Photo by Petrus Olsson / Adamsky

BRITISH ANTHEMSに代わる新イベントRADARSのトリとして出演したEverything Everythingの来日公演。ライヴ前にSEでかかっていたのはBlonde RedheadとDeerhoof、そしてThe Dirty Projectors(だったと思う)。まず、このセレクションだけで彼らの志の高さが伝わってくるような気がした。
全員がDevoのようなおそろいグレイのつなぎを着て登場。ヴォーカルのジョナサンは髪をシルヴァー(?)に染めて気合が入っている。そして、4人はアルバムの通常の感覚からはやや逸脱したリフやリズム・パターンをもった複雑なポップ・ソングを、次々とスムーズに披露していく。ライヴならではのダイナミズムはもちろん付与されて。

少し意外だったのは「Suffragette Suffragette」や「Qwerty Finger」のようなアッパー系の曲だけではなく、「NASA is on My Side」や「Leave the Engine Room」といったややしっとりとした静かめの曲でも、しっかりと聴衆を引きつける説得力が宿っていたことで、その秘訣はジョナサンのファルセットを中心に据えたハーモニーの美しさだろう。アルバム『Man Alive』では少し目立たないようにも思えたこうした曲の役割と意図が、ステージ上でちゃんとわかりやすく明示されていた。

奇しくも約一ヶ月前に同じ場所で演奏していたBattlesのようなギターフレーズが印象的な新曲を含み、約一時間に渡ってアルバムから殆どの曲を演奏。The Dirty Projectorsの持つネジれ、Grizzly Bearの美しいコーラスといった現代的で野心的なバンドにも通じる要素を想起させつつ、そこに英国ならではのスマートさ、そして毒のある神経症的ユーモアが備わることで、演奏はダイナミックでありながら、放出されるサウンドそのものはひんやりとクールな質感を保っている。この、モーターを熱く回転させながら中を冷やすという、まるで冷蔵庫のような構造こそが同時代の他のバンドにはない彼らの唯一無二の個性といえるだろう。そしてそれは観客にもしっかり伝播していたようで、ライヴ中、身体の内側は熱くなりながらも脳内では透徹した感覚が広がっていく、という体験がとても新鮮だった。

しかし、その冷却装置もさすがに最後の曲「Photoshop Handsome」ではオーディエンスのヒートを抑えることはできなかったようだ。堰を切ったかのようにモッシュが起き、狂乱状態のままバンドはステージをあとにした。

そして、ライヴ終了後にSEで流れたのはGalaxie 500の「Blue Thunder」。一瞬なんで?と思ったけれど、Dean Warehamのあの甲高いファルセットを聴いて思わず納得した。彼らの演奏は、まさに「蒼い閃光」という形容がふさわしいと思ったからだ。


■参考動画

Photoshop Handsome live in Bournemouth 16.02.11 NME Awards Tour