評価:
Mexican Summer
(2010-07-27)

It's My Coasty, And I'll Cry If I Want To!(Meow!)

父親がWAR(!)のライヴでドラムを叩いていた(正式メンバーかどうかは不明)縁で若くして音楽業界に身を置き、ある時はParis Hiltonから「ちょっとたばこの火貸してくんない?」なんて話しかけられたこともあったというBethany Cosentino。

でもそんなセレブなニューヨークという土地に嫌気がさし、生まれ故郷のカリフォルニアに戻ってPocahauntedというエクスペリメンタルな女子ユニットを組んで何本もカセットを出したりするも、そこでも「何かが違う」と違和感を感じてバンドを脱退、そのレコーディングを手がけていたBobb Bruno(Bethanyが小さい頃のベビーシッターだったらしい)と共にBest Coastを結成、かねてから敬愛していた60年代のポップ・ミュージックを初期BeatlesやRamones流アレンジでやってみたらこれが意外(?)にもハマり、Black IrisやPost Present Mediumといったインディ・レーベルから次々と傑作シングルをリリース。その愛猫Snacks君への惜しみない愛情と、インタビューやtwitter上での歯に衣を着せぬ物言い(「Katy Perry大嫌い」とか)が話題を呼んで、あれよあれよという間に気がついたら西海岸インディ・ポップ界の人気者になっていたという、セレブを否定した上で一周回ってたどり着いてしまった逆セレブ的存在が彼女。
そして本作が正式なデビュー・アルバムとなるわけだけど、ぶっちゃけると音楽的な目新しさ、未知の音楽を追い求める求道者的側面なんてのはほぼないし、サウンドのヴァリエイションや語彙の豊富さみたいなものもあまりない。じゃあ駄目駄目なのかというと決してそんなことはなくて、彼女の気さくな人柄がそのまま音に表れたキャッチーでメロウなロウファイ・ガレージ・ポップ(そしてその殆どがBoyfriendに対する想いを歌ったシンプルなラヴソング!)が立て続けに12曲鳴らされる様はEar Candyの如く耳に心地いい。

その秘訣はヴォーカルやサウンド全体にかけられた「エコー感」(プロデューサーのLewis Pesacov【Fool's Gold, Foreign Born】の功績大かと思われる)で、この(サウンドのディテールが夕日に溶けていくような)夕暮れ時の海辺の情景を模したおセンチなウォール・オブ・サウンドが60年代の「これは私のパーティーなんだから泣きたかったら泣くかんね!」とか「アタシ、族のリーダーと恋に落ちたわ!」とか「このブーツであんた踏んづけてやるんだから!」といった60sガール・ポップの持っていた闇雲で過剰ともいえるようなエネルギーを(ハッパによるレイジーな高揚感を交えながら)2010年に蜃気楼の如く再び立ち昇らせることに成功している。

「音楽的革新性? エクスペリメンタル? そんなの知ったこっちゃないわ。ブルックリンのバンドでも聴いてればいいじゃない。とにかくあたしは今、『あんたに夢中なの(Crazy For You)!』」という(サウンドメイクとアティチュードがピッタリ合致したが上での)有無を言わせないようなその刹那的パワーに男子としては(猫好きということを差し引いても)圧倒させられざるを得ない一枚であることはたしかだ。で、女子はどうなん?

MySpace - Best Coast


"The world is lazy
But you and me
We're just crazy"

Best Coast - When I'm With You (Bonus Track for CD)