評価:
Sub Pop
(2010-04-27)

Here Come The Summer Cum

まだ若干18歳(もう19歳になった?)だというAvigdor Zahner-Isenbergを中心に結成されたカリフォルニアの男女4人組Avi BuffaloのSub Popからの初のアルバム。Beachwood SparksやWilco辺りからの影響をそのまま若い感性で音にしているかのような、メランコリックでサイケデリックで少しレイジーなフォーク・ロックを礎にするサウンド(この時点で若干贔屓目になってしまうことをお許し頂きたい)。
それにしても18歳という若さでこれだけ陰影に富んだサウンドを展開する様に素直に驚かされる。これはプロデューサーのAaron Embry(映画俳優のEthan Embryのお兄さんだそう)の手掛けたプロダクションの功績も大きいのかもしれない。また、時折聞こえてくる屈折したギター・ソロにはNels Clineへの憧憬の念が滲んでいるかのようだ。しかし、何といってもこのバンド最大の個性はAviの中性的なハイトーン・ヴォイスだ。シングルにもなった「What's In It For?」の後半でフィーチャーされるバックコーラスの赤ん坊の泣き声の如き無垢な叫びにはついハッとさせられてしまう。ここにGalaxie 500の幻影(『On Fire』の、あの夕暮れの中で途方にくれている感)を垣間見る人もいるだろう。

それは年齢の割には少々達観しすぎた響きをもつものかもしれない。けれども、そんなサウンドとは裏腹に18歳という若さだからこそ鳴らし得るような瑞々しさやエネルギーがこのアルバムには漲っている気がする。「Summer Cum」なんていう曲はたぶんこの年齢だからこそ書ける(というかこの時期にしか書けない)いい意味で青臭い曲だろう。言葉にできない焦燥感と諦念と白昼夢の入り混じったひとりの男の「18の夏」のサウンドトラックとして(ちょっと羨望の念も込めて)とても魅力的に聞こえる一枚だ。


Avi Buffalo - What's In It For?