評価:
KOMPAKT/OCTAVE-LAB
(2011-10-19)

Loop De Loop De Loop De Loop De Loop

子供の頃、深夜に考えごとをしながら部屋の真ん中にあるこたつのまわりをグルグルとまわっていたら異様にナチュラルハイになったことを覚えている(その時、たしか伊藤政則先生が出演していたハードロック/メタル番組がテレビで流れていたことも)。個人的にはそれがミニマル・テクノの原体験だったんじゃないかと思う。なぜなら、こたつは四角であり、正確なテンポで一周すれば自然と4つ打ちになるからだ。故に(?)、おそらくスウェーデン出身のAxel Willnerのソロ・ユニットThe Fieldも幼少時代にこたつをグルグル回ることで反復の快楽に目覚めた一人に違いない・・・と、無理矢理決めつけてしまったのはオリジナル・アルバムとしては3枚目に当たる本作でも徹底してミニマリズムが貫かれているからだ。それは白地に手書きでユニット名とタイトルが書かれているだけというシンプルなアートワークにもよく表れている。
The Field - Then It's White by Kompakt

ザ・フィールドが斬新だったのはミニマル・ハウスにシューゲイズにも通じるような透明かつ冷涼な空気感を融合させたことにある。同じ行為を正確に何度も繰り返すことからから生じる高揚感(参照:ちびくろさんぼ)をクーラーでひんやりとクールダウンさせているかのような“「熱気」と「冷気」とを同時に放出するダンス・ミュージック”という音の新鮮さは最早ひとつの発明だったとすらと思う。

ただ、反復快楽の肝はやはり「持続」にある。アクセルもそこを十分に理解しているようで、The Fieldという看板を掲げながら自身の音楽家としての活動をいかに持続させるかという命題に対して、前作『Yesterday And Today』での若干の試行錯誤を経て、ひとつの解答にたどり着いたのが本作だ。

その「解答」というのはハウス・ミュージックの方法論にバンドサウンドを落とし込むこと(The Fieldは近年ドラムとベースを加えたバンド編成によるパフォーマンスをおこなっている)。これによって反復に具象性すなわちフィジカルさを身につけることに成功した。それを「力強さ」と言い変えるならば、アルバム1曲目のタイトル「Is This Power?」という問いかけは確信をもってつけられたものだと推測できるだろう。

そして、ここで提示されているサウンドで意外な近似値を示しているのが初期のSeefeelだ。最近復活して今年前半にWarpから新作アルバムをリリースしたのも記憶に新しいけれど、彼らが90年代前半にToo Pureからの音源で展開していたサウンド(特に2007年にリイシューされた93年の名盤『Quique』)は本作のいくつかの曲(「It's Up There」など)を彷彿させるものだ。実際にアクセル自身彼らの特徴的なミニマル性に影響を受けたことを認めているのだけれど、Seefeelが『Quique』以降Warpへ移籍してよりディープなテクノ/音響方面へと没入していったのに対し、The Fieldはテクノ/ハウス方面から徐々にフィジカルなバンドサウンドへシフトしていったというクロスフェード気味なアプローチの変化の対比が面白い。

あと、「Burned Out」辺りのサンプルのループ感には前作に一曲ドラムで参加していたJon Stenierが在籍するBattlesからの影響も感じられたりするし、表題曲の「Looping State Of Mind」のほのかにトライバルなパーカッションの使い方も新機軸といえるだろう。なにより、アルバム本編の最後を飾る「Sweet Slow Baby」でその規則正しい「反復」という従来のルールを打ち破って、「ズレ」を導入しながらも最終的にThe Fieldとしかいいようのないサウンドに帰結しているところにはこの男の意地のようなものが垣間見える。

このように、様々な外部の影響を自身の表現に取り込んでいこうとする意欲的な姿勢が、The Fieldという表現の「裾野」を広げ、アルバムに豊潤なトーンを付与すると同時に、原点ともいえる「こたつの反復」(=ループ)の快楽を追求し尽くしたものだけが到達しうる、ある種の「悟り」の境地からしか生まれえない「安らぎ」すら感じさせる会心の一枚だ。


THE FIELD (SUE) - Live @ Parc Expo-Hall 3, Transmusicales de Rennes 2009



The Field Live at Asagiri Jam 09 in JAPAN



The Field - Festival Pantiero - Cannes 12082011 #1




■おまけ
Loops of "Loop De Loop"

Johnny Thunder - Loop de Loop



Frankie Vaughan - Loop de Loop



Donald Lautrec - Loop de loop



Les fantomes - Loop de loop 1963



The Liverbirds - Loop De Loop



Salt Water Taffy - Loop De Loop



Harry Nilsson - Loop De Loop



Blues Brothers & Ray Charles - Shake Your Tail Feather