きました。

そうだね。とはいえ、実際にミュージシャンに演奏してもらえた部分もかなりあるんだ。一人はベテランのコントラバス奏者で、僕があらかじめキーボードで作ったベースのパートを彼が聴いて、それをインスピレーションとして、彼自身のパートとして弾いてくれた。僕が書いたのよりずっと自由で、ずっとよかったね。つねに自在に変化しつづけるようなベースで。うん、プレスリリースの資料を読んで、まるで僕がすべての楽器を弾いたような間違った印象を持つ人がいるんだけど、そんなに優れた奏者じゃない(笑)。そこはコンピュータをツールとして使ったんだよ。

Washed Out | Exploring The Sounds of 'Paracosm' | Part I


――ハープなども使われた本作を聴いて、Rascalsという60年代のバンドが理想郷を描いた後期の作品で、ジョン・コルトレーンの奥さんのアリス・コルトレーンがハープを弾いている『Peaceful World』と『Island of Real』というアルバムを思い出してしまいました。サウンド面で本作にインスピレーションを与えたアーティストはいましたか?

Van Morrisonの『Astral Weeks』。あのレコードのインストゥルメンテーションは本当に素晴らしくて、音にぬくもりがある。だから、アイデアのいくつかはあそこから生まれたね。もちろん、当時のレコード制作は今とはかなり違っていて、ほとんどの楽器が生演奏で、ミュージシャンが一つの部屋に集まってプレイしてる。だからこそ人間らしい感触があって、いい意味での不完全さがあるんだ。偶発的なグルーヴ、ルーズなフィーリングがあるんだよね。そこがインスピレーションとしては一番大きかった。


※『Astral Weeks』リリース当時のVan Morrison。見た目も似てきた?

――1曲目の「Entrance」では南国を思わせる鳥の鳴き声が入っていて、さながら熱帯植物園に足を踏み入れたかのような感覚になりました。この鳴き声は実際にどこかで録音したものなのでしょうか?

そう、僕が家の近くに出かけて、実際に録音したんだ。

――2曲目の「It Feels All Right」のタイトルは、あなたの出世作となった「Feel It All Around」を思わせますが、Shinsの前座を務めるなど大勢の観客の前で演奏するようになって、あなたの音楽に対する「Feel」はどのように変化しましたか?

実際、あの曲ってこのアルバムの中でも気に入ってる曲の一つなんだ。僕がこれまでやってきたこと、Washed Outの初期の音源のほとんどは…最初からそんなにはっきりとアイデアがあったわけじゃなくて。大抵は曲を書きだすときって、いろいろ試していくうちに何か思い付いて、それで曲を作っていく感じだった。でも今回のアルバムでは、どういうものにしたいか、どこから始めたいか、かなりクリアなアイデアがあったんだ。ある程度全体像が頭の中にあったんだよね。で、それに一番近いのがあの曲、「It Feels All Right」だった。その意味でもすごく好きな曲で。歌詞は自分のこれまでの経験で、そのとき一緒にいた人たち、そのときいた場所がすごくぴったりくる感じ、全部意味をなすような美しい瞬間についてなんだよ。そしてもっと重要なのは、自分がそういう瞬間を体験してるのを意識すること。僕にとってあの曲は、一歩下がって、そういう瞬間の素晴らしさに気付くことについてなんだよね。

Washed Out - It All Feels Right [OFFICIAL LYRIC VIDEO]


Fleetwood Macのカバーで学んだことが
『Paracosm』でやったことに繋がっていった


――昨年リリースされたFleetwood Macのトリビュート・アルバムでは「Straight Back」をカバーしていましたが、どうしてこの曲を選んだのでしょう? また、Christin McVieのキーボード・プレイについてはどう思いますか?

彼女のキーボード・プレイは大好きだし、彼女のソングライティング自体、過小評価されがちだと思う。実際、Fleetwood Macのヒット曲のいくつかは彼女が書いてるのに、あんまりそう思われてないんだよね。僕があの曲を選んだ理由は、単純にWashed Outとして自分がやってることに合うから。適当に曲を選んで自分のスタイルに合わせるなんてできないし、メロディやコード進行がぴったりくる曲を選びたかったんだ。あと、あの曲には僕が考えるFleetwood Macらしさ、僕が好きなFleetwood Macのフィーリングがあるんだよ。僕としてはそこを大事にしたかったし、ある意味、僕からするとカバーは理想化されたFleetwood Macのヴァージョンなんだよね(笑)。僕が好きなのは、三人のギタリストがそれぞれ弾くソロが曲のドラマチックな瞬間になってるところだったりするから、カバーにもそれを無理に入れてるんだ。最後のほうでスライド・ギターのソロがあるだろ? でもFleetwood Macの原曲にはギター・ソロがないんだよ。彼らが僕のヴァージョンを聴いたかどうか知らないんだけど、もしかするとすごく嫌われるかもしれない(笑)。あと、Fleetwood Macの『噂』にはディスコの要素があるよね? ディスコが流行ってた時代だから、そこが大きくて、同時にヒップホップのアイデアも少しあって、ロックをやってる。だから僕はあの曲をFleetwood Macのその時代に引き戻そうとしたところもあるんだ。実際、あのカバーではいろいろ学んだな。レコーディングの過程で出てきたアイデアのいくつかが、『Paracosm』でやったことに繋がっていったんだよね。

Washed Out - Straight Back (Fleetwood Mac Cover)


――この「Straight Back」はToro Y MoiのChaz Bandickがミックスを手掛けていましたが、あなたは前作時のインタビューで「Toro Y Moiの生演奏でのアプローチに共感した」と語っていましたね。彼の新作『Anything In Return』はR&B寄りでかなり都会的なサウンドになっていましたが、このアルバムについてはどう思いましたか?

