評価:
Jagjaguwar
(2010-11-02)

デイドリーム・リヴァーバー

ブルックリンのシンセ・ポップ・グループのデビュー・アルバム。

巷でいうところのChill Waveに対しては、その言葉の指し示すものがいまいちぼんやりしているのだけれど(彼ら自身「自分たちの音がChill Waveなのかどうかよくわからない」とこぼしてる)、このアルバムに限っていえばアーリー80s風味のシンセ・サウンド/エレクトロに「リヴァーブ」や「歪み」、「ぼかし」といったエフェクトを過剰に加えることで、「電子化されたサイケデリック・ポップ」とも言い換えられるようなポップ・ソングの「新しい次元」(John Coltraneの奏法をギタープレイに応用したByrdsに喩えれば「霧の五次元」的な?)を生み出そうとしているかのように聞こえる。
冬にデラウェア州のRehobeth海岸にあるバンドのベーシストの実家で、メンバーの4人以外誰とも会わずに「孤立」した環境で制作されたという本作を聴き込んでみると、そのサウンドは一見チープなようでいて、実はかなり細部まで練られ、作り込まれたものであることがわかる。チューニングの狂ったかのようなシンセも、もわっとしたヘイジーなアトモスフィアも、すべて確信をもって鳴らされており、「白昼夢の音像化」として人の脳の奥から幻想を引き出す力には相当のものがあるといっていいだろう。

ただ、このアプローチは少しバランスが崩れると楽曲そのものの魅力をも壊しかねない諸刃の剣でもある。ソングライティングに関しては「Photojournalist」、「Search Party」、「Light Curse」あたりを筆頭に、魅力的なメロディがそこかしこに散見されるのだけど、(海岸での孤立した制作環境に起因しているのかはわからねど)徹底してアレンジが同じベクトルを向いてしまっているが故に起伏に欠け、耳を引くような「フック」や「グルーヴ」といったものが若干失われているのもまた事実だ。そう、バンドは音作りに没入しすぎたあまりに魅惑的な「ヘイジーさ」と同時に「平坦さ」という感覚までをも手に入れてしまったようだ。

裏を返せば、これは「各曲とも一定のクオリティを保っている」ということでもある。だから、最早こうなると後は聴く人の好き嫌いの問題になってしまう。この「ひたすら水中でゆらゆらと揺らめいているエレポップ」を、ちょいと足の先に水をつけるように聴いてみて、生理的に「合わんわー」と感じる人にはとことん敬遠されるだろうし、「波長バッチリ合う!」と思える人にはもうそれこそ頭のてっぺんまでどっぷりと浸かれるはず。そんな、聴く人の好みがはっきりと浮き出てくるリトマス試験紙の如きアルバム。・・・あなたの反応はどっち?

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Small Black – "Light Curse" – Gothamist House

Small Black – "Light Curse" – Gothamist House from Foglight Films on Vimeo.