[INTERVIEW] Macie Stewart (Finom)


photo by Ash Dye

現代のシカゴの音楽シーンを追いかけているなら必ず名前を目にするミュージシャン、それがMacie Stewartだ。

10代の頃にVic MensaやDonnie TrumpetことNico Segalと一緒にバンドKids These Daysを結成した彼女は、WilcoのJeff Tweedyがプロデュースをしたアルバム『Traphouse Rock』を残して解散すると、その後はヴァイオリニスト兼アレンジャーとしてWhitneyやSZA、Claire Rousay、今年に入ってからもDucks Ltd.やFrikoといったアーティストの作品に参加。地元シカゴのPitchfork Music Festivalには毎年のように出演し、The Weather Station、Jeff Parker、Japanese Breakfastのステージで演奏するなど、目が離せない存在になっている。

そんな彼女が幼馴染のSima Cunninghamと結成し、昨年Ohmmeからの改名を発表したギター・ロック・デュオFinomが、Wilcoのサポート・アクトとして待望の初来日を果たす。Jeff Tweedyの息子Spencerをドラマーに迎えたトリオ編成で披露されるというライヴや、音楽的なルーツについて、Macieにメールで聞いてみた。

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[INTERVIEW] Real Estate


photo by Sinna Nasseri

今年でデビュー15周年を迎えるギター・ポップ・バンドReal Estateが、通算6枚目となるアルバム『Daniel』をリリースする。

そのタイトル通り、Kacey MusgravesやA Girl Called Eddyの作品で知られるDaniel Tashianをプロデューサーに迎えた本作は、カントリーの聖地ナッシュヴィルの伝説的なRCAスタジオAで録音され、Beyonceの新作でも演奏しているJustin Schipperがペダル・スティールで参加。しかしバンドが目指したのはカントリーではなく、R.E.M.『Automatic for the People』のような、タイムレスなサウンドだったという。

その言葉通り、これまでのアルバムに必ず収録されていたインスト曲や長尺のサイケデリック・ジャムを廃し、3分間のポップ・ソングを並べた本作。その一方で、バンドは全曲インストゥルメンタルによる、もう一枚のアルバムを作る計画もあるという。

日本盤ボーナス・トラックには彼らのセカンド・アルバム『Days』のタイトルの由来になったTelevisionの同名曲のカバーも収録されるなど、“Real Estateらしさ”が抽出された最新作について、ヴォーカル&ギターのMartin Courtneyが大いに語ってくれた。


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[CROSS TALK] Katy Kirby × kiss the gambler


photo: Tonje Thielsen (Katy Kirby)

弾むようなメロディと歌を際立たせる軽やかなアレンジを持ったデビュー作『Cool Dry Place』でUSインディー・シーンに颯爽と現れたテキサス出身のシンガー・ソングライター、Katy Kirby。Anti-移籍後の最新作となる『Blue Raspberry』は、彼女がクィアとしての一面を獲得するパーソナルな物語としても受け取れる、穏やかながらも滋味にあふれた1枚だ。

今回、(デビュー作にも収録された「Juniper」をカバーするほど)彼女の大ファンを公言するシンガー・ソングライター、kiss the gamblerのかなふぁんをメインに据え、zoomでのインタビューを行った。途中、本作のプロデュースを担ったLogan Chungも登場するなどのサプライズもありながら、『Blue Raspberry』の魅力を紐解く手掛かりにもなる制作背景やテーマについて、たっぷりと語ってもらった。


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[REVIEW] Bill Ryder-Jones - Iechyd Da

評価:
Domino (2024-1-12)
さよならの祝杯

「僕と彼女は、アーティストにきちんと報酬を払わないことで有名なストリーミング・サービスに、共同のプレイリストを作っていた。僕が曲を入れて、彼女も曲を入れる。恋におちるための素敵な方法で…Gal Costaの”Baby”は彼女が最初に教えてくれた曲で、僕はノックアウトされて、それは僕らの曲になったんだ。その子とは、この曲が完成する前に別れた。だからそれは恋におちる二人の希望に満ちて始まって、そこから崩れ落ちてしまうんだ」

ドイツのインタビューでそう語っていた元The Coralのギタリスト、Bill Ryder-Jones。5年ぶりの新作『Iechyd Da』はLou Reedのような「I Know That It’s Like This (Baby)」で幕を開けるが、そこではGal Costa(とCaetano Veloso)の「Baby」がサンプリングされており、ポルトガル語で“Eu sei que é assim(こんな風になるってわかってる)”と歌われている。まるで二人の、悲しい恋の結末を知っていたかのように。

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[FEATURE] MONCHICON'S BEST ALBUMS OF 2023



コロナによる規制が緩和されて来日公演が活発になる一方で、レコードのセールスは伸び悩み、海外作品の国内リリースもままならないことが増えた2023年。配信サービスの普及で多くの作品に気軽にアクセスできるようになった分、その作品の背景や意図をきちんと伝える役割が、ますます重要になってくるような気がします。

と言いつつ、打診していたインタビューが実現しなかったり、忙しさにかまけて更新が滞ってしまったのが心残りですが、今年はより一層充実できることを祈りながら、モンチコンが選んだ2023年のベスト・アルバム15枚の発表です!