グレイトだと思うよ。Chazとは前からの知り合いだから、彼が作った曲でまだリリースされてないのがたくさんあるのも知ってるんだ。Toro Y Moiが有名になる前の曲だね。ほんと、彼って僕が会ったなかでも一番多作なソングライターだと思う。いつでも曲を作ってるし、彼が書いたマテリアルは実際、半分しか出されてないんじゃないかな。でもすごいのは、全部がToro Y Moiらしいってところ。彼のレコードは全部違って聞こえるのに、やっぱりToro Y Moiなんだよね。彼の印がついてる。新作を聴いたときの感想もそれで、「すっごくこれまでと違うのに、すごくToro Y Moiらしいな」って思ったんだ。面白いのは、知り合った頃には僕も彼も似たようなことをやってたんだよね。同じような音楽を聴いて育ってたし、同じようなことに興味があった。でもそこからプロのミュージシャンとして成長するにつれ、それぞれ違う方向に進んでいったのが面白いと思う。僕がある意味今作のインスピレーションを過去に求めた一方で、彼はもっとモダンな今のポップ・ミュージックからインスピレーションを得てる、っていう。

――かつて“チルウェイヴ”と呼ばれていたアーティストには、音楽性だけでなく、郊外で活動しているという共通点があったと思います。Chaz Bandickは最近LAに引っ越したそうですが、あなたがジョージア郊外の街に住み続けるのは何故でしょう? また、それはあなたの音楽に何らかの影響を与えていますか?

さっきも話したけど、今回のアルバムの最初と最後には、僕がマイクを家の外に置いて拾った音が入ってるんだ。僕にとってはそういうのどかな、戸外の牧歌的なフィーリングがすごく重要だったから。そこは去年、僕が街中からジョージア州アセンズのなんにもない田舎に引っ越したことが大きいと思う。そこがこのアルバムの大きなインスピレーションになったんだよ。制作中、ずっと鮮やかな色が頭にあったんだ。花々や自然……音楽的なアイデアも、そういうものをどうすれば音として表現できるか、サウンドスケープとして描けるか、と考えるところから生まれてきた。たとえば、僕にとってはよく晴れた春の日は……きらきらしたハープの音、鈴の音みたいなヴィブラフォンのサウンドだったりする。あったかくて気持ちいい音だね。そういう雰囲気をアルバム全体に持たせたかったんだ。

Washed Out | Exploring The Sounds of 'Paracosm' | Part 2


――あなたが影響を受けたというBoards of Canadaが、今年久しぶりの新作をリリースしました。もし聴いていたら、感想を聞かせてください。

部分的には聴いたんだけど…このアルバムのリリースでずっと忙しくて。ちゃんと腰を落ち着けて聴く機会がまだないんだ。でも、彼らがやってきたことは全部好きだから…ただおかしいのは、彼らって意識的にすごくダークな曲と、明るくてハッピーな曲を作ってるよね? 意図的にそのバランスを均等にしてる。でも僕がほんとに好きなのはアップリフティングなほうなんだ。もちろん日常でもなんでも、人生には暗い瞬間があるんだけど、僕としては自分からそういうところに行きたくはない(笑)。だったらむしろ、45分間の白日夢に浸っていたいんだよね。

――あなたは大学で図書館情報学の修士号を取得したそうですが、ということはヘヴィな読書家なのでしょうか?

本は読みたいんだけど、今はちゃんと本が読めるのってツアー中だけだったりするんだ。車や飛行機で移動してる間だけ。そういうときには面白い本を読みたいと思ってよく探すんだけどね。うん、本って音楽とともに、アートフォームの中でも頭の中に何か思い描けるような、別の場所に連れていってくれるようなものだと思う。大学では文学を学んだから、英文学の名作は全部一通り読んだんだ。ただ最近はノンフィクションをよく読むようになってる。ミュージシャンや指導者なんかの伝記を読むと、すごくその人生に刺激を受けるから。

――あなたは自分の奥さんの写真をEPのジャケに使ったりと愛妻家で知られています。その奥さんも最近ではライヴ・メンバーとして重要な役割を果たしていますが、メインでヴォーカルをとる曲がいまだにないのがちょっと不思議です。これって何か理由があるのでしょうか? やはりWashed Outはあなたひとりのユニットだという強いこだわりがあるのでしょうか?

うーん、たぶんね。僕の歌にこだわってるっていうより…僕の歌い方に独特のスタイルがあるわけじゃないし…どう言えばいいかな? 実際、ちゃんとした歌じゃないから、自分では変な気持ちなんだ(笑)。僕がレコーディングを始めた頃って、親の家に住んでたから、できるだけ静かにやろうとしてたんだよ。だからほとんどささやくようなヴォーカルになって、そこにエフェクトをかけてドリーミーな感じにしてる。わかんない、やっぱり男の声で歌ってるのが大事なのかもね(笑)。

Washed Out - Don't Give Up [OFFICIAL MUSIC VIDEO]



Washed Out - Paracosm (Sub Pop / Yoshimoto R&C)
Posted by Monchicon
INTERVIEW / 23:00 / comments(0) / trackbacks(0)
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