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[INTERVIEW] Dawes


Photo by Kana Tarumi

 “世界に君が、僕にとっての君と同じ人に見えていますように
  君の好きなバンドが全部、一緒にいてくれますように”


代表曲「All Your Favorite Bands」でそう歌っているように、2009年の結成以来、LAのロック・バンドDawesは信念を曲げることなく活動を続けてきた。

反響を呼んだ昨年のフジロックフェスティバル、フィールド・オブ・ヘブンのステージ以来の単独公演となるこの日のライブでも、それは変わらない。最新作『Misadventures of Doomscroller』から、Jackson Browneを思わせる「Everything Is Permanent」で幕を開けると、同じく新作からの「Someone Else’s Café / Doomscroller Tries To Relax」では、まるでGrateful Deadの「Help On The Way / Slipknot」のような長尺のジャムを披露。ライブの定番になっているラストの2曲、「When My Time Comes」と「All Your Favorite Bands」では、この日を待ち望んでいた観客たちによる大合唱が巻き起こっていた。

そんなDawesのこれからについて、Joni Mitchellの復活コンサートにも参加したリーダーのTaylor Goldsmithが、ライブ前の楽屋で話をしてくれた。


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[INTERVIEW] Bar Italia



最もエキサイティングな新人バンドでありながら、謎に包まれた存在であったロンドンの若きトリオ、Bar Italiaがベールを脱いだ前作『Tracey Denim』に続く、今年2枚目となる最新作『The Twits』が早くもリリースされた。

マヨルカ島のホーム・スタジオでレコーディングし、著名なアーティストを手がけてきたMarta Salogniがミックスした本作は、メンバー3人のそれぞれの個性が重なりあい、ぶつかりながら、奇妙で神秘的で中毒性のある世界が作り出される。気怠く哀愁が漂うムードやざらついたギターの音質にはどこか60年代の雰囲気があり、バーでスモーキーなウイスキーと煙草を揺らす彼らの姿が見えてくるようだ。オープニング・ソングの「my little tony」のキャッチーなギター・リフから始まり、時に疾走し時にゆったりと抒情的に奏でながら、ラストは不気味な喧騒で締めくくられ、まるでモノクロの短編映画を観ているようだった。

そんなアルバムについて、口数は少ないながらも、メンバー3人が自分たちなりの言葉で話してくれた。


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[INTERVIEW] Germaine Dunes



12月にソロでの来日公演が決まっている、Big ThiefのギタリストBuck Thief。そのサポート・アクトに抜擢されたGermaine Dunesというのが、Buckの妻であり、彼の最新作『Haunted Mountain』のジャケット写真を撮影しているGermaine van der Sandenだ。

今年の3月にはBuckも参加したデビュー作『Midnight Game』をリリースしている彼女だが、その情報は極めて少なく、検索でヒットしたのは母国オランダのインタビューのみ。だがその内容が気になってGoogle翻訳してみたところ、宇宙開発に関わる研究に従事していたことや、Blake Millsのもとでインターンしていたことなど、意外な事実が判明。

たまらず本人にコンタクトを取ってみたところ、快くメールでのインタビューに応じてくれたGermaineは、パートナーに負けず劣らず聡明で、とてもチャーミングな人だった。


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[FEATURE] Cat Power Talks Dylan〜キャット・パワー、ディランを語る


photo by Inez & Vinoodh

実際にはマンチェスターのフリー・トレード・ホールで録音されたにもかかわらず、誤って表記された海賊盤が出回っていたため、長らく“ロイヤル・アルバート・ホール”として親しまれてきた、1966年5月17日のBob Dylanのコンサート。途中でDylanがギターをアコースティックからエレクトリックに持ち替え、のちのThe Bandのメンバーをバックにしたセットを披露したことから、保守的な観客のひとりから「ユダ!」と野次を飛ばされたことは、今でも語り草になっている。

そんな伝説の一夜をCat Powerがロイヤル・アルバート・ホールで全曲再現した昨年のコンサートが、この度Dominoからアルバム化される運びとなった。これまでに何度もDylanの曲をカバーしてきた彼女だけに感慨深かったに違いないが、実現に至るまでの経緯を聞いたところ、図らずもキャリアを総括するようなインタビューとなったので、Cat Powerの音楽を聴いたことがないという人も、ぜひ読んでみてほしい。


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[REVIEW] Sufjan Stevens - Javelin

評価:
Asthmatic Kitty (2023-10-06)
僕の愛/は/君の/身体/の/忘却の/上に/投げられた/武器

9月20日、Sufjan Stevensはギランバレー症候群という、全身に力が入らなくなる難病と闘っていることを公表した。それは日本を含む世界各国で行われたニュー・アルバム『Javelin』の試聴会の翌日のことで──もちろん本作はSufjanが難病と診断される前に完成していたものだが──今思えば聴き手に余計な先入感を与えることなく、純粋に作品を聴いてもらいたいという配慮があったのだろう。なぜなら、そのことを知ってしまった今、本作を彼の病状と結びつけずに聴くことは難しいからだ。

